analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

ECN-2自家現像について

カラーネガフィルムがあまりにも高額商品になってしまったため400ftのシネフィルムを購入しカラーネガ自家現像に踏み切ったのが去年のこと。あれから半年くらいKodak Vision3の自家現像を繰り返す中でわかってきたことがあるので、恥ずかしながら失敗写真と共に書き残しておく。

これからECN-2自家現像にチャレンジする人の役に立てれば。

上手くいったようで全然ダメだったECN-2自家現像

ECN-2現像はMARIXさんのキットを使って始めた。

自宅でカラーネガ現像ができたことが嬉しかったので最初はあまり気にしていなかったんだけど、36コマ中の10-13コマくらいは定着がうまくいってなかったり、色ムラを起こしていたり薄く曇ったような写真だったりした。薄雲った写真のネガをよーく観察してみるとバッキング層っぽいベタつきが残っていたりして。カラーネガ現像はできたけど、まだ改善が必要な状況だったのだ。

中央下の暗部と右端下、左上隅にしつこく張り付く汚れが残ったダメネガ事例

 

先に断っておくとMARIXさんの現像キットは全く問題がない。むしろこのご時世に自宅でECN-2現像をできるキットを作ってくれて感謝しかない。

一方で後に述べるようにそもそもECN-2現像は大量に機械で処理することが前提にあるので、タンクを使って少量を現像する場合は慣れと工夫が、より綺麗にストレスなくネガを仕上げるにはちょっとした手技の変更が必要だ。

当時はカラーネガ現像できたことで飛び上がって喜んだけどいま見るとすごく珍妙

必須アイテムは湯沸かし器

ECN-2現像はC-41現像の親戚なので工程を通して41度近辺の作業となる。

作業プロセスの中に水洗がちょこちょこ入ってくるが、急激な温度変化はフィルムにストレスをかけるし水洗後の工程の温度管理がめんどくさいので湯沸かし器を42-43度設定にして41度より少し高い温水が出るようにしておくと次工程に移る際のタンク内温度が保たれて良い。

異様にしつこいバッキング層

これは定着&ドライウェルが終わったフィルムを浴室に吊るしてフィルムワイパーで上から下まで絞ってみたところ。プレバスの後に温水で激しく5-6回攪拌洗浄したが、手順通りにバッキング剥がしをやっても残留していることがわかる。

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あまりに黒いので僕は「まつざきしげる」と名付けている

 

フィルムを吊るして乾燥させてる間に上から下に残留したバッキング層が落ちてくるのか、下の方に汚れが溜まっていたっぽい。ネガをスキャンしたときに薄く曇ってスッキリしなかったのはこれが原因だろう。

後に述べるKodakのECN-2現像プロセスによると、バッキング層剥がしのプロセスはバッキング層を柔らかくした後にウォータージェットで水洗しスクイーザーで絞り落とすプロセスになっているので、タンクに満たした温水で攪拌洗浄しても落とし残しがありそうだ。



現像と停止工程: 温度管理は無神経でいいけど色ムラは気にすべき

手順的には30秒連続攪拌の後に30秒ごとに4回攪拌なのだけど、15秒ごとに2回攪拌して4分くらいがちょうどいいかもしれない。

ECN-2現像を始めた頃の数ロールは1分ごとに4回攪拌と勘違いしていたためにワンダーランド色となってしまった。これはこれで面白いけど、失敗事例として共有しておきたい。ちなみに20-25℃程度の室温で作業を行う際は、フィルイン時の溶液温度が42-43℃ならタンクを流し台に置いておいても問題ない。頻繁に攪拌することで温度ムラが起きないので。

ちなみに停止液を41℃で調整した場合はタンクに入れた後に内圧が上がって蓋がポーンとはずれるので、30℃前後にしておくかタンクに入れた後に30秒くらい蓋を開けたまま揺すって攪拌するのが良いかもしれない。

おぉ、さすがシネフィルム!と盛大に勘違いした初期の一枚

カラーネガ現像ができていい気になっている。けしからん。ここまで色が傾いてると、それはそれで面白いんだけど。

漂白定着: 温度高め、時間は気持ち長め

去年初めて現像キットを買ったときに付属していたマニュアルでは41℃で5分という手順だったのだけど、どうもこれは間違いだったらしい。

41℃以上で最初の30秒連続攪拌の後は1分ごとに攪拌するとちょうど良く仕上がる。6本目くらいまでは10分、その後2ロール増やすごとに1分足している。今のところ問題なさそう。

定着と洗浄: 最後にバッキング層を落とし切る

定着は41℃以上で5分。初めの30秒は連続攪拌で後は1分ごとに10秒くらい撹乱する。

7ロール目以降は2ロールごとに定着時間を1 -1.5分延長すれば良いかと思う。大量に白い汚れが残ってしまうので定着は気持ち眺めでも良い。

 

一方洗浄工程はちょっと不明な点が多くて、温水で攪拌洗浄をするとTmaxのような赤いステインが排出されるんだけど、これが大体5回目くらいで薄くなってくる。先日6回目の温水を入れたところで30分ほど放置してみたらすごいピンク色の廃液が出てきたので、一体どれくらいが適切な洗浄なのか決めかねている。

洗浄後にドライウェル(水切り剤)を入れて攪拌し浴室などに吊るす。

吊るしたら残留するバッキング層を剥がし切るために柔らかいスポンジで上から下に1,2回拭き下ろす。おすすめは敏感肌用か赤ちゃん用の柔らかいもの。

バッキング層をこそぎ落としたらスポンジをよく洗い、ドライウェルと水を1:5位で混ぜたもの(要するに濃いドライウェル)をスポンジに含ませて吊るしたフィルムを上から下まで拭くことで水切りを含ませておしまい。

フィルムワイパーを使うと悲惨なことになる。切れなかった水跡がネガの上下に出現したりするのでスポンジがいい。

スキャンするならSilverfastが良い

現像から話が逸れるがVision3のポテンシャルをフルに発揮するためにはSilverfastをインストールするか、SilverfastがバンドルされたPlustekのスキャナーを使用するのが良い。EPSONのフラットベドスキャナーに別売りのSilverfastをインストールすると一気に18コマをバッチ処理で取り込めるので、これが個人的には最強の組み合わせだと思う。

詳細は過去記事を参照。

filmmer.hatenablog.com

ECN-2現像に困ったら

Kodakが配布しているECN-2現像の資料のModule 2Module 7 に多くのヒントが隠れている。

Module 2が現像手順と機器、Module 7は仕様なんだけど、そもそもVision 3は映画のために大量に使用されるフィルムなのでタンクを使った手現像で72コマなんて想定外なのだ。

41℃という温度管理に躊躇している人は室温でC-41現像の実験をした記事を参考にするといいと思う。

41℃環境がなくてもC-41現像ができるようなので、ECN-2現像もやれると思う。ちなみに僕はECN-2現像をする際にタンクをお湯につけたりしておらず、流し台の横に置いている。現像工程が4-5分と短いのでタンクにフィルする際の温度が42-43℃であれば室温放置でも平均して41℃を維持できると考えられるし結果的に問題ないと思う。

試みの地平線

昨日現像したものから数枚。

ECN-2自家現像を初めて以降モヤモヤが続いたこの半年間だったが、現像手技を変更し漂白定着時間を延長、水切り後のスポンジを用いた洗浄を行うことで自宅ECN-2現像がかなりいい線まできたし、Silverfastをインストールしたことで飛躍的に結果が良くなったと思う。この記事にアップした過去の結果と比べてみてほしい。

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すべてBESSA R3A, Summicron 50mm 4th, Kodak VISION 3, EPSON GT-X 980 & Silverfast9でスキャン

 

この記事がこれからECN-2現像を始めようとする誰かの役に立てば幸いです。