analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

夏の海辺には歳の数だけ思い出があるのかもしれない

2023年の夏がはじまる。

人生で何十回も日本の夏を経験しているというのに一向に飽きない。子供の頃はただただ楽しかった夏が10代の後半になるとうっすらとメランコリーな、憂いの影を帯びた夏になり、20代のはじめの夏は社会が押し付けた理不尽な拘束着と汗にまみれて悶々とした思いが記憶を塗りつぶしている。

 

そして今は…どうだろう?

無条件に楽しい夏でもなければ思春期特有のメランコリーさに振り回されているわけでもなく、急に(くそみたいな)日本社会の囚われの身になって窮屈な思いをしているわけでもないけど、その代わりに先の見通せない世相とこのまま自分が終わってしまうかもしれない焦りを小脇に抱えて海をぶらぶらしている。文字に起こしてみると厄介な話だけど、実感がない分どことなく気楽だ。

N0342023

Hasselblad SWC/C Biogon38mm/Kodak Tmax100

夏の海辺には歳の数だけエピソードがあるのかもしれない。

そんなことを考えていると向こう10年くらい先がちょっとだけ楽しみに思えたりもするから不思議なもんだ。きらきらと輝く水面と子供たちの歓声、恋人たちの会話を聞きながらぼんやりと遠くを眺める。陽が沈んだらビールの缶を片付けて家に帰るのだ。こんな素敵な光景の中で時間が過ぎていくのなら、何者にもなれなくたっていい。それでいいじゃない。