analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

60年前に製造されたレンズの話:Summicron-M 50mm Rigidについて

Summicron-M 50mm 1st Rigidが手元に転がり込んできた。

転がり込んできたんじゃないでしょ?買ったんでしょ?って言われたらそれまでだが、レンズはそれぞれの画角で好きなものを一本だけという固い信念が揺らいでしまった。

外装ボロくていいからガラスの綺麗なレンズがあったらお願いねって言ったら外装ボロボロかつバルサム切れだの前玉傷だらけの歴戦のレンズがぞろぞろ出てきたので、当社比小さな声で「実用品ください・・・」とお願いしたらとても綺麗なレンズと値札がスッと差し出され、気が付いたらお会計が終わっていた。

よく考えればそもそも外装ボロでガラスが綺麗な個体がある方がおかしいのだ。これでいいのだ。

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冷たい雨の土曜日

雨が屋根を叩く音で目を覚ます。

ベッドから手を伸ばして床に置いてあるラジオのスイッチをつけたらチェコ少年合唱団の優しい合唱が流れてきた。

厚い雲を通して届く朝の光はいつもどことなくカラーネガ調で、憂鬱な気分になることもあれば優しく感じることもある。予定のない土曜日の朝はこれくらいのスタートがいい。疲れ切った身体を癒すのだ。

人の声を良く聞かせることがTivoliについているスピーカーの設計意図らしい。雨の音に混じって優しく響く音が心地良い。救いを感じる。

RICOH GRIII

今週の月曜日はいつも以上に気分が落ち着かず、朝からソワソワしたり不安に取り憑かれているみたいだと友人と話をしていたら「低気圧に勝てない歳になったんじゃないの?」って返された。

今まで僕は低気圧で調子が出ないって人の話を「大袈裟だなぁ」って笑い飛ばしてたけど、確かに言われてみれば天気の悪いウィークデイは得体の知れない不安にとりつかれているかもしれない。これからは気分不良を低気圧のせいにしようと思う。

今日はもう開店休業にきめた。

コーヒーとサンドイッチ作って昼過ぎまでラジオ聴きながらベッドでだらだらするのだ。ラジオがテンション高めの曲を流し始めたら、映画か本に切り替えてだらだら継続する。

RICOH GRIII

それではみなさま良い週末を。

アナログ写真の未来

最近中判カメラの中古価格が下がってきた気がする。フィルムの価格も馬鹿みたいな水準だし今度こそ本当にフィルム写真終わったな…という話が方々から聞こえてくるようになったので頭の片隅のもやもやを書き出してみた。

結論から言えばデジタルコンテンツが焼き尽くしたアナログの未来はとても暗い。

音楽や本はアナログメディアが生き残る可能性が高いものの、写真とか映像の世界はニッチなカテゴリとして細々と生きていく他ないかもしれない。

SNS離れやスマートフォン離れ(到底想像できないが)のように市場がいまの流れに飽きてしまうような奇跡的なことが起これば変わるかもしれないが、フィルム写真は細々とどうにか生き残るジャンルになるだろう。少なくとも日本ではもう終わったジャンルだ。これから発展するアジアではニューリッチの道楽として生き残るかもしれない。

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ライカのこと

写真なんて何使ったって撮れるよって話はよく耳にするフレーズなのに、そんなことを言う人に限ってライカ使ってる気がする。

かく言う僕自身も一番稼働しているカメラはライカM6だ。

イカじゃなきゃだめなんてことはないけど、フィルムのM型ライカは写真を撮る楽しさを残してる数少ないカメラなのだ。その人の技術がダイレクトに反映されるし適当に使えばちゃんと失敗写真を作ってくれるところがいい。現代のカメラでは「美味しい失敗写真」を作る方が大変だけどフィルムライカは素敵な失敗も作ってくれる。

N0742022

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写真と音楽

正対した左右対称の写真はテクノだという話を耳にして面白い例えだなぁって思った。

スタジオで撮ったビシッと左右対称な写真はミニマルテクノっぽいし、自然の中にある左右対称はアンビエントテクノっぽい。キラキラした都会の夜の左右対称はテクノポップっぽいしフォーマットが正方形になるといよいよ本気のテクノっぽくなる。

勝手な解釈をすると、この話の面白いところはテクノを想起させる絵面じゃなくたって規則的な繰り返しがあればいいというところだと思う。

キンミヤ焼酎の空き瓶が5つ並んでいたっていい。

根底にある写真のエレメントがテクノのエレメントと強く紐づいていることが面白いのだ。アメリカ南部の写真にブルースを添えてみても、とても浅いところでつながっているにすぎないのでエレメント同士の結びつきほど面白みはない。

構図とリズム

自分は写真を撮るときにあまり音楽ジャンルのことを考えていない。

現像した写真を見ながら「あ、これECMっぽいよね」とか「80年代っぽいよね」と後付けで考えることはあるけど、最初からテクノっぽく撮りたいとかジャズ調がいいなんて考えてシャッターを切っていない。そこまで上手にコントロールできないし。

そのかわりシャッターを切る時に(特に正方形フォーマットで撮るとき)はいつもリズムを意識している。撮影のテンポもリズムだし被写体の並び方もリズムだ。

ルーズにスウィングするリズムもあればワルツもあれば四つ打ちもある。ワンツーさんはいっ!って気分で撮る時もあれば123、123と三拍子になっているときもあるし詩的な気分なら四つ打ちだったりする。BPM120くらい。

識者貴兄に怒られるかもしれないけど、僕は構図なんてどうでも良くむしろリズムが大切だと考えている。

なんとか分割法とか黄金比なんてよくわからないし、僕の写真はほとんど日の丸構図だ。結果的にそれが世間で言うところのナントカ構図に落ち着いているのかもしれないけど、小難しい構図の話なんて後付けで屁理屈並べているに過ぎない。

「撮る瞬間に完璧に構図を決めていなければならない」なんて言い草は極めて日本のおっさん精神論の世界の話で、過去の偉大な写真家もトリミングは普通にしている。構図でごちゃごちゃ悩む暇があるならシャッター切ってしまった方がいい。

寄るのか引くのか、どんなリズムで並べるのか、腹に響くベースなのかサティのような淡々とした音の羅列なのかということの方が大切なのだ。

構図はリズムの表層だ。

音楽と写真

昔は音楽と写真は表裏一体だった。少なくとも2000年台の初めころまでそうだった。

iTunes Music Storeがデジタル配信の先鞭を打って楽曲単位のバラ販売を始めた時にこの関係が壊れてしまった。日本での楽曲配信が始まったのが2005年だから、あっという間に18年も時間が過ぎていて、この間にCDは駆逐されジャケットのアートワークの存在感も驚くほど小さいものになってしまった。

時代の流れといえばそれまでだけど、僕は31.5cm四方サイズのレコードジャケットがオーディオの横に置かれているのが好きだし、ラックに収められたレコードをパタパタめくることが好きだ。

良い音楽には必ず象徴的なアートワークがあったし、印象的な写真が添えられていた。レコードを探しに行くといろんなジャケ写を目にするわけだから、レコード世代は音楽が好きな人と写真が好きな人は大部分被っていたんだと思う。

日本レコード協会の集計によれば2022年のレコード生産数はこの9年で10倍近く伸びていて、まだまだ伸びそうな余地がありそうだ。

若い子がたくさんレコードを手に取って、スクエアフォーマットの写真に興味を持ってくれたらいいなぁって思う。そしたらフィルム写真も・・・って考えたけど、きっと今の若い子はスマホで撮って1:1にトリミングして終わっちゃうのかもなぁというところまで考えたところで晩御飯の呼び出しがかかった。

今日のところはここで。

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