analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

Rolleicord IVと歩く海辺の街

最近ローライコードばかり持ち出している。

ハッセルブラッドはもちろん素晴らしいカメラだけれど、持ち出すには理由が必要だしシャッターを落とすには覚悟が必要なカメラだと思う。

図体はでかいしずっしり重いし、シャッターを切った時のショックもそこそこ大きいので、ポヤンしていると手ブレしちゃうし。

ハッセルプラナーの目が覚めるようなシャープさとロマンチックな空気感は代え難いものだけど、ローライコードに付いているクセナーも全く引けを取らない。このレンズの基本設計を行なったトロニエは天才じゃないだろうか。

spiral-m42.blogspot.com

三脚立ててフレームをがっちり決めて撮るぞ!…って気分の時はハッセルブラッド、ぶらぶら歩きながら出会った何かを撮りたい時はローライコード。

そんな住み分けがいつの間にか出来上がっている。

N0362020

Rolleicord IV/Kodak Tmax 400/Silversalt Dev.

海辺というのはとても面白い。

大雨の後の水たまりであったり流されてきたゴミであったり、遠く離れた祖国から日本にやってきた家族が水平線の向こう側を眺めていたり。鄙びた漁村なんてのも味わいがあっていい。

波打ち際にはいつだってストーリーの片鱗が落ちている。

 

N0372020

Rolleicord IV/Kodak Tmax 400/Silversalt Dev.

最後に水族館に行ったのはいつだっただろうと一寸記憶を掘り返してみたら、たった数ヶ月前のことだった。

遠い昔の話に思えてしまうのは自分の生活を投げ打って、人生の時間を切り売りして仕事ばかりしていたからなのかもしれないし、忙しさのあまり目の前のものをきちんと正視していなかったからなのかもしれない。

私は私の人生を生きている。

そう思っているのは実は自分だけで、人生の大部分は他の誰かやくだらない世相に振り回されてるんじゃないかと思いながら水槽を眺めていた。

私は小魚の一匹に過ぎないのだ。

 

N0382020

Rolleicord IV/Kodak Tmax 400/Silversalt Dev.

COVID-19が蔓延しなかった世界線では、きっと私たちは出張に明け暮れ、観光客を誘致したいがために紛い物の「ニホンモノ」埋め尽くされた東京に埋没し、価値のないバズワードに耳と目を奪われる生活が続いたかもしれない。

都市は無機質なタワーマンションで覆われ、目減りする賃金と積み重なる重税に喘いだおよそ人間的ではない生活に囚われていたかもしれない。

グローバル化が過度に進むことで世界中の都市がより均質化し、過度なポリティカル・コレクトネスが世界から文化の色を完全に脱色してしまったかもしれない。

これから世界がどの方向に進むか解らないけれども、今の社会の仕組みは一度リセットされていいと思う。 

 

N0392020

HASSELBLAD 500CM/Planar CF 80mm/Kodak Tmax 100/Silversalt Dev. 

前3枚と違い陽光が燦々と降り注ぐカットなので一概に比較はできないけれど、ハッセルプラナーで撮った写真はよりモダンな印象で強い生命力を感じる気がする。

改めてクセナーで撮った写真を眺めると、若干低めのコントラストの写真は妙に詩的な雰囲気を纏っているように思える。

フィルムライカが無茶苦茶な値上がりを続けたここ数年だけど、ローライコードの価格は全然上がっていない。

気になっている人は良い個体があるうちに試してみてほしい。軽くて取り回しが良くてとても気持ちの良い写りをするから。

 

この記事の中で使ったフィルム&機材

Rolleicord IV

I型からV型まであるローライコードはV型が完成形と呼ばれるらしいが、個人的にはIV型が好き。10枚あった絞り羽根がV型から5枚に減ってしまうので、光芒を気にする人はクセナーがついたIII型後期かIV型を探すといいと思う。

 

Kodak Tmax400

中判フィルムでISO400のフィルムというと、TriXかイルフォードのデルタかHP5+、フォマパンくらいしか選択肢がない。色々試した結果やっぱりTmax400が自分には合っているんだと思う。たまに浮気するけど絶対にここに帰ってくる。

SIlversalt Developer

SPUR社製の現像液。トーンの美しさやモダンなシャープネス、使い勝手の良さが最高に素晴らしい現像液。今回掲載した写真は攪拌の回数を増やすことでコントラストを稼いでいる。

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