analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

Lightroomのサブスクに疲れたあなたへ

事の発端はApple Siliconが搭載されたM1 MacBook Proを買ったところだったとも言えるし、新しいMacBookが原因でなくとも遅かれ早かれ現像ソフト引越しの時期は来たのかもしれない。

Lightroom4.3はもうダメみたい

フィルム写真が中心になってる自分の場合は簡単な編集と強力な検索管理機能があれば十分なのでLightroom4.3をずっと使ってきたんだけど、M1 MacBook Proに引っ越したらLightroomの挙動がおかしい。編集が適用されないとか編集している画像の右上が見切れるとか。Lightroom6に至っては起動すらしなくなるようなので、Adobeにとってサブスクに応じないユーザーは客じゃないみたい。

今度こそ本当にさようなら、パッケージ版Lightroom

やっぱサブスク制はだめだと思う

ユーザーを囲うだけ囲ってからサブスク化して毎月金を毟るAdobeの商売って如何なものかと思う。

ビジネス側からしたらアリだろうけど、5年10年下手したら20年近く付き合うユーザーとしては全然ありがたくもない。24時間365日電話かチャットでなんでも教えてくれるサービスみたいなものがあれば話は別だけど。

この記事を書いている2021年11月現在、Lightroomの最低プランが月額¥1,078なので電卓引っ張り出して計算してみると…年額¥12,936。5年で¥64,680、10年で¥129,360…。ちょっと高すぎるよね。

…と言うわけで、AppleがApertureを投げ捨てた2014年頃から7年お世話になったAdobeLightroomに別れを告げることにした。

転出先の候補

サブスク制じゃないことが大前提で以下の機能を備えていそうなCapture One ProとDxO Photolab5の2つを転出先の候補とした。まずは使ってみないと始まらないのでトライアル版をダウンロードして天気の悪い週末に一気にお試ししてみた。その感想とLightroomから乗り換えを考えてる方が気になりそうなところをざっと述べてみたいと思う。

  • キーワード一括設定ができること。強力な検索機能があること。
  • ファイル管理が容易であること、バックアップが簡単であること。
  • ノイズ処理、ダスト処理が簡単で早いこと。
  • 動作が軽快でサクサク動くこと。

www.captureone.com

tidd.ly

Capture One を使ってみた感想

Capture OneはLightroomと同様に読み込んだ写真をカタログで管理する。

少しややこしいのはCapture Oneではカタログの他に似たような概念としてセッションがあり、写真を読み込む時にカタログにしますか?セッションにしますか?と聞かれる。

結論から言うと、このふたつはシステムの中での写真の管理方法の違いでしかなくどっちを選んでも以降のワークフローとアウトプットには変わりがない。

じゃあなんでわざわざややこしくしてるのかと言うと、元々Capture Oneの写真はセッション管理であったのに後付けでカタログという概念が入ってきたかららしい。詳細はこちらの記事で確認頂くとより突っ込んだ理解ができると思う。

ワークフローもアウトプットも変わらないとは言え、ファイル管理の方法が違うのでバックアップを取る時に違いが出てきそうだけど、その話はまた日を改めて説明しようと思う。

インターフェースは至ってシンプル

インポート作業はLightroomと似たような感じなので迷うことはないと思う。インポートウィンドウに添えられた説明はLightroomよりも親切なのがいい。

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直感的にサクサク進む編集

インポートしたカタログは左側のパレットに、内包される写真が右側のパレットに表示され、露出やWBの調整はカタログの上に、傾き補正やトリミングは中央上部にまとめられていて、これもLightroomに親しんでいる人からしたらそんなに迷わない構成と感じた。

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キーワード設定と検索はちょっと弱いかも

メタデータを選択するとキーワードの設定パレットが出てくるんだけど、複数写真に一気にキーワードを設定することができなかった。

デジカメだけで写真を撮るのであればExif情報を検索できるので問題ないと思うんだけど、フィルム写真の検索はキーワードかファイル名に頼ることになるので、この点はもう少し検証してみようと思う。

⌘Fで検索窓が出てくるので設定したキーワードやらExif情報を検索できるが、Photolab5の方が検索機能は親切かもなぁと思った。

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修復は少し独特かもしれない

Lightroomならスポット修正ツールを使ってスキャンしたフィルムについたゴミをちょいっとクリックすれば消えてくれたけど、Capture Oneの場合は修正する部分をクリックすると修復レイヤーが作成され、これを適用することで修復がなされる。一手間かかる感じ。

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フィルム粒子の機能は面白いと思った

VSCOだとか後述するPhotolab5の追加Film Packでは、往年のフィルムを再現したフィルタを売りにしているが、Capture OneではPortra風だとかTmax風…みたいなフィルムシミュレーションではなくて、粒状のシミュレーションのパラメータを持っているのが面白いと思った。

試しに海の写真と猫の写真にT-Grainを強めにかけてみた等倍画像が以下のもの。

普段フィルムで撮っている自分から見てもいい感じだと思う。

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透かしはエクスポートするときに設定する

透かしとウォーターマークは写真をエクスポートするときに設定する。このワークフローはLightroomと同じだけど、透かしの登録だとか文字列の位置を微調整できるのがLightroomよりいいかな。Lightroomの透かしは使いにくかったので。

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想定外だったストレート現像のクオリティ

次の写真をCapture OneとPhotolab5にインポートして比較してみた。

読み込んだままストレートでNEFを現像したはずなのに、出力された写真は思いっきり色味が違っていた。

変なパラメーターいじってないことを確認し何度かやってみたけど、結果が変わらないので現像エンジンの差は結構あるのかもしれない。

引きで眺めてみるとPhotolab5の方が素直なホワイトバランスと色再現に思える。

拡大してみると驚きは続く。

等倍で比較したところPhotolab5はナチュラルな画像を出力したのに対し、Capture Oneは水が恐ろしく生き生きしている。広告写真のような躍動感。自分が巨匠になったんじゃないかと錯覚しそうなくらい躍動感に溢れている。

Photolab5の名誉のために言っておくと、オリジナルのNEFをプレビューで開いて両ソフトから出力した画像と比較してみたが、むしろディテールや色味はPhotolab5の方がオリジナルに忠実で、Capture Oneから出力した方は明らかに処理が異なる印象だった。

この辺は画像処理エンジンの問題なのか、それとも自分が見落としているだけで何かプリセットが悪さをしているのかもう少し深掘りしてみたい。

DxO Photolab5を使ってみた感想

Photolab5はLightroomやCapture Oneと違い写真ファイルが格納されているフォルダを覗いて写真を表示し編集していく感じ。

Photolab5で編集するとオリジナルファイルが格納されているフォルダに「オリジナルのファイル名.dop」という拡張子のファイルが生成される。

これは所謂サイドカーファイルで、オリジナルに適用した変更や設定がこのファイルの中に書き込まれる仕組みなので、バックアップを取るときはオリジナルとサイドカーファイルの入ったフォルダを丸ごと移動してしまえばよいと思う。これは簡単。

写真の検索機能も強力かつ簡単

写真を複数選択して右下のキーワードパレットに単語を入力することでキーワードを一括で登録できて、⌘Fを押すとライブラリ全体から写真を検索してくれる。

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検索は焦点距離でもカメラの機種でもキーワードでもOKで、適当な文字列を入力しても分類ごとに探し出してくれる。地味に便利。

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新規ユーザーに優しいお節介

フォトライブラリから写真を選択して設定を押すと個々の写真の編集に移る。

傾き補正とトリミング、ホコリ取り(修正)は写真の上のアイコンから、WBや露出の調整は右側のパレットから行える。

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使ってて地味に便利だったのが、右側のパレットにマウスを持ってくと機能の概要が表示されること。

不慣れな現像ソフトって独特の用語を使っていたりするので、このお節介焼きはとても嬉しい。

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別売りのFilm Packの完成度が素晴らしい

Photolab5を選ぶ理由のひとつにFilm Packがあると思う。

これはVSCOみたいなフィルムフィルターなんだけど、過去の名作フィルムから現代のフィルムまでをシミュレートしていて、最近発売されたAdox CHS 100IIだとか惜しまれつつ製造が完了したSilvermaxまでもがシミュレートされている。

このシミュレーションはかなりの本気度の上に成り立っているようで(参照)、デジタルで撮影した写真にFiim Packのフィルタをかけ、手持ちのオリジナルのネガと比較してみたところかなり見分けがつかない感じだった。

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昔VSCOがパッケージ売りしていたフィルターと比べてみた。

左がLightroomプラグインフィルターを適用したもの、右がPhotolab5 Film Pack5のフィルター写真。適用したフィルタはVSCOがAgfa SCALA200++でPhotolab5はAgfa SCALA 200X(適用度100)

露出が半段くらい違うように思えるけど、雰囲気としては結構近いと思う。

ユニークなプリセット

Film Packも素晴らしいんだけど付属しているプリセットだけでも十分に遊べる。

プリセットの名前もユニークで、1926年アジェとか1973年石油危機なんてものまであって、正直なところこのプリセットだけでもいいんじゃないかと思ってしまう出来の良さ。

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Deep Primeという圧倒的なノイズ除去

DxO曰くディープラーニングニューラルネットワークに基づいたノイズ除去とデモザイキングとのことだったので、どうせAIが作る安っぽい塗り絵でしょ・・・くらいに思っていた自分はここでぶっ飛んだ。

2009年発売の古いデジタルカメラ(D700)をISO8000に設定して撮影したノイズだらけの写真でのビフォーアフターを見て欲しい。

テクノロジーの発展は素晴らしいというか、この機能のためにPhotolab5を買うのもアリなんじゃないかとさえ思った。

D700みたいな古いデジカメが生き返ったようだ。

ダメダメなところ

ここまでふたつの現像ソフトをベタ褒めしてきた(Lightroom4.3からのジャンプはあまりに大きかったので何もかもがお上りさんのように輝いて見えた)けど、もちろんダメなところもあるので書き出してみる。

Capture Oneのダメなところ

Capture One Proはスキャナで作成したモノクロームTIFFの編集ができない

理由はわからないけどトリミングもできないし露出もいじれず、編集という編集は何にもできないので、ネガスキャンした写真を編集したかったらJpgで取り込むしかない。

 

2021年11月6日追記

Capture Oneはカラープロファイルがグレースケールだと写真のインポート及び編集ができない仕様らしい。数年前から指摘され続けているので、これは不具合ではなく仕様なんだと思う。

スキャンしたモノクロフィルム写真をCapture Oneで管理するには、プレビューで開き.HEICか.HEIF形式で書き出した後Capture Oneにインポートすると問題なく扱える。

DxO Photolab5の残念なところ

DxO Photolab5のDEEP Primeは強力なツールだけど、RAWファイルにしか適用できない。スキャナーで生成したTIFFやJpgは対象外になるので、フィルムスキャン前提だとかJpg撮って出しの人は要注意。

また、Capture Oneに比べて若干処理が重く、プリセットパレットを開いて適用するプリセットのプレビューを表示させると処理がカクカクになってしまうところも残念なポイントだと思う。

Photolab5はDEEP Prime機能のみApple Silicon GPUを利用していて、その他はネイティブ対応していないためRosetta2経由の処理になっているらしい。(参照

とはいえ、プリセットのプレビュー表示以外はこれはCapture Oneに比べて(ほんの)1/4テンポ遅れるくらいなので使ってるうちに気にならなくなるかもしれない。

まとめ

取り急ぎ雑観を書いていたらあっという間に9,000文字を超えてしまったので、この2つの現像ソフトに対する雑観を簡単にまとめると次のような感じ。

  • どちらのソフトウェアもLightroomの仕組みが理解できる人ならハードルは高くない。
  • 軽快な動作を求めるならCapture One。Photolab5はApple Siliconへの対応途上。
  • ストレート現像で広告写真のような処理がされるCapture Oneは凄い(要検証)
  • 強力なNRを簡単に実現したい、往年のフィルムの雰囲気を味わいたいならPhotolab5

個人的にはどちらのソフトも素晴らしく魅力的なので、どちらか一方に寄せるのは難しいと考えている。非常に悩ましい。

もちろんLightroomも素晴らしいプロダクトであることは間違いないが、写真現像ソフトはある程度成熟したカテゴリであることを考えれば毎月使用料を徴収されながら使うよりはパッケージで買ってしまう方が良いのではないかと考えている。

Capture OneにしてもPhotolab5にしても2-3年使えば元を取ってしまうので、長く写真を続けていくのであれば3-4万円の出費はむしろ安いと言っていい。

 

追伸:新しいデジタルカメラとディスプレイが欲しくなってしまった

最新の現像ソフトを比較していたら、困ったことにデジタルカメラもいいなぁとか思い始めてしまった。そして13 inch M1 MacBook Proに飛びついたことを後悔している。外部ディスプレイが欲しくなってしまったから。

LEICA M10-Rとか・・・いいんじゃない?いいよね?