analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

美しい写真のこと

そういえばこのblogは写真blogだったのに調子に乗ってラジオの話ばかり書いてしまった。それだけTivoli Audio PALが素晴らしいプロダクトだったのだ。買ってからそろそろ一ヶ月が経過するけど寝室で充電しながらラジオを聴いて、朝起きたらプラグを抜いてリビングに持っていきラジオを流し続ける生活になっている。音量も音質も申し分ないしプラスチック筐体の触り心地もダイヤルを回す感触も素晴らしいので、もうRadikoスマートスピーカーには戻れない。

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今週は元の路線に戻し、写真について考えていたことを少し書き起こしてみる。

写真の美しさについて

豊かな写真ってなんだろうと考えると、解像度だとか画素数はあまり重要ではないことに改めて気が付く。最近目にした記憶に残る写真はどれもカメラのカタログに載るような写真ではない。解像感や機能は写真の本質とは関係ないのだ。

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ボケてりゃいいのか?ザラザラならいいのか?って言われるとそうでもなくて、そこに情緒だとか情感のある絵面がすきだ。隅から隅までぎっちりと解像して正しい色を再現する風景よりも情景なんだと思う。

自分の中でずっと引っ掛かってるアルバレズ・ブラーヴォのバルコニーに佇む女性だってカメラメーカーのカタログのように隅から隅まできっちり撮ってる訳じゃないところに曖昧な美しさが湛えられていて、どうにか言葉で表現しようとしてもするりと指の間からこぼれて消えてしまう。白昼夢というタイトルの通り儚い美しさだ。

www.moma.org

Twitterに滝のように流れてくるメーカーの作例のような写真って、あれは結局カメラオペレーターがシャッターを切って編集したような写真でしかなく作家性は不在なのだ。家なき子ならぬ「意図なき子」は電子の大河の一滴となって猛烈な速度で消費されていくのだろう。

Kodak5222の美味しい現像方法

素晴らしいフィルムであることは間違いないのだけど、僕の粗雑な現像環境だと想像以上にザラついてしまったりコントラストが薄かったり結構なばらつきが生じる。僕は神経質な男が嫌いなので、水浴を完備したり温度に神経尖らせたりするのがとても嫌なんだけど、規定よりも現像液の温度を下げて攪拌の回数を上げることでこのばらつきを回避しつつ自分好みの絵面になってきた気がする。

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最近ちょっと気になっているもの

もう写真機材は買わないと思っていたけどKODAK EKTAR H35は少し気になる存在だったりする。自分の用途に合わないので多分使うことはないんだけど、プロダクトとして美しいなぁとかフィルム写真を始めようとしている人にプレゼントしたいなぁ、なんて思っちゃう。

引き続き据え置き型のTivoliも気になってる。ベッドサイドに据え置くラジオとしてこのウォルナット外装はインテリアとしても抜群にいいし、低音の良さと外部アンテナと繋げるところも気になる。PALがあれだけいい製品だっただけに悩ましい。

またこのラジオの話題に戻ってしまった。

我ながらしつこいなと思うんだけど、このラジオはそれだけよくできたプロダクトなのだ。ラジオが好きな人もRadikoからラジオを知った人も騙されたと思って試してみてほしい。素晴らしいから。

喪失のスケジュール

突然降りかかったアクシデントにより「すわ一大事!」になる状態を世間的には人生のピンチと呼ぶと思うんだけど、最近の自分はじわじわと真綿で首を締められるように苦境に陥っていて、自分ではどうすることもできない蟻地獄に落ち込んでいる。

突然職を失った訳でも身内を亡くしたわけでも自分の余命宣告されたわけでもないので自分でも何だか大袈裟な書きっぷりだと思うけど、先日可愛がっていた猫の余命を聞いてしまったところから日常の景色が変わってしまった。

喪失の予定を与えられると、私たちは喪失イベントをかき集めて予定表を作ってしまうのかもしれない。

いずれ衰えていくであろう自分の身体のことやいずれ自立していく子供のこと、いつか固まってしまうであろうソファでスヤスヤ寝ている猫の寝顔、私たちの財産をむしり取るハゲタカ国家のこと、変わってしまうこの国や社会のこと。様々な形の「喪失」が頭の中をぐるぐると周り、強烈な焦燥感と無力感に取り憑かれてしまっている。

身体は大丈夫だし変わらずニコニコ過ごしているのに気持ちが崖っぷち。

2時間サスペンスのラストシーンで船越英一郎に相対している気分だ。サスペンスの船越英一郎は物語の主役でいわば正義に与する登場人物だが、今自分が相対している相手は形のないこの世界の澱みの集合体のようなものだ。

ハリウッドの映画のピンチは大体15分程度で終わるけど、僕のピンチはそれに比べて超絶長いものになるかもしれない。

 

今週のお題「人生最大のピンチ」

Tivoli PALのレビュー

最近自分のラジオ愛を文字に起こしている一方で「やっぱりラジオなんて今時誰も見向きしないよね」なんて不貞腐れてたら、Tivoli Audio PALを買った話をはてなブログさんにツイートして頂き有頂天になったので、せっかくだから続きを書いてみようと思う。

今回は簡単なPALの受信感度と音質評価、家にあったHomepod miniとの比較をやってみた。耳馴染みというのは恐ろしいもので、買った時は「?」だったHomepod miniの音質もずっと使っていると馴染んでしまったようだ。

今回PALと比較してみてその「?」がまたぶり返してきたので昨今のスマートスピーカーの傾向と合わせて考察してみる。

受信感度と音について

前回の記事でこのサイズとは思えない感度と音の良さ、なんて書いたあとにあまりに気分が乗ってしまったのでこのラジオの佇まいを動画に撮ってみた。ついでにYouTubeにアップしてみた。初めてのYouTubeアップロードがまさかラジオのレビューだなんて!

youtu.be

ボリュームノブは10時くらいでこの音量だ。17時まで回ることを考えたら十分すぎる音量と音質だと思う。NHK FMでたまたま流れてたブラームスだけど、どう?いい感じじゃない?モダンでハイファイな音と言うよりはどことなくふくよかな音が良いと思う。優しい。昨今のスマートスピーカーにありがちなギスギス感がなく、急かされない感じ。

HomePod miniと比較してみる

PALの入力をBluetoothにしてYouTubeにあった著作権フリー音源をMacBook Proから再生してみた。はじめはPALで次がHomePod miniなのでまずは先入観なしで聴き比べてみてほしい。

www.youtube.com

どちらも普段使いには良いスピーカーだと思う。

HomePod miniは無理やり低音を持ち上げて解像感を高めているのか、低音がモコモコし中音域がすっぽ抜けた音に感じる一方でPALは素直な音だ。デジタル音源を高解像度で再生すると言うよりは自然な音を表現するスピーカーって感じ。下から上まで癖がない。

この比較動画は録音レベルの問題か編集の問題か音が小さく聞こえるが実際はそこそこの音量で鳴らしている。ぜひイヤホンを通して比べてみてほしい。

ちなみに音量の設定を見るとPALの方がまだ余裕があるのでHomePod miniと比べるとPALの方が大音量で使えるようだ。

スマートスピーカーの音について思うこと

HomePod miniの対抗馬といえばおそらくSONOS Oneだと思う。

比較動画を見た感じだとHomePod miniの方が音質的にやはり厳しい。小さいサイズで良い音を鳴らそうとして無理やり低音を強調した結果どうにもアンバランスなアウトプットになってしまったように感じる。

どちらのスピーカーも音の解像感を重視して中域をすっぽぬいてフラットにしたような方向性だ。デジタル音源だとか映画のためにチューニングした感じ。

www.youtube.com

解像感重視の音作りは他のスピーカーでも似たり寄ったりだと思う。

ストリーミングで音楽を聴く今の消費者的にはこのチューニングが最適解かもなぁ・・・思う一方で、個人的にはHomePod miniもSONOSも耳と脳が疲れる音だと感じている。上から下まで満遍なくものすごい解像度で再生するソニー製MDR-CD900スタジオモニターにもこの傾向はあって、長時間使っていると音は素晴らしいのに何故かどっと疲れる感じがある。認識できる音や映像を一度に大量に押し込まれると、脳は一気に疲労するんだと思う。

MDR-CD900STはそもそも用途が違うのでHomePodやSONOSと同列で語るのはどうかと思うけど。

ちなみにこのヘッドホンは指揮者の呼吸や弦の擦れる音まで素晴らしい解像度で再生する素晴らしいプロダクトで、そこらのイヤホンでは再生されなかった音が聞こえる感覚は他では体験できない。そんなことあるのかよ・・・と思う方はぜひ試していただきたい。別の世界の衝撃を味わうことになるから。

Radikoで聴くかアナログラジオで聴くか

スマホのロックを解除してRadikoを立ち上げ、位置情報を読み込んだアプリが立ち上がったあと選局する…(ついでにスピーカーと接続もする)という手間をかけないと聴けないスマホラジオに比べ、スイッチを入れたらラジオ放送が始まるTivoli PALは恐ろしくシンプルだ。

このラジオにはスイッチとボリュームとダイヤルしかないので、勢いで作った動画のようにそこらに置いてスイッチをつければラジオが流れてくる。この手軽さにRadikoは到底太刀打ちできないだろう。

便利さとは別に、音質の面でもあまりRadikoは褒められない。

性質上どうしても高音域をぶった斬った放送しかできないAM放送に関してはもう断然Radikoの方が音がいいんだけど、FM放送をきちんとしたチューナーで聞くとRadikoの音の悪さが際立ってくる。

Radikoだけでラジオを聴いているとこの違いはどうでも良くなるんだけど、改めてPALでFM波を捕まえるとその音質の差に愕然とする。Radikoから出てくる音の情報量が圧倒的に少ないのだ。話にならない。

そんな訳だから、今後は電波が拾える局はPAL一択になるだろう。電波が拾えない局はスマホRadikoまたはTuneinで放送拾ってBluetoothRadikoに転送する。スマホRadikoでラジオを聴くのは外出先か非常時に限定されると思う。

今どきモノラルってどうなの?

そういえばスマートスピーカーが幅をきかせ始めた頃からモノラルスピーカーがやたら増えてきた気がする。AppleのHomePodだってSONOS Oneだって2本買わなきゃモノラルスピーカーだし。

モノラルってどうなのよ?って心配になったら近所の量販店に行ってHomePodかSONOSの音を聴いてみたらいいと思う。音楽聴く分には個人的には全然気にならないしモノラル勝負ならTivoliは全然負けてない。自分の好みを聞かれたら僕は断然Tivoli派だ。

一方映画となると話は違ってくる。この場合はSONOS一択。

SONOS OneにSoundbar、SONOS Subを組み合わせるとホームシアター構成にできるんだけど、この拡張性はHomePodにはないしTivoliはもうまるでお呼びもかからない。SONOS Oneを2本にSoundbar、Subを組み合わせると最低でも20万円からスタートなので全然安い買い物じゃないけど。

今日びのサラウンド設定がされている映画、何かが爆発してチューしてハグしてピンチになって正義の大勝利で90分が終わる興行映画は大体デジタルバンザイで作られているからSONOS一択じゃんね。

大画面テレビ買ってホームシアターの環境を20万円で整えられると思うとまぁ妥当…かもしれない。映画をあまりみないのでここはなんともいえないが、識者のレビューを読む限りとてもいいものなのだろう。

まとめにかえて:ラジオに3万円って高くない?

理屈で考えたらより機能の多いHomePod miniは税込¥14,800だしSONOS Oneは¥26,800だ。Tivoli Audio PALにはラジオとBluetoothしか機能がなく、SiriもAlexaも入っていない上にIoT家電とも連携しないものに3万円越えなんて高くない?という疑問は残ると思う。

がしかし、単刀直入に言うと僕はTivoli PALに3万円の価値はあると感じた。

まずTivoliのスピーカーの音質がとても良い。解像感を優先したモダンな味付けになっていないスピーカーから出る音は素直で、聴いていて疲れないのがいい。ラジオの受信能力も素晴らしいがもしお気に入りの局が入らなければサイマルラジオをPALに飛ばせばいいので、電波が弱いがために買った後に文鎮化することもない。

もしお気に入りの局がきちんと拾えるのであれな、前述のようにRadikoの音質があまりよろしくないので、スピーカーの設計とFM波の音質の良さの掛け算になり断然PALの圧勝になる。

デザインが整っていることもいい。

国産メーカーを中心にラジオはまだ生産されているとは言え、大体は非常時の手回しラジオだったりおっさん御用達の胸ポケットに入れるアレだったりする。家に置く美しいラジオと考えれば3万円は妥当だと思う。Model Oneを10年使ってる人の話もたまに耳にするけど、シンプルな製品だけに丈夫なのだろう。

機能が足りないことも気にならない。

そもそもSiriやAlexaに頼めることなんてたかが知れていて、天気教えてくれたりニュース読んでくれる機能なんてあったところであまり役に立たない。それどころか常に部屋の中でマイクがOnになっていて聞き耳立てられている方が個人的には気持ちが悪い。AppleAmazonがデータを収取していないなんて言っても、そんなもの空手形のようなものだ。約束はいつだって大資本の都合がいいように捻じ曲げられるのだ

そんな馬鹿な、大手企業がそんなことをやるはずがないと思うならばズボフの著作を読んでみるといい。いかにGoogleが薄汚いことをやってきたかが良くわかるから。

そんな連中から手を切れるのであれば、3万円なんて安い買い物だと思う。

 

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