analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

逗子映画祭について言いたいことが山ほどある

それはきっと僕だけではないと思う。

毎年足を運んでいる逗子映画祭に今年も行ってきた。

このイベントは浜辺でのんびり映画を観るという素晴らしいイベントなのだが、今年はなんだか酷い有様だった。こんなことわざわざ書きたくなんてないけど、書かずにはいられない。

もちろん映画は素晴らしいし恒例のピーター・バラカンさんの選曲も素晴らしい。その一方で客層と人の詰め込み具合があまりにも酷かったのだ。

ミニシアター系映画に絶対興味無いであろう、遠方から遥々きたであろうぽい格好した若い子がインスタに載せる写真を必死に撮ってウェーイしている。そんな人種が7割、映画好きとファミリーがそれぞれ1-2割くらい。そして面積に対して明らかに人を入れすぎている。

子供向けの小さなメリーゴーランドや砂場に子供は少なく、エモいエモい言いながらスマホで自撮りする大人でごった返していて、フードにありつくまでに行列に並んで調理を待って1時間。そして夕方には食べるものがない。

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信じられないことに、映画が始まって30分もするとウェーイ民はどんどん帰っていく。彼らの最後の仕上げはスクリーンをバックにした自撮りだ。

ちょっと待て、ここは映画祭だぞ。お前の自意識を満足するための場所でもないしお前がSNSでチヤホヤされるための踏み台でもないんだぞ。

日没に向かう時間頃はシートで埋め尽くされていたスクリーン前も、上映後30分もしたらどんどんシートを畳んで帰っちゃう。きちんと座って映画を観ることすらできないのかおまえら。

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僕の横にいたカップルも「電車あるうちに…」なんて言いながらシートを畳んで帰ってしまった。ここからが映画祭なのにまじかよ。

そんな所から来るんじゃねえよ!夜の海を舐めんじゃねえよ!本当に映画見たかったのにチケット買えなかった人のこと考えろよ!って思わず怒鳴りそうになった。

映画が終わる頃にはいつもと変わらぬ客層ばかりが残っていてスクリーンに向かってわっと拍手をするんだけど、ウェーイ民はもうほぼいない。本当に映画を楽しみにしていたのにろくすっぽ映画見ない連中にチケット取られた人はさぞ無念だったろう。

 

逗子映画祭、これは一体誰のためのイベントなのだろう?そしてこれからどこへ行ってしまうのだろう?これは僕が観に行った日だけだろうか?

ちょっと前の逗子映画祭

BESSA R3A/Summicron 50mm F2/ Kodak Portra400

BESSA R3A/Summicron 50mm F2/ Kodak Portra400

BESSA R3A/Summicron 50mm F2/ Kodak Portra400

BESSA R3A/Summicron 50mm F2/ Kodak Portra400

昔の逗子映画祭ってどんなだったっけ?と思い2018年の映画祭の写真を見直してみたら、みんなラフな格好にビーチサンダルや裸足で海辺を楽しんでいる。

新宿渋谷歌舞伎町みたいな雰囲気じゃない、湘南っぽいラフさの人がまばらにぶらぶらしているだけでとても健全だった。子供だってたくさんいる。もちろん写真を撮っている人もいるけど、自撮りをしにここまで来るような連中はほぼいない。

この写真と比べてしまうと今年は明らかに客層が違うのだ。去年もまぁまぁ酷くなったけど今年は一気に客層が変化した。5年くらい前は凄くいい雰囲気だったのに。。

イベントの価値を自ら進んで損なっている

SNSを中心にバズらせれば収益が上がるんだから興行としてはいいだろう。

でも、この状況が来年も続くとしたら逗子とその周辺に住んでいる映画好きは映画祭にそっぽ向くと思うし、長い目でみたらこのイベントのイメージが悪くなることは避けられない。逗子映画祭は「逗子」という場所と人のイメージで価値を作ってきたはずなのに、興行主は進んでそのイメージを破壊しているように思える。

このイベントをリピートする新規顧客がいるかも怪しい。

当日券買うのに砂浜で1時間並ばされて2,500円も払ったのに、中は自撮りばっかしてる人種でごった返していて写真撮る以外面白いコンテンツもなく(映画がメインだけど彼らは映画すら見ない)、仕方ないから食事しようとしても30-40分並んで待って3,000円近く払って立ち食いなんて、ちょっと変だしこのコスト感にドリンク1杯800-900円と往復2,000円近い電車代を乗せてまでリピートする人はいないだろう。フードイベントにはなり得ないし、本来の映画を堪能できずに自撮りのために2,500円払い続けるほどの馬鹿がいるとも思えない。

エンドロールに向かって拍手を送るコアな消費者がそっぽ向いたらこのイベントは立ち行かなくなるのは明白なので、今のうちに手を打った方がいいのは間違いない。

解決策は場所を分けて同時開催かもしれない

ゴールデンウィークの湘南の風物詩として、逗子映画祭はかつてのようないい雰囲気のイベントとして継続してほしいと思っている。そのための解決策は過密を減らすことと、パリピを隔離して子供とファミリー、映画好きのためのイベントに戻すことだ。

2022年の逗子映画祭も混んでいたけど、今年ほど客層に嫌悪感を抱かなかったのは宮下公園で映画祭を同時開催したから説は間違いない。今年は渋谷でのイベントが開催されなかったことから、宮下公園映画祭が吸収していた渋谷埼玉歌舞伎町系が逗子にどっと流れ込みあの惨状になったのだ。

となると解決策は宮下公園映画祭を復活させるか、ミッドタウン裏の公園使って六本木映画祭を同時開催させて自撮りしたい子をそっちに吸収させることだろう。

意外な場所としては江戸川土手とかもありかもしれない。寝転んで観られるし、イベントの規模を大きくするなら横に伸ばしてスクリーン2枚にすればいいんだし。どちらにしても逗子海岸のあの狭いエリアに渋谷埼玉歌舞伎町系を押し込むのは無理がある。

同時開催が無理なんだったら、場所を少し広げて映画見る人むけのチケットと飲食物販に来る人のチケットを分けるべきだ。少なくともキッズとファミリーとパリピを一緒くたにしない方法を考えた方がいい。

*1

僕はもう逗子映画祭には行かないと思う

ナイーブすぎる意見かもしれないけれど、スマホのインカメに向かってキメ顔を作っている人間を客観的に眺めるのはあまり気分が良くない。そんな人が多くなるほど、人の安っぽい自意識だとか醜い側面をこれでもかと見せつけられている気分になるから。

逗子映画祭そのものは大好きで素晴らしいイベントだと思うんだけど、のんびり酒飲んだり音楽に浸ったり映画をみる場所だった逗子映画祭はもう望めないのかもしれないと諦めている。

素晴らしい音楽とお酒があった小箱クラブがナンパ目的の大箱になってしまったような、好きだった定食屋が急に英語メニューを用意してインバウンド外人に媚びを売り始めたような、そんな劣化前夜の綻びを見てしまったようで今回とても残念な気持ちになってしまったから。

魯山人久兵衛の素晴らしさを寿司屋の腕前のみならず客種の良さと書いたように、良いイベントには良い客層が必要で、良い客層が素晴らしいイベントを作るのだ。このまま主催者がイベントの持っていた良さに気づかないまま時間が過ぎたら、早々に飽きられると思う。

僕も多分来年は行かないかな。多分僕のような層がいくイベントじゃないかもしれないし。

今までありがとう、逗子映画祭。

*1:2023/5/6追記:2023年は宮下公園映画祭の代わりにSHIBUYA STREAM THEATER WEEKというイベントが4/28-5/12の期間開催され、横浜赤レンガ倉庫ではSEASIDE CINEMA 2023というイベントが5/2-5/7の期間開催されている。渋谷横浜でパリピを吸収すればいいじゃん仮説は成立しないことが明らかになった。今年の客層は映画ではなく逗子を目指してきたのだ。

騒音の問題、ごみの問題、来場者の客層の問題は来年以降大きくのしかかってくるだろう。素晴らしいイベントが品性のないレイトマジョリティ層に目をつけられて食い荒らされるのだ。