レンズを2枚縦に並べたiPhone11は現代の二眼レフなんじゃないかと思い、手近にあったローライコードと比べてみて驚いた。厚さこそiPhoneの方が薄いけど縦と横の大きさはローライコードの方が小さいのである。
Fuji X-pro1/FUJINON XF 35mm F1.4
70年前のカメラといまのカメラ
2019年に発売されたiPhone 11に対してローライコードIVの発売は1952年。
70年近く前に製造販売されたカメラだけど必要最低限の機能だけ残して無駄なものが一切無く、それでいてレンズの性能や質感は抜群に良い。シンプルイズベストを地で行く思い切りの良い設計のお陰で、ローライコードは現代でも十分に使えるカメラだと思う。
iPhoneも素晴らしいプロダクトだけど70年後に使えるだろうか?
手元にある16年前に買ったPowerbook G4はバッテリーがへたり、電源ケーブルも断線しかかった時点で暗雲が漂っている。バッテリーとケーブルの部品がなくなった時点でおしまいだし、そもそもメーカーだって10年以上使うことなんて想定していないと思う。
iPhoneだってデジタル一眼だってさっさと買い換えてくれなきゃ商売にならない訳だし、長く使うと言っても高々5年くらいじゃないだろうか。バッテリーの規格だとか基盤が死んだらそこでおしまい。
機械式カメラといえど修理する職人さんがいなくなったらお手上げであることに変わりはないけど、電気製品よりはよっぽど長く使える。部品が摩耗劣化することは避けられないけど、それでも80年も持つなんてすごいことだと思う。
中判フィルム≠中判デジタル
Photo YodobashiさんでLeica S3の記事を読んだ時にふと中判デジタルのセンサーサイズが気になったので、市場にあるデジタルカメラのセンサーサイズとフィルムの規格を調べてみた。
驚いたことに(今まで知らなかったのかよと突っ込まれそうだけど)中判デジタルカメラって規格がそもそも曖昧らしい。そしてそのどれもが120フィルムのサイズに全然到達していない。
Leica S3のセンサーサイズで6x6版の43.0%程度だし、120フィルムに一番近いサイズと思われるPhaseone IQ260でも68.8%程度しかない上、お値段は驚きの530万円もするのである。
電卓叩いて驚いたので、ありそうでなかったサイズ比較表を作ってみた。
富士のGFX100とハッセルX1Dも共にセンサーサイズが43.8mm × 32.9 mmなのでほぼほぼ下図のLeica S3と同じサイズ。ちっさい。
ユーザーから怒られるかもしれないけど、今市場に出ているデジタル中判のほとんどはフルサイズデジタルカメラにすね毛が生えた程度のものだと言っていい。すね毛に大枚叩かせる売り方をする方も如何なものかと思う。
CFV II 50Cデジタルバック買って500C/Mに付けてみたいなぁなんて思っていたけど、大金つぎ込む価値があるのかとちょっと考えちゃうよね。センサーサイズが全てじゃないし写真のクオリティはサイズじゃないと解ってはいるけど、安い買い物じゃないんだからもっと夢を見させてほしいよね。
デジタルカメラを諦めて中判フィルムカメラを買わないか?
長々書いたが、言いたいことをまとめると要点は以下の通り。
- 今のデジタル中判は中判サイズじゃないよねということ
- 120フィルムと同等のセンサーは技術的に作れるけど無茶苦茶な値段だよねいうこと
- 中古市場に出ているフィルム中判カメラは価格もこなれているよ、ということ
- ここまで読んだらみんな中判フィルムカメラを買うんだ!…ということ
フルサイズデジタル一眼もミラーレスも一通り行き渡ったし、みんなと同じ機材持って同じ写真撮ったって面白くもなんともないんだから、そろそろみんなでフィルム中判に移行したらいいと思う。120フィルムの需要が増えたら少しだけフィルム価格も安くなるかもしれないし。
新製品を買っては捨てるという経済の歯車になるのを一旦やめて、きちんと作られたものを大切に使う生活様式に戻るの。現代生活様式からの名誉ある撤退。
フィルムのランニングコストさえ目を瞑れば新しい世界が広がっているかもよ。
現像代だとかスキャン代が気になるのなら、スキャナ買って自家現像やってしまえば1年で元は取れるんだし今中判フィルムカメラを始めない手はないんじゃないかな。
何を買う?中判フィルムカメラ。
中判フィルムカメラにはHasselbladはじめMamiya6、Mamiya7、Plaubel Makina67などなど素晴らしいボディとレンズがたくさんあるけど、ここではRolleicordをお勧めしたい。特にモデル末期のIV型かV型。
おねだん4万円から7万円程度なので初期投資も低く抑えられるので、スキャナやら自家現像への投資に回せるのが良い。
廉価版ローライフレックスというなかれ。
価格こそこなれているけどシンプルで軽くて造りも良いのに、付いてくるクセナー75mmの写りのよさが圧巻で、破綻なく隅々までビシッと決まるしカラーネガで撮っても古臭さがない。これ本当に1950年代のレンズかと思うほどモダン。
ヴィヴィアン・マイヤーが使っていたローライフレックス・オートマットMXにもこのレンズが使用された個体があったようなので、もしかしたら彼女の作品もこのレンズで撮られていたかもしれない。
シャッター音もほとんど聞こえないくらい静かで、当然ながらシャッターを切った時のショックも少ないのでストリートを撮る時にとても頼りになるカメラだと思う。
Rolleicord IV/Xenar 75mm/Ilford Delta100
Rolleicord IV/Xenar 75mm/Kodak Portra400
Rolleicord IV/Xenar 75mm/Kodak Tmax400
Rolleicord IV/Xenar 75mm/Fuji ACROS II
どう?良くない?フルマニュアルの機械式カメラって聞くと不安?
僕の場合はクソ個体摑まされたので修理代を含めたら6万円かかったけど、昨今の35mmフルサイズデジタルカメラとレンズに20万円近くかけるより満足度あると思う。
機械式カメラできちんとピント合わせられるのか?とか 露出どうしてんの?って不安は使ってみないと解らないと思うので、もう騙されたと思って買ってみたらいいと思う。僕みたいにクソ個体を摑まされても直してくれる修理人さんはいるし、ちょっと練習したらすぐにできるようになるから心配するより買うがやすし。