analogue life

シンプルな暮らし

最後のACROS

ストックしておいた最後のACROSを冷蔵庫の奥から取り出した。
真夏の太陽がぎらぎらと照りつける土曜日の朝、リビングのエアコンを夜通しかけっ放しにしていたにも関わらず部屋の気温は朝から高い。

冷蔵庫から取り出されたフィルムは、部屋の湿気を纏いうっすらと汗をかいているようにも感じられた。
この時勢、写真フィルムの運命なんてハナクソよりも軽いのかもしれない。名作モノクロフィルムと言われたACROSだって例外では無い。

物事の幕切れ、最期なんてあっけないものである。

 

2週間近くかけて最後に残った2本のACROSを撮り終え、家に帰り昼間から酒を飲みつつ自家現像。
手元にあったSilvermax Developerで現像。薄紫色の廃液を捨ていままで何度となくやってきた手順に従って水洗を終えバスルームに吊るすことしばし。撮り終わった時点で、もう既に後戻りはできない訳だけれど、吊るされたフィルムを改めて眺めているとACROSを使い終わった実感が湧いてくる。

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Fuji Xpro1/ Fujinon XF35mm F2.8

ACROSで最後に撮ったのは晩夏の海辺

フィルムをM6に詰めながら、最後のACROSで何を撮ってやろうかと一瞬考えたものの、考えれば考える程何も撮れなくなりそうな気がしたので、あてもなく都内をぶらぶら散歩しつつシャッターを切り、気がついたらに海辺に向かっていた。

N0772019

LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS 

 

暮れゆく夏の日差しがぎらぎらと照りつける海岸は最後のACROSを使うのにうってつけの場所だったかもしれない。

初々しく優しげな初夏の日差しに比べ、残暑の日差しは過酷でありながら秋の気配を忍ばせていて、最後のACROSを詰めたカメラで撮る風景としてなにがしかの意味がある場所だったように思う。

N0762019

LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS
 

晩夏の海辺は美しい。

つい先日までそこにあった喧騒が途端になりを潜め、強い日差しの向こう側から波の音が延々と聞こえてくる。穏やかな景色の中に焼きつくような強いコントラストの長い影が、夏の名残を物語っているかのようだ。

 

代わりのフィルムを探して

過去を振り返るたびにACROSは本当にいいフィルムだったなぁと思う。描写は精細かつ緻密。現像を失敗したこともなければ失敗写真を量産したこともなく、悪い思い出が一つもない。

本来ならばACROSの後継フィルムにスイッチして使い続けたいのだけれど、ACROS終売の決定と後継フィルムのアナウンスがどうにもマッチポンプ的というか田舎のパチンコ屋の新装開店的というか、予め予定されていた値上げの寸劇のようで、喜んで使う気になれない。

そんな訳で私はこれを機にACROSからAdox Silvermaxに切り替えようと思う。

ACROSとあまり変わらない価格で調達できるしシャープネスはACROSと同等のレベルだと思う。加えてこのフィルムは短波長側の感度が素晴らしく青色をきちんと拾うためグレイトーンの美しさは素晴らしいものがある。

N1192018

 Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Adox Silvermax

N0532019

LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Adox Silvermax

 

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とはいえ、ちょっと寂しい気分だったりもする

ここまで書いてみて、ほんのちょっと感傷に浸りながらいろんな人が撮ったACROSの写真を眺めている。いま市場に残っているACROSの使用期限はおそらく10月まで。もう一本どこかで調達して最後に使ってみるのもいいかもしれない。 

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