正対した左右対称の写真はテクノだという話を耳にして面白い例えだなぁって思った。
スタジオで撮ったビシッと左右対称な写真はミニマルテクノっぽいし、自然の中にある左右対称はアンビエントテクノっぽい。キラキラした都会の夜の左右対称はテクノポップっぽいしフォーマットが正方形になるといよいよ本気のテクノっぽくなる。
勝手な解釈をすると、この話の面白いところはテクノを想起させる絵面じゃなくたって規則的な繰り返しがあればいいというところだと思う。
キンミヤ焼酎の空き瓶が5つ並んでいたっていい。
根底にある写真のエレメントがテクノのエレメントと強く紐づいていることが面白いのだ。アメリカ南部の写真にブルースを添えてみても、とても浅いところでつながっているにすぎないのでエレメント同士の結びつきほど面白みはない。
構図とリズム
自分は写真を撮るときにあまり音楽ジャンルのことを考えていない。
現像した写真を見ながら「あ、これECMっぽいよね」とか「80年代っぽいよね」と後付けで考えることはあるけど、最初からテクノっぽく撮りたいとかジャズ調がいいなんて考えてシャッターを切っていない。そこまで上手にコントロールできないし。
そのかわりシャッターを切る時に(特に正方形フォーマットで撮るとき)はいつもリズムを意識している。撮影のテンポもリズムだし被写体の並び方もリズムだ。
ルーズにスウィングするリズムもあればワルツもあれば四つ打ちもある。ワンツーさんはいっ!って気分で撮る時もあれば123、123と三拍子になっているときもあるし詩的な気分なら四つ打ちだったりする。BPM120くらい。
識者貴兄に怒られるかもしれないけど、僕は構図なんてどうでも良くむしろリズムが大切だと考えている。
なんとか分割法とか黄金比なんてよくわからないし、僕の写真はほとんど日の丸構図だ。結果的にそれが世間で言うところのナントカ構図に落ち着いているのかもしれないけど、小難しい構図の話なんて後付けで屁理屈並べているに過ぎない。
「撮る瞬間に完璧に構図を決めていなければならない」なんて言い草は極めて日本のおっさん精神論の世界の話で、過去の偉大な写真家もトリミングは普通にしている。構図でごちゃごちゃ悩む暇があるならシャッター切ってしまった方がいい。
寄るのか引くのか、どんなリズムで並べるのか、腹に響くベースなのかサティのような淡々とした音の羅列なのかということの方が大切なのだ。
構図はリズムの表層だ。
音楽と写真
昔は音楽と写真は表裏一体だった。少なくとも2000年台の初めころまでそうだった。
iTunes Music Storeがデジタル配信の先鞭を打って楽曲単位のバラ販売を始めた時にこの関係が壊れてしまった。日本での楽曲配信が始まったのが2005年だから、あっという間に18年も時間が過ぎていて、この間にCDは駆逐されジャケットのアートワークの存在感も驚くほど小さいものになってしまった。
時代の流れといえばそれまでだけど、僕は31.5cm四方サイズのレコードジャケットがオーディオの横に置かれているのが好きだし、ラックに収められたレコードをパタパタめくることが好きだ。
良い音楽には必ず象徴的なアートワークがあったし、印象的な写真が添えられていた。レコードを探しに行くといろんなジャケ写を目にするわけだから、レコード世代は音楽が好きな人と写真が好きな人は大部分被っていたんだと思う。
日本レコード協会の集計によれば2022年のレコード生産数はこの9年で10倍近く伸びていて、まだまだ伸びそうな余地がありそうだ。
若い子がたくさんレコードを手に取って、スクエアフォーマットの写真に興味を持ってくれたらいいなぁって思う。そしたらフィルム写真も・・・って考えたけど、きっと今の若い子はスマホで撮って1:1にトリミングして終わっちゃうのかもなぁというところまで考えたところで晩御飯の呼び出しがかかった。
今日のところはここで。
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