ちょっと出来心でSilverFast 9を試してみたらうっかり買ってしまった話。
元々35mフィルムはPlustekのスキャナとSilverFast 8の組み合わせでスキャンしていて、中判フィルムのためだけにEPSONのGT-X 980を併用していた。
EPSONのスキャナーに付属するソフトの評判があまりよろしくないしスキャナー2台持ちなんて場所ばかり取って仕方ないので、手持ちのSilverFastでGT-X 980を動かそうとしたら対応しておらず(Plustek用のソフトになっているため)途中で面等臭くなって放置したのが数年前。
あれから数年が経ち、年末年始に溜まったネガの整理の合間に微妙にピントの合っていないスキャン結果を眺めふとSilverFastのことを思い出してデモ版をお試ししたら数日後にはお支払いに進んでいた。同じスキャナなのにこの差は何事…と愕然としたのだ。
せっかくなのでGT-X 980に付属するスキャンソフトと比較しながらSilverFastの感動をお伝えしたい。
- ディテールの精細さについて
- 発色に関する比較
- SilverFastはGT-X 980を高速化する
- SilverFastとSilverFast HDR
- SilverFastはアナログとデジタルの境界線を更新する
- 【結論】GT-X 980ユーザーはSilverFast買う価値があるか?
- GT-X 980の埃対策について
ディテールの精細さについて
まずはディテールを幾つか見てほしい。同じスキャナを使って読み込んだとは思えない違いにまず驚いた。
左がSilverFast 9、右がEPSON Scan 2
どちらも16bit 3200dpiに設定し、厚紙で作ったホルダーを使ってスキャンしているがディテールを眺めると結果は一目瞭然。SilverFast 9でスキャンした画像は薄皮1枚2枚剥がれたようにクリアで精細だった。
これはソフトウェア後処理の違いというよりSilverFastがスキャナのフォーカスを適正にコントロールした結果のようだ。
発色に関する比較
続いてカラーネガフィルムのスキャン結果の比較。
ぱっと見EPSONは寒色に転んでいるようにみえるんだけど全体的にSilverFast 9の方が色が豊かに見える。特に落ち葉の写真は一枚一枚の落ち葉に個性豊かな色がある。
左がSilverFast 9、右がEPSON Scan 2
3枚目の明暗差には驚いた。
EPSON Scan2の自動露出を有効にしていたのでソフトウェアが自動でここまで持ち上げてくれたんだけど、正しい露出はSilverFast 9の方だと思う。いずれにしてもモノクロフィルムの結果同様にSilverFast 9の方がすっきりとまとまった色を出している。
SilverFastはGT-X 980を高速化する
モノクロフィルム16コマを16bit 3200dpiでスキャンする速度を計測してみたらEPSON Scan 2の21分23秒に対してSilverFast 9は6分ほど短い15分50秒で完了してしまった。これはフラットベッドスキャナーで使えるExpress Scanという高速化技術で、スキャナーの走査方向に対して同じ位置にある画像を並行して読み込んでいく。スキャンするコマを設定してバッチスキャンのボタンを押すと、Express Scanが適用できるけどどうしますか?と聞いてくれる親切仕様。
Express Scanは短時間で良い結果を出してくれる素晴らしい機能なのだけど、最上位のArchive Suiteのみに実装されている点は注意したい。
SilverFastとSilverFast HDR
SilverFast 9で出力したJpg画像も十分に精細なのだけど、SilverFastにはスキャン時に赤外線チャネル情報やカラーマネジメントに関する情報を同時に取得し、デジカメのRawファイルのスキャンバージョンのようなHDR Rawファイルを出力する機能も持っている。
この形式で出力するとSilverFast HDRというソフトで後から編集してさらに高画質で書き出せる。
ちょっとややこしいけど、要するにネガ上の情報を64bitで余すことなく絞り取る機能がSIlverFast 9にはついていて、絞りだした情報の処理を後からSIlverFast HDRという別ソフトでやる感じ。埃やゴミ、色味が気に入らず再スキャンする手間が省けるところにこのソフトの価値がある。
左がSilverFast 9 HDR経由、右がSilverFast 9から書き出し
2つの作例はHDR Rawに書き出してSilverFast HDR経由で書き出しただけで編集をしていないのだけど1枚目は特に色がより深い。
SilverFastはアナログとデジタルの境界線を更新する
僕は写真には質量が必要だと考えている。
デジタルに対するフィルムの優位性は色の豊かさや曖昧さ、メディアの大きさにあることは明白だし質量をもった写真にするためにはネガもプリントも必要なのだけど、時代はいつまでも旧式のやり方に止まる訳ではない。
冊子にするにしてもネットに載せるにしても、必ずどこかでデジタルが関与してくるのだからアナログ一本槍ではいられないから。
僕は今までGT-X 980はコンタクトプリントを作るための装置で、プリントこそオリジナルだと考えていたんだけど、ここまで綺麗にスキャンできるとなるとデジタル化した写真をどう取り扱うのか考え直さなきゃいけない。
【結論】GT-X 980ユーザーはSilverFast買う価値があるか?
GT-X 980は素晴らしいスキャナであり、その実力を引き出すためにはSilverFastが最良のソフトウェアだという結論に至った。海外ではこのスキャナにSilverFastがバンドルされているのも頷ける。
既にGT-X 980を使っている人はぜひSilverFast を試した方が良い。
これから自宅でフィルムスキャンを始めようと考えている人にとってもこの画質で18コマを一気に読み込めるGT-X 980とSilverFast 9の組み合わせはお勧めできる。セットで7-8万円ほどかかるがフィルムを100本以上スキャンするならこちらの方が安くて高品質だ。
機能の差は比較表を参照頂くとして、フィルムを高画質でスキャンするのであれば最小パッケージのSilverFast 9 SEで問題ないと思う。
SilverFast HDRは最高画質を求める人や後から再編集したい人、再スキャンが面倒な人向けでArchival Suiteは上記に加えてスキャン時間も短縮したい人向けなんだけど実際にArchive Suite買ってみたらExpress ScanもHDR Studioも便利なのでお金に余裕があればありかも知れない。
ちなみに新規ライセンスだと日本のアマゾンから買えるようなのでレートが急に悪くなるいまの市況を考えるとこちらから買う方が安心だと思う。*1
GT-X 980の埃対策について
蛇足ながら今回の作例スキャンの際はGT-X 980のガラス面を拭いてネガの周辺をフーフーしたくらいで埃除去処理はしていない。
GT-X 980の埃問題はプラスチックとアクリル素材の付属品ホルダーが静電気で埃を収集してしまうことが原因なので厚紙を使ってホルダーを作ったら埃問題が一気に解決した。詳細は以下の記事をご覧頂ければ。
*1:他のスキャナで既にSilverFastを使っている人は公式サイトで追加ライセンス購入割引が適用されるので注意。