analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

海をあるいて帰ろう

仕事を片付けたふりをして電車の中で寝落ちしたのだと自分に嘯いて乗り過ごし、夕暮れの海を眺めてから帰る。

そういえば僕が小さい頃は軽トラックの助手席に乗せられて海によく連れて行かれた。配達帰りの昼下がりに畑道を抜けて、砂浜のちょっと手前で止めた軽トラックから降りて海をぶらぶらして帰る。ただそれだけの寄り道。

何かをした記憶はないけれど、光の色と潮騒はよく覚えている。

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大人になると海のありがたさがちょっとだけ増す気がする。ウィークデイに負った心の傷の回復は歳を取ると段々遅くなるから、時々海の力を借りないといけない。

山派の人とか潮風が嫌いな人もいると思うので全ての人に当てはまることじゃないけれど、意味もなく夕方の海岸をぶらぶら寄り道するとすごく気持ちがいい。

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暖かな秋の夕方の海辺は本を読む人やビール片手に夕焼けを眺めている人、写真を撮っている人、僕みたいに当てもなくぶらぶらする人がたくさんいる。海の前では人間は等しい存在になれるのがいい。

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裸足で歩く地元の人、遠くから靴を履いてきた人、いぬ。外国人、日本人。東に向かう人、西に帰る人。傲慢そうな足跡、繊細そうな足取りも数時後に潮が満ちたらきれいさっぱりリセットされるのだ。

ものを売る人、アメリカが好きな人。

そういえば最近めっきり聞かなくなっちゃったけど、「太平洋の向こう側はアメリカ」ってフレーズが大昔にあった気がする。ハワイまで何千キロみたいなあれ。

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一日の終わりは空が金色に染まり、真っ赤になったかと思うとあっという間に群青色に支配される。

気分も少し晴れたし駅に戻ろう。

*写真はすべてLEICA M6, Summaron-M 35mm F2.8

 

海辺をPORTRAで撮るのがとても好きだ。

カラーネガが高すぎるのでモノクロフィルムを詰めていたりデジタルカメラへ乗り換えたけど、やっぱりPORTRAに替わるものはないと思う。もう圧倒的に色と空気感が違うのでフィルム写真はやめられない。