analogue life

シンプルな暮らし

Epson GT-X 980を評価する

いままで避け続けてきた中判フィルムに手を出してしまったことから、120mmフィルムを取り込めるスキャナーが必要になった。
フラットベッドスキャナーの画像が甘いということは重々承知していたので、写真フィルム専用のスキャナーが欲しかったのだけど、お安く買っても170万円以上するHasselbladのFlextightを筆頭にどれもこれも目玉が飛び出る価格。

おそらく一番手が出しやすいと思われるPacific Image社のブローニーフィルムスキャナーでも12万円もする上に解像度も3600dpi止まりだし、Plustek社製のOpticfilm120は既に製造が終わっていた。フィルムスキャナは枯れた製品と言われるけど、こと中判以上のサイズに関しては絶滅危惧種と言っていいかもしれない。

とはいえ今更スキャンの為だけにお店に向かうのも馬鹿馬鹿しいし出費も馬鹿にならないので、思い切ってフラットベッドスキャナーの最高機種と思われるEpsonのGT-X 980を買ってみた。

中判フィルム用に買ってみたけど、いい機会なので35mmネガを使ってPlustek 8200との比較をやってみた雑感やチープ極まりないホルダの件等をつらつらと書いてみる。文章量も画像量も多くなってしまったので目次なるものもつけちゃおう。

 

比較条件

先日シンガポールをふらふらしていた際に撮ったカラーネガ(Kodak Portra 400)と湘南〜横浜〜東京で撮ったモノクロネガ(Adox HR-50、Fuji ACROS)をスキャンして比較する。

Plustek Opticfilm 8200Aiは付属のSilverfast 8で読み込みを行なった。解像度は3600dpiで、NegafixはKodak Portra400を指定。露出やコントラスト修正せずにTIFF出力した。モノクロはNegafix適用なし。

一方のEpson GT-X 980も露出やコントラスト修正なしの状態で3600dpiでTIFF出力しているが、エプソンのソフトウェアにはNegafixのようなフィルムの風合いを再現する補正はないのでスキャナが取り込んだ色がそのまま反映されている。アンシャープマスクはかけていない。読み込みはEpson Scan 2。
いずれもソフトウェア側のゴミ取り機能はオフにしており、出力した画像はAdobe Lightroomでクレジットを入れた後にJPEGへ出力した。

35mmフィルムスキャン結果の比較

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フラットベッド式はディテールが甘いと言われているものの、こうやって両者を並べて比べてみると精細さに大きな差はないように思える。色味はEpsonの方が若干寒色に寄っているけれど、この変は個々人の好みだと思うので個人的にはあまり大きな差はないかと思った。

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モノクロネガのスキャン結果も概ねカラーネガと同様で、拡大して眺めてみなければ両者間の決定的な差はない。 

ディテールを比べてみる 

次に各作例について等倍切り出し部分を比較してみる。
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左がPlustek 8200Aiで右がEpson GT-X 980。

正直フラットベッドスキャナに全然期待していなかったのだが、等倍表示してみるとディテールの再現は全然専業スキャナに負けていない。モノクロネガスキャンの結果をよく見ると微妙にGT-X 980の方が眠いのだが、解像感に関する両者の差は軽微である。

カラーネガの比較では解像感は互角に感じられるがPlustek 8200Aiは暗部に白いノイズが乗ってくるので、Epson GT-X 980の方が好ましい結果のように思える。

…と、ここまでの話の流れからするとEpson GT-X 980が優れた製品に見えるのだが、このスキャナには致命的な欠点がある。

GT-X 980の致命的な欠点

それはスキャンした画像に写り込みまくるゴミ問題。

ひとコマずつスキャナに押し込むPlustek 8200 AIと異なり、GT-X 980は原稿台が開放系なので埃もゴミも毛屑も入りたい放題なのである。

原稿台だけが問題であるならばスキャン前にきちんと清掃すればいいだけの話なのだが、このスキャナーの最大の問題点は静電気を帯びて埃ホイホイ状態になるプラ製のホルダとアンチニュートンアクリル板なのである。

まずはゴミの例を眺めてみてほしい。

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写真を拡大してみるとブロアやエアダスターでは吹き飛ばせない小さな毛屑や埃が執拗にまとわりついていることがわかる。

スキャン前に入念にホルダを清掃してみてもこの体たらくである。35mmフィルムを18枚一気に読み込むことが出来るのがこのスキャナの最大の利点であるにも関わらず、これでは安心して一気に取り込むことなんてできないし、入念に毛屑対策をして取り込んでも30%くらいは失敗スキャンが発生する。取っても取っても取っても取っても取っても取っても…どこかに写り込む毛くずやら埃に正直うんざりする。それも細かいものが多量に…だ。

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私は自分のことをあまり神経質だと思わないけどそれでもこれはちょっと…。毛屑はアクリル板とプラスチックの継ぎ目のところにも引っかかるのでさらに厄介。

さらに付け加えると、120mm用のホルダにフィルムを挟もうとすると必ずと言っていいほど上手く挟めない。ホルダの傾斜している部分にフィルムの端を当てて、挟み込むことでフィルムの歪みを正そうという設計なのかもしれないが、こいつのせいでまっすぐフィルムを挟むのが異様に難しい。

ホルダーを手作りするという解決策

あまりに毛屑がひどいので、猫の毛を集めるコロコロの要領でメンディングテープを用いてアクリル面を撫でたらテープの跡が盛大にアクリル板に付着しムガーッとなりEpson GT-X 980はゴミクソスキャナーだとtwitterに殴り書きしたら、以下のリプライを頂いた。

厚紙マウント……?

そうか!なんで気づかなかったんだろう!自分でホルダ作っちゃえばいいんだ!厚紙で作れば静電気と毛くず埃くずの問題が解決できるってことに全然気がつかなかった…!

世間的にはBetterscanning社製のホルダが良いとされているようだが、結局樹脂製だし6x6用しかなさそうだしホルダだけでも100USDもする(!)ので、自作することにした。 

手作りホルダの製作開始

…ということで、GT-X 980用の手作りホルダの作成に取り掛かった。参考にしたサイトは以下の通り。

純正ホルダとスキャナ側に認識させるための標識と切り欠き、光の通る穴の3点がポイントのようだ。

ameblo.jp

photo.site-j.net

純正のプラスチックホルダは5mm程度の厚さであるので、2mm厚と1mm厚の紙をサンドイッチした以下の断面のホルダを設計した。

フィルムの反りが1mm以下に収まることを想定して紙製ホルダに挟むだけのパターンと、反りがひどい場合に上から無反射ガラスで押さえるパターンの2つの方法に対応できる設計とした。

試作した後で気づいたのだが無反射ガラスで押さえるパターンは、反りが逆だと全く意味がないのと、無反射ガラスとフィルムの距離が不均一になるとスキャン結果に思いっきり影響が出るので、ホルダにフィルムを挟むだけ方式でも良いと思う。

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材料は世界堂で調達したブラックボード。価格もA2判で850円程度。

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紙はその性質上どうしても平面にはならないので、反ってる側を意識して切り出してはり合わせると良い…というか、そうしないと平らなホルダにならないので注意。のりは普通にコンビニで売っている液状タイプのものでOK。

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出来上がったのがこんなホルダ。

短辺側の切り欠きと光を通す穴を設け、スキャナ側にホルダを認識させるための白い四角はメンディングテープの重ね貼りを切り取ることで実現した。フィルムは短辺側のスリットを通してスルスル入れる方式にした。

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35mmフィルム用の型紙をFirestorageに仮アップしました。PDFの型紙をA3実寸で印刷しお使いください。そのうちきちんと公開します。

https://firestorage.jp/download/3b59c5a100eb6595ddcc1294b2c742befe82944b

120mmフィルム用の型紙もFirestorageに仮アップしました。同じくPDFの型紙をA3実寸で印刷しお使いください。

https://firestorage.jp/download/1b5abc75b9f763338ad41c1f318e7f91ddc3660e

手作りホルダと純正ホルダの比較 

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若干のゴミは残るものの、細かな毛くずと埃ではないのできちんとブロアで飛ばせば処理できるレベルまでゴミ問題は低減できたと思うがどうだろうか?

ニュートンリングっぽい何かも見当たらないし(もし写ってたら教えてください!)、もう全然手製ホルダでいいじゃんねって感じ。

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左側が純正ホルダで右側が手製の紙製ホルダ。ディテールを比較しても純正と遜色ない。むしろアクリル板を省略している分ディテールが精細になったような気がしないでもない。

まとめ:GT-X 980は買いか?

ディテールの描写とコントラストに関してはPlustek 8200 Aiが僅かに上回るように思えるが、総合的な画質や色味という観点から眺めてみるとこれはもう個々人のお好みの世界ではないだろうか。

GT-X 980は35mmフィルムであれば18コマまで一気に取り込めるので、一回のスキャンで多量のコマを取り込む必要がある人に取っては素晴らしい選択になると思うし、中判フィルムのスキャンとなるとほぼGT-X 980一択になる。

フラットベッドということで精細感がない眠い画質を心配されている方がいるとしたら、その点は安心して大丈夫だと思う。というか全く問題ないと言っていい。

ただし付属のホルダは燃えないゴミなのできちんと分別して正しい日に収集してもらってくださいね。 

 Plustek 8200Aiについては過去記事も参考にどうぞ。