先日Adobe Creative Cloudが値上げされ、Lightroomの維持費が月額1,180円になった。
月額1,180円とはいえ年間でLightroomに14,080円も払うとなると馬鹿にできない出費だし、将来的にAdobeが少しづつ価格を引き上げてくることは容易に想像できるので、少し前まではあまり考えられなかったLightroomを卒業するユーザーが出てくるのではないだろうか。
数年前に書いたLightroomからの移行先比較の記事にGoogle経由で辿り着かれる方が一定数いるので、LightroomからDxO Photolabに移行した僕の視点とPhotolabの魅力について新たに書き残しておきたい。Lightroomからの卒業を考えている方にとってなにかの参考になれば。
- いきなり結論
- リーズナブルな買い切り価格
- カタログ構造がないシンプルなファイル管理
- RAWのポテンシャルを最大限に絞り出すエンジン
- 素晴らしいノイズ除去
- 「フィルム風」を超えたフィルタ
- LightroomにあってPhotolabに無い機能
- まとめ
いきなり結論
LightroomやCapture Oneをはじめ様々な現像ソフトと比べてDxO Photolabが優れている点は、レンズ特性ごとの補正とRawからディテールを絞り出す能力、圧倒的なノイズ処理がリーズナブルな価格で買い切りできること、カタログ構造であるために起きるエラーと無縁なこと、そして別売りのプラグインで優秀なフィルムフィルターを用意していることだ。
それぞれについてひとつずつ述べていきたい。
リーズナブルな買い切り価格
2024年3月現在でフル機能版のPhotolab 7 Eliteの買い切り価格は25,900円。
Lightroomを最小構成で使った場合は2年で28,000円を超えてしまうので、最後に述べるLightroom特有の機能が必須でない場合は永久ライセンスのPhotolabの方が合理的だ。いつ値上げされるかわからないサブスク課金制に比べて圧倒的な安心感がある。
Capture Oneも同様に買い切り版を提供しているが最近値上げがあり50,845円になってしまった。差額分はテザー撮影とタブレットとの連携ができることだと言っていい。
カタログ構造がないシンプルなファイル管理
LightroomやCapture Oneと異なりPhotolabはカタログを作らず、現像や編集に関するパラメータ情報を記録した.dopファイルを画像ファイルと同じフォルダに生成する仕組み。LightroomやMac付属の写真アプリのように、インポートした画像ファイルがどこか知らない場所に格納されることもなく、探しに行く必要がないところが万人に優しい。
カタログが破損したり権限エラー等で開かなくなるという最悪の経験をしなくて済むし、バックアップの際はフォルダごと別ストレージに移動すればいいのでとてもシンプル。
RAWのポテンシャルを最大限に絞り出すエンジン
RAW画像の前処理としてDxO PureRAWを使ったことがあるLightroomユーザーの方はRAWファイルのポテンシャルをぎりぎりまで絞り出すこの技術に驚いたはずだ。
シャープネスを極限まで引き出しディテールを復活させるPureRAWの技術がPhotolab Eliteに組み込まれているので、今までPureRAW+Lightroomの組み合わせを使っていた方はPhotolab Eliteを買えば全てひとつのソフトウェアでまかなえる。
比較の作例は左がDxO Smart LightingとDxO Clearview Plus、レンズシャープネス、倍率色収差補正をかけたもので右が無補正ストレート現像したもの。Photolabで編集を加えた方はディテールをより拾い上げて微細な画像を作り、隅から隅までシャープな写真に生まれ変わった感じ。
素晴らしいノイズ除去
PureRAWの素晴らしい機能のひとつであるノイズ除去技術もPhotolabに組み込まれている。
このノイズ除去技術はDxOが持っている様々なメーカーのカメラやレンズのキャリブレーション画像を数十億枚(!)機械学習にかけたことでディテールを壊さずに正確な色の復元とノイズ除去を実現している。
百聞は一見にしかず。とりあえずDeep Primeの結果を見て欲しい。
物置で長い眠りについているNikon D700を引っ張り出してきてノイズ除去を試してみた。2008年発売のこのカメラにとってISO6400以上は過酷な設定だけど、Photolabのノイズ除去はかなり優秀だと思う。
Nikon D700, Nikkor 58mm 1.4G, ISO 8000
ここまで述べてきた通りPureRAWを組み込んだPhotolab EliteはRAW画像のポテンシャルを限界まで引き出す能力を持っている。
この記事で書いていてふと気づいたのだけど、DxOの技術によれば古いデジカメで撮ったRAW画像もモダンにリファインできるわけで、かつて他の現像ソフトで仕上げたRAW画像を別物に生まれ変わらせることができるかもしれないし、もしかしたら物置にしまったままになっている古いデジカメを現役復帰させることができるかもしれない。
「フィルム風」を超えたフィルタ
既に別の記事でも買いたがDxOが制作したフィルム風フィルタのプラグインが素晴らしい。
DxOは過去のフィルムのデッドストックを含め未使用のフィルムを使ってテストを繰り返し、各フィルムのキャラクターを落とし込んで行ったとのことで、普段フィルムを使っている僕の目から見ても素晴らしいクオリティだと思う。フィルム風写真のためにVSCOに年間3,000-4,000払い続けるならこちらのプラグインを買った方がいいと思う。
<Original GRIII DNG-------Filmpack6 Kodak Portra160NC>
<Original GRIII DNG-------Filmpack6 Kodak Ektar100>
<Original GRIII DNG-------Filmpack6 Kodak Ektachrome100>
<Original GRIII DNG-------Filmpack6 Fomapan100>
LightroomにあってPhotolabに無い機能
繰り返しになるけれど、Photolabは圧倒的なノイズ除去とディテールの再構築のためのRAW現像ソフトだ。そしてカタログ構造を持たないシンプルさに価値があると思う。
一方でクラウドを介してiPadやiPhoneを使ってどこからでも写真の編集ができる機能やHDR画像を作る機能、AIによるボケの追加・補正はPhotolabにはないので便利さや写真とグラフィックの境界線があやふやな作風の人はPhotolabは向かないかもしれない。
まとめ
Lightroomの値上げにより現像ソフトの移行先を探している人、特に写真にディテールの精細さを求める人やノイズレスな描写を求める人にとってDxO Photolabは魅力的な選択肢だと思う。数年前にLightroomからPhotolabに移行した僕の場合はカタログ破損のヒヤヒヤとバックアップの容易さ、課金制ではない自由さがとても気に入っている。
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