analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

今月のあとがき: 2023年11月

本の最後に添えられる「あとがき」が好きだ。

読了した満足感や高揚感、腑に落ちない問題提起で終わってしまったルポルタージュでも不協和音めいたエッセイでも最後に添えられるあとがきはデザートのようでもあり、読み手をそっと受け入れ本文が書かれた時代と今を繋げながら背表紙を閉じるセレモニーの主催者でもあり、読了後にゴールで初めて顔を合わせる伴走者のような存在でもある。

 

ブログってそもそもなんだっけ?という何百万回も繰り返された問に対するひとつの解は「日記」なんだと思う。

とはいえ僕を含め大多数の人はハリウッド映画のようにピンチと爆発とロマンスが120分に詰められた超高密度な生活なんてしていないのだから、安定して面白い日記を書き続けるのはちょっと難しい。

日記の代わりに「月報」なら書けると思うんだけど、月報というと仕事を思い出して嫌な気分がゲップと一緒に飛び出してしまいそうなので、これからは月末に「暮らしのあとがき」をシリーズものとして書いていこうと思う。ノージャンルで思ったことや感じたこと、見聞きしたこと飲み食いしたものや買ったものについて書く。あとがきの著書になって今月の自分自身を後からあれこれ無責任に書くのだ。

リュックサックを新調した

長いこと仕事にも帰省にもちょっとした旅行にも、雨の日も暑い日も使われ続けたKULA30のファスナー部分が裂けてしまった。

カメラ機材を持ってあちこち行ける丈夫さがありながらも仕事にも使える代替品を探したけど、KULA以外の選択肢がなかったので1つ上の40Lを買ったら案の定デカかった。でかいだけあって色々入るし金属フレームが入っているので30Lみたいにヘタらなさそうなのがいい。

30Lと同様にサイズの割に軽くてレインカバーも付いていて、ファスナーには盗難防止の鍵も付けられる。上下の気室を分けるファスナーも丈夫そう。唯一の難点は床に置いたときにゴロンと倒れてしまうことか。30Lはバランスとって立ってくれたんだけど。

これから長い間、よろしくお願いね。

滑り落ちるカメラ、地面に激突したレンズ

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そっくり返ったサンダルのストラップを直そうとしたら肩にかけたカメラのストラップの方がスルッと滑ってレンズから地面に着地した。大切に使ってきたSummicron 50mmの現行品なので、一瞬世界が凍りついたし時間が止まった。サンダルのストラップに気を取られてカメラのストラップが滑り落ちるとは世紀のバカなのではないか、自分。

 

急いで拾い上げてみると組み込みフードがへこんでいるもののレンズに問題はなさそうなので一安心してピントリングを回してみたら、ヘリコイドに何か異常があったのかピントリングが重くて回らなくなっていた。急いで帰って分解して掃除したら元に戻ったんだけど…あのヘリコイドの引っかかりは何だったんだろう。

【映画】すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコを見てきた

子供に連れられ久しぶりの映画館に行ってきた。

生まれてこの方アニメとほぼ無縁の人生なのにこのシリーズは1作目から見ているので立派なすみっコファンと言っていいかもしれない。往々にして映画も音楽も1作目にぶち込んだ情熱って二匹目のドジョウを狙ってずっこけて3作目で息の根が止まるようなイメージがあるんだけど、今回の映画も粗末に扱われたモノとすみっコたちの優しい暮らしが70分という短い尺の中でそつなくまとまっていて面白かった。

sumikkogurashi-movie.com

【読書】なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか

まだ半分くらいしか読んでいないけど、今月読んだ本の中で一番面白かった。

著者は精神医でもなければ心理学者でもない神学の元大学教授で、ある日バーンアウトに陥ってしまうところから彼のバーンアウトに関する考察が始まる。

朝になっても出勤の準備ができず、何時間も同じミュージックビデオを繰り返しみていた。

(中略)

この頃の私は徐々に短気になっていった。学生のレポートを返すのは遅くなり講義の準備も捗らなくなっていた。これまで学生の興味を掻き立てる手段を思い出そうとする度に思考が停止し、頭が働かなくなった。

これは身に覚えがありすぎる。

思考が停止して行動が起こせず文章やメールが理解できなくなり、それでも次から次へと問題とやらなければならないことが迫ってくる。コロナワクチンを打てというあの理不尽なプレッシャーに押され生産性がガタ落ちになり、エンスト起こしながらどうにかノロノロ処理していた感じはまさに去年までの自分で、だいぶ回復したとはいえ今も時折思考が停止してはふらりと散歩に出かけたり夜の街を徘徊しながらのらりくらり遣り繰りしている。

 

著者は中世以前のバーンアウト(と考えられる記述)や現代の欧米におけるバーンアウトを紐解き、70年代に流行った「神経衰弱」がいかにマーケティングとビジネスの材料となってしまい人々の苦しみが置き去りにされてきたかも述べている。疾患がビジネスにすり替えられる様クレイジーライクアメリカにも通じるものがあり興味深い。

バーンアウトは私たちの理想と現実のあいだの矛盾によって生じるが、同時に職場での不健全な人間関係の産物でもある。バーンアウトは他者への高度な要求や、他者に対する評価不足、言葉と行動の不一致から生まれる。つまるところ、お互いの尊厳に配慮しなかった結果なのだ。

著者はバーンアウトの概略をこのように総括する。

バーンアウトを心理学や精神医学から論じるだけではなく歴史や哲学者の言葉を縦断しながら総括していく手法が素晴らしく、現代を生きる僕たちが必要としている知恵が詰まっていると言ってもいいし、教職に限界を感じて退職した元教授の素晴らしい授業のようにも思える。こんな授業ならお金を払って聞きに行きたいし、この本は日々の忙しい生活の中で「何かおかしい」と感じている人が気持ちを整える手がかりになるかもしれない。

と言うか勤労感謝の日にこそ全ての労働者が読むべき本だと思う。

Black Fridayに買うべきもの

なんだか世間にすっかり定着した感のあるBlack Fridayなんだけど、イベントとしてすごく雑というか安っぽいというか。どうでもいいものを投げ売りするイベントに成り果てている感がすごい。

一体誰がこのイベントを喜んでいるんだろう…とここ数年のブラックフライデー状況を眺めてたどり着いた一つの結論は…Black Fridayとは年末のデータ大掃除のためのストレージAmazonKindle端末あるいは写真関連ソフトを買う日なのではないか?ということ。どれもが必要なモノなのに何となくお金を払うことに躊躇する製品だから。

年末は写真を整理する人も多いだろうし現像ソフトの乗り換えにはぴったりな季節だと思う。Adobe税を払い続けることに疲れた人には結構な値引きをしてくれるCapture OneかDxOを薦めしたいし、VSCO以上に優秀なフィルムパックが欲しい人にはDxO とFilmPackの組み合わせを試してみてほしい。

tidd.ly

FilmPackの作例は次の記事を参照。フィルム写真ばかりの自分から見ても優秀なパッケージだと思う。

filmmer.hatenablog.com

来月の予定: 予定を入れない

2023年も遂に師走。あまりの速さに頭と体がついていかない。

気持ちはバーンアウト継続中なので無理せず何もしないことを来月の目標にしたいんだけど、写真のプリントをやらなきゃいけないしカラーネガの自家現像も色々試してみたいし身体がいくつあっても足りなさそう。ヴィム・ヴェンダースのPerfect Daysは絶対に観にいく。

www.youtube.com