M6に付けっぱなしにしていたColor Skopar 28mm F2.8 Aspherical Type IIは素晴らしいレンズだったのだが、思うこと*1がありこのレンズを手放し、Biogon 2,8/28 ZMの購入資金に充てた。
入手して数週間使ってみたが、光学性能はもとより触感や重量感が素晴らしく。現時点で入手できるMマウント28mmのスタンダードと断言していい。Biogon 2,8/28 ZMは人目に触れない隠れた名レンズだと思う。
ZMシリーズがかなりマイナーな上、35mmや50mmに比べると28mmは地味な画角なのかBiogon 2,8/28の記事をあまり見かけない。それでもこのシリーズの生産が続いているのは、このレンズ群を支持する声が絶えないからだろう。

大きく膨らんだ前玉から強い引力を感じる。若干対称性が崩れているとはいえBiogon構成を引き継ぐレンズだ。
- Biogon 2,8/28 ZMとZMシリーズについて
- 等倍で確認せずともわかる「気持ちよさ」
- ぱっと見て一発合格、そんな写真が出てくるレンズ
- Biogon vs Color Skopar, 18年後に設計されたレンズとの比較
- 結論: Biogon 2,8/28は現時点でMマウント28mmの最適解
Biogon 2,8/28 ZMとZMシリーズについて
ZMシリーズは、ZEISS IKONのレンズラインナップとして2005年に展開されたレンズ群だ。
このシリーズはZEISSが「監修だけする」ライセンス品ではなく、本国Carl Zeissの設計をコシナで製造するという分業体制で製造されている。
ボディであるZEISS IKONが2013年頃に終売になるのだが、ボディ終売後もレンズ群の販売が続いており、驚くべきことに初期ラインナップは発売から20年が過ぎている。それも発売時と同じ価格で。まさにレンズ界の生きている化石。
詳しくはC Biogon 2,8/35の記事を参照。
等倍で確認せずともわかる「気持ちよさ」
Color Skoparからの転出先としてElmaritやSummicronを選ばなかった理由は、マイクロコントラストの強いレンズが欲しかったから。
果たしてこの新しいレンズ(?)はいかがなものぞ…と、M11-Dにつけてあちこちぶらぶらして撮った写真をMacBook Proのディスプレイで表示した瞬間、写りの気持ちよさに驚いた。背景と主題、色や物質の境界がとても明瞭なのだ。等倍表示せずともぱっと見で「なんかいいよね」と感じる。





「気持ちいい」だなんて、そんな主観的で雑なまとめ方どうなのよ…と自身の語彙力のなさに呆れちゃうのだが、この浮き出るような写真を支える強いマイクロコントラストと溢れる色、瑞々しい葉の表面や影の締まりを眺めていると、「気持ちいい」という感想に収束してしまう。
ぱっと見て一発合格、そんな写真が出てくるレンズ
レンズの記事を書こうとすると、等倍表示した結果をあれこれ語りたくなっちゃうじゃないですか。
何か大きな違いがあるはずだと信じてディテールを見ていくけど、現代のレンズにはそんな大きな差ってあまりなく、ディテールに入れば入るほど「どうでもいいよね」になってしまう。
ディスプレイいっぱいに広げた写真と睨めっこし、重箱の隅から拾い上げた差分を手持ちの知識をフル動員して言語化しようとしたけど、そこまで明確な差がなく無力感と共に白紙回答…みたいな感じ、身に覚えあるでしょう?。
安くはないレンズを買った自分の判断を後から肯定しようと、等倍に伸ばしてディテールを確認して重箱の隅をつついて、あれ…?みたいな経験。全然違いがわからないから「レンズの味」ということにしたりポエムを添えたり。
このBiogonに関しては、等倍表示せずともぱっと見で惹かれる写真が出てくる。
海外のレンズレビューでたまに目にする"3D Pop"という表現があるが、そう言いたくなる気持ちが分かる。コントラストが強い上にフラットで空間を均質に写す特性が、ボケに頼らずとも写真の中のエレメントが浮き出る結果に寄与している。
要は出てくる写真が強いのだ。

Biogon vs Color Skopar, 18年後に設計されたレンズとの比較
とはいえディテールの話も書いておかないと記事にならないので、かつてColor Skoparで撮った写真と比較してみる。撮影日が違うので純粋な比較にはならないが、できる限り条件を揃え*2平面的かつごちゃごちゃした被写体で比較。
私見は後回し。レンズ名を伏せておいたので、スライダーを動かして写真を眺めてほしい。
答えは…
Sample AがCOLOR-SKOPAR 28mm F2.8 Aspherical Type II、Sample BがCarl Zeiss Biogon 2,8/28。
どちらのレンズも中央がきちんと解像するのは当然として、Biogon 2,8/28の場合は周辺の解像感もあまり落ちず、文字や色の分離がとても良い。TRANSITの巻数の白、黄色、青の分離もよく、右端よりのNANO HOUSEの境界の分離、Small Houseの文字が流れずに踏みとどまるあたりはBiogonたる所以だと感じる。
中央に関してもBiogon 2,8/28のマイクロコントラストは素晴らしく、21年前発売の現行品とは思えない現代的な写りをする。
結論: Biogon 2,8/28は現時点でMマウント28mmの最適解
Biogonと言えばHASSELBLAD SWCのために制作されたBiogon 4,5/38が最高傑作だろう。
利便性を犠牲にして描写に全振りしたSWC Biogonの性能は素晴らしく、隅から隅まで歪みなく猛烈にシャープ。ディテールが流れることもない。レンズのためにボディを作るという思想には執念を通り越した狂気を感じる。
一方、本レンズはBiogon銘を冠されているとはいえ、Mマウント向けに多くの制約の中にBiogon構成を落とし込んだレンズなので、当然SWC Biogonとは別物だ。開放で撮ると凡庸な広角レンズと言っていいかもしれない。
中心は常にシャープである一方、開放で撮ると周辺はぼんやり流れるので「こりゃ買い物失敗か?」と一瞬狼狽したが、F5.6くらいで 急に周辺画質は改善され、F8-11あたりで隅から隅まで猛烈な描写になる。初めてSWC Biogonで撮ったネガを見た時と似た驚きがある。
すでに僕の手元にないので直接比較できないが、Color Skoparは現行のElmarit-M 2.8/28 ASPHを上回る光学性能を持つようなので、この比較を考慮に入れるとBiogon 2,8/28 ZMは現時点で入手できるライカMマウント28mmの最適解かもしれない。
ZMシリーズの生産数が少ないとはいえ、中古市場にもあまり出回っておらず値崩れもしないことは、このシリーズの良さを物語っているのではないだろうか。
Mマウントの28mmレンズで迷っている人は、新品で入手できるうちにぜひこのレンズを検討対象に入れてみてほしい。期待を裏切られるとこはないはずだ*3。











