analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

写真を言語化するという試み

いままでそんなに深く考えてこなかった構図や技法や被写体の話。

自分の写真をより魅力的な何かにしたいのであれば、やっぱり自身のことを良く知る必要があると感じたので、ちょっと怖いけれど自分の考えを文字に起こしてみようと思う。

photograpark.net

多くの方がblogやtwitterでこの話題に触れているので私もちょいと私見をまとめてみたい。

写真への向き合い方なんて普段あまり考える機会がなかったことなので、自分の頭を整理することはとても面白かった。なんせ今までろくすっぽ悩んだりせずに写真撮ってきたもんね。

もちろん私にも好きと嫌いはあって、嫌いな写真は数ある一方で「どんな写真が好きですか?」とか「どんな写真を撮っているんですか?」と問われるたびに説明に窮してきた。

いい機会だから、いま自分が考えていることと興味のある写真をまとめてみたい。

mypace.hatenablog.com

wonodas.hatenadiary.com

好きな構図と被写体の話を始める前に 

この記事を書き始めた当初は、「自分の好きな構図と被写体」という2つの切り口で考えていたのだけど、考えるうちにだんだんと視点がずれてきたので、以下ふたつの切り口を改めて設定して考えてみた。

ひとつめの切り口は「私は何を面白いと感じているか?」ということ。

趣味嗜好の範疇とも言えるし写真思想とも言える。それは撮影者からすれば「テーマ」かもしれないし、鑑賞者からしたら「作風」と呼ばれるものかもしれない。

ふたつめはおもしろいと感じたものを「どう切り取るか?」ということ。

これは技法ってやつで、面白いと思った被写体を「どう表現するか」ということ。構図だとか絞りだとか露出だとかの話。

いま私が面白いと感じていること

ぶっちゃけ超かわいいモデルさんを立ててエモーい写真撮ってる人を指くわえて羨ましがってるのが事実である。あれやりたい。フジのC200詰めて2段明るくして撮ってスキャンしてついったーに上げるあれ、やりたい。いいねもいっぱい欲しい。

N0422019

Nikon F80S/Nikko 58mm F1.4G/Kodak Gold 200 

…というのは置いといて、いま私の興味の対象は人と建築、都市と社会のコントラストである。

社会の時流から孤立した街並みであったり、どこか風景にフィットしない人であったり。そんな社会のコントラストに興味がある。ストリートフォトといえばまぁそうかもしれない。

N0262019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Kodak Tmax400

N1192018

Bessa R3A/Summicron-M 50mm/Adox Silvermax

その一方で、予兆めいたなにかという状況も好きだ。まだ何も起きていないけれど、何かが起きそうな予兆、まさに何かが起きる一瞬前の予兆が確信に変わる瞬間、既に事態は進行しているのに当事者(私)が何も気づいていないそんな状況。

N0082019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fomapan 400

N1482018

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Adox Silvermax

 

学生時代に授業で見せられたヨゼフ・クーデルカの影響が強いのかもしれない。

写るか写らないか…ぎりぎりの所にソ連の戦車が迫っていて、クーデルカの腕時計が手前にあるこの写真。学校の授業で初めて彼の写真を見た瞬間、予兆が確信に変わる瞬間の緊張感に興奮したのを覚えている。

100photos.time.com

表現手法のはなし

これはうまく表現できない。

偉そうに能書き垂れられる技法を持ち合わせていないという事情もあるけれど、口に出したり文章に起こしたら最後。なにか大切なものが丸裸にされてしまう気がして、言えない。

なんなら私の写真の構図は日の丸構図ばっかりだし、日の丸構図が好きなんでしょ?と言われるならそれならそれでいいや、くらいに思っている。

加えて自分の写真を「作品」と呼ぶのが小っ恥ずかしいのと同様、構図だとか技法だとかに理屈を並べ立てるのがあまり好きではない。美しい夢はいつも曖昧で、目覚めた時に夢の断片を手繰る過程が美しいのである。

それでもあえて最近好きなものを挙げるならば、電車の窓の外を撮る構図。

N0162019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Adox Silvermax  

N0412019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fomapan 400

N0152019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Arista Edu 100

アラーキーがやった「クルマド」の電車版という訳じゃないけど、電車の窓から覗く外の景色って最近興味があったりする。東京をタクシーでぐるぐる回って撮るのと違い電車の車窓なんて代わり映えしない景色が延々と続くものだけど、時折面白い景色に出くわしたりする。

朝晩の通勤電車の中でカメラを出すのはちょっと勇気が要るけれど。 

写真展のお知らせ

何度かこのblogでも告知をしている通り、5/26から6/1まで原宿のDesign Festa Galleryにて開催される”Film is not dead”という企画展に写真を3枚ないし4枚ほど展示します。

designfestagallery.com

お時間のある方は是非お立ち寄りください。初めて世間様に写真を開陳するのでお越し頂けるととても嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

令和元年に持っていく機材

今年のゴールデンウィークはまさかの10連休。

SNSを眺めていてもラジオのニュースを聞いていても、一人旅に出たり家族とどこかへ出掛けたり友達同士で飲みに出掛けたり…と世間はとても充実している様子なのに、私はこの10日間出掛ける当てもなければ予算も立たないと云う状況。

写真を撮りに出掛けることもできず、楽しそうな世間様を眺めて只々指をくわえて泡を吹くばかりでございます。くそう。

ameblo.jp

松居一代ずっと連休じゃないのか!…と思いつつ、やることがないので手元の機材の棚卸しをしてみた。元々機材を買わない主義なので機材の管理なんてあまりきちんとやってこなかったけど、リストに書き出してみたら結構もの持ってるのね。道楽の道具は太刀と脇差、みたいに2つ程度でいいやと思っていたのに。数えてみたら太刀、脇差、槍、鉄砲、弓矢…くらいはあるので、ついでに現行機材を1軍と2軍に分けてみた。

Nikon D700(一軍)

社会人1年目にもらったボーナスでD40を買ったところから私の写真が始まったのだが、あろうことか印鑑と身分証とボールペンがあれば高額な機材を買えることを知ってしまい手を出したのがこれ。

甲高いシャッター音と、当時としては度肝を抜かれるISO 6400が使えるデジタルカメラで、この高感度性能の高さのせいで夜道撮りと夜遊びが加速した罪深いボディ。夜遊びのお供として色んなところに連れて行って、いままで都合3回ほどアスファルトの地面に落下・激突してボディに亀裂が入っているもののまだまだ現役な超タフガイ。

N0082016

 Nikon D700/Nikkor 58mm F1.4G  

I'm Home My Love.

 Nikon D700/SIGMA 50mm F1.4  

Voiktlander R3A(二軍)

偶然の重ね合わせで私の元に来たカメラであり、初めて使うレンジファインダーカメラでありフィルム写真を再開する羽目になった原因であり、ライカ沼に落ちる原因となった一台。

軽くて頑丈なので長い旅に出る時にはライカよりこれ。精神衛生の観点からもライカを持って長旅に出るなら絶対にこちらを持っていく方が良い。また、唯一無二の等倍ファインダーであり40mmのフレームが出るので手放せない。

rangefinder.yodobashi.com

二重像のコントラストが低く合焦していることが分かりづらい事と、ストラップを掛ける金具がヘナチョコ過ぎて激しい使用でえぐれちゃうのが難点。

N0382017

 Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Kodak Portra400   

N0442017

Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/ACROS 100 

Fuji X-pro1(二軍)

レンジファインダー風デジカメ。光学ファインダーはおまけ程度のおもしろギミック付の高画質なデジタルカメラ

オートフォーカスが遅かったり、ソフトウェアのクセが強くて直感的な操作ができなかったりと色々難ありだけど、フィルムをシミュレートしたフィルタの完成度がなかなか良く手放せないカメラ。

N0232016

Fuji X-pro1/XF 35mm F1.4R 

N0022016

Fuji X-pro1/XF 35mm F1.4R  

Nikon F80S(一軍)

一番直近に購入したカメラ。平成も終わろうと云う時期にフィルム一眼レフを買うなんて想像だにしなかった。

このカメラは世間がフィルムカメラからデジタルカメラに移行する過渡期の製品なので、フィルムのコマ間にシャッタースピードと絞り値を印字する機能があったりして面白い。よっぽど細かい人出ない限り1コマずつ設定をメモしている人なんていないだろうし地味に便利な機能である。

発売から19年も経った製品がこうしてblogの記事になっているなんて、開発者も想像だにしなかっただろう。

何度となく呟いているけど、これからフィルムカメラを始めようとしている人でニッコールレンズ資産があるって人、このカメラ本当におすすめなので見つけたら即買いすべし。

f:id:filmmer:20190427103407j:plain

Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Kodak Portra400

 

N0282019

Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Fuji ACROS 

f:id:filmmer:20190427103435j:plain

Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Kodak Portra400 

filmmer.hatenablog.com

Leica M6(一軍)

「ライカなんてどうせ金持ちの道楽。大した写真撮れもしねーで首からライカぶる下げてごたく並べやがってこのくそじj…」なんて本気で思っていた時期がありました。

いまの若い子の中にも私みたいに永遠の反抗期みたいな子はきっと沢山いて、「けっ!ライカなんて」と思っている子もいると思う。

そんな子にこそ一度ライカのボディを触ってもらいたい。とにかく触覚と聴覚に訴えかける道具で、使った時の「気持ち良さ」が別格だから。フィルムカメラの場合、ボディが画質を左右することがないので、メカニカルな部分がきちっとしていたら、あとは「使っていて気持ちいいか」という点が重要になる。ライカは昔のモデルから現行品までこの点をきっちり意識しているように思う。 

私の場合は、本当に「一度触ったが最後」だった。

N0362019

Leica M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS

N0102019

Leica M6/Summaron-M 35mm F2.8/ARISTA Edu100(Fomapan100) 

ちなみにライカを触るようになってからというもの、道具を大切にするようになった。レンズといいボディといい工作精度と材質の手触りが良すぎて、雑な扱い(投げる&落とす)ができなくなった。 

SIGMA DP2s(二軍)

オートフォーカスは遅い、ISO 200以上は使い物にならない、背面液晶がプア過ぎてパソコンで見るまでちゃんと撮れているか判らないしバッテリーも持たないと云う無い無い尽くしの上に460万画素という、およそ常人には理解不能なスーパーカメラ。

きちんと撮ってホワイトバランスを整えてA1サイズで出力した時、その画質に驚愕した記憶がある。ちなみに同時に出力したD700で撮った写真はA1サイズの出力に耐えられなかった。

このカメラのデッドストックがないかなぁ。クローズアップレンズと一緒に見つけたら即買いしたいんだけどなぁ。

JAZZ SIGN.

SIGMA DP2s 

Scattered fragments of spring.

 SIGMA DP2s with closeup lens

N0522015

SIGMA DP2s

DP2発売時のこのスペシャルコンテンツがまた良い出来で、思いっきり背中を押された記憶がある。背中を押されて悩んでるうちにDP2sが出てしまったのだけど。

www.sigma-dp.com

SIGMA DP1 Merrill(二軍)

プアマンズLeica Q2もしくはプアマンズLeica Monochromeと呼んでいる。

モノクローム専用デジカメと云えばLeica Monochromeだけど、1ピクセル1ピクセルとして出力されるFoveonセンサーの特性上、このカメラはLeica Monochromeに匹敵するモノクローム専用機と云って差し支え無い思う。

N0602015

 SIGMA DP1 Merrill

Somewhere in Japan.

SIGMA DP1 Merrill

Nikkor 58mm F1.4G(一軍)

ここ最近Nikon F80Sに付けっ放しの銘玉。Nikonのレンズはこれと24mm 2.8Dを残して処分してしまった。Nikonを使わなくなった、というよりはこのレンズがあれば他は要らないやという境地に達したため。

N0652015

Nikon D700/Nikkor 58mm F1.4G  

N0162016

Nikon D700/Nikkor 58mm F1.4G  

Fujinon 35mm F1.4(二軍)

軽くて安くてピリッと解像しつつも前後共にきれいにボケる、という優等生のようなレンズなんだけど、どうにも個性がない。

このレンズで撮った写真に思い入れのある一枚がないのが原因だと思うけど、学習指導要領通りの一通りをやってのける面白味のない子みたいな感じ。個性はないけど安定感はあるので裏切られることはないところがいいところ。

N0202016

Fuji X-pro1/XF 35mm F1.4R 

N0052016

Fuji X-pro1/XF 35mm F1.4R 

Summaron-M 35mm F2.8(一軍)

20194月現在もっとも酷使されている常用レンズ。もうM6に付けっ放し。

このレンズを買ってモノクロフィルム、カラーネガ、ポジ、デジタルと一通り試した後に「実はレンズって50年前に完成してたんだな」と妙に納得した1本。軽くて小さくてビシッと写る上に、無限遠ロックが静かにパチンと止まる機械的な精緻さまで備わっていて、一度これを使ってしまうと35mmはこれ以外要らないと思ってしまう。そんなレンズ。最初は現行のSummicron 35mm F2が欲しかったけど、もうどうでも良くなってしまっている。

N0232019

Leica M6/Summaron-M 35mm F2.8/Cinestill BWxx 

N0242019

 Leica M6/Summaron-M 35mm F2.8/Kodak Tmax400

Summicron-M 50mm F2 4th(一軍)

これもFujinon XF 35mm F1.4Rと似たような癖のない優等生レンズ。解像感はとてつもなく良い反面ボケはうるさめ。そもそもボケの良さ云々は設計思想に入っていないだろうと思わせるレンズ。

これは初めて手にしたライカレンズであり、私に昨今の大口径レンズへの不信感を募らせた一本。

男って生き物は「でかくてゴツい即ち高性能!」と感じるように脳味噌がプログラムされているのか、細々書かれたスペック表とゴツい筐体を出せばコロリと納得させられるきらいがあるように思う。

私も大口径が正義だと考えていた時期があったが、このレンズを使ってみたら世界がコロリと反転した。こんなに小さいのにそこらへんのゴツくて太いレンズより全然いい写りするんだもの。短小って悪いことではない。

N0662017

Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS 

N0422017

Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS 

N1622018

Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/FomapanR 

Nikkor 24mm F2.8D(二軍)

買った当人もなぜこれを買ったのか、なぜ売却処分せずに残しているのか一時期さっぱりわからなかったレンズ。画角的に使いずらいし使うシチュエーションないし、どこかで処分しようと思いつつ、2軍にも上がって来ない3軍だったためか処分されずになぜか手元に残ってしまった1本。

現在ほぼ出番なしなのだが、この記事を書くために過去の写真をひっくり返してみたらなかなか悪くない。いや、むしろ結構好きな写真が多いかもしれない。一通り58mm F1.4Gを使ったフィルム写真は撮ったから、次はこいつを付けて街に出ようかな。

N0062014

Nikon D700/Nikkor 24mm F2.8D

Old Alley Ginza.

Nikon D700/Nikkor 24mm F2.8D

令和元年欲しいものリスト
  • Voiktlander Nokton 40mm F1.2
  • Leica Elmarit 90mm F2.8/Tele-Elmarit 90mm F2.8
  • Peavey 6506 head mini
  • Mamiya 7/Plaubel 670

Bessa R3Aを持ってる手前どうしても気になるNocton 40mm。Photo Yodobashiの作例やAn Ordinary Lifeさんの作例を見てると気になって仕方がない。F1.4もいいけどF1.2の方が気になる。

rangefinder.yodobashi.com

mypace.hatenablog.com

イカの90mmは銘玉ぞろいと聞くし、実際に試してみるとあの美しいボケ味と解像感が同居した感じはいけないクスリのように脳味噌の気持ちいい部分に浸透してくる。Leica Tele-Elmarit 90mmかなぁLeica Elmarit 90mmもいいなぁと思案している。

coalfishsholco.hatenablog.jp

news.mapcamera.com

Leica Elmarit 90mm

news.mapcamera.com

EVHの音に一度でもやられた人からすると、20Wサイズでこのアンプヘッドは絶対気になるはず…って、これはこのblogの趣旨と違うか。 でも気になって仕方ないサイズ。

www.soundhouse.co.jp

 

いつもカメラ屋にいくと眺めてしまうマミヤ7とプラウベル。自家現像はできても自家スキャンの敷居(機材購入の金銭的な敷居)がどーんと上がるため、如何にもこうにも踏ん切りがつかない。道端で拾ったり遺品として貰わない限り2019年中に使い始めることはない…かな。超絶欲しいけど。

sunrise-camera.net

nowarl.hatenablog.com

 

 

 

平成も残り僅か。皆さま10連休をお楽しみください。令和で会いましょう。

撮った写真をきちんと世に出して行くと決めた

自作を指差して「作品」呼ばわりできない

自分の写真を指差して「作品」と呼ぶと、あまりのこっぱずかしさにとてもむず痒い気分になる。もしかしたらあまりの恥ずかしさに、赤面して穴を掘って飛び込んでしまうかもしれない。そのまま首の骨でも折って土に埋もれて、10万年後に「前時代のおっちょこちょい」として発掘されて陳列されてしまうかもしれない。

N0082015

 Nikon D700 Nikkor 58mm F1.4G

建築にしろ写真にしろ、世の中にはどっからどう見ても駄作だろ!という創作物を世間様に「作品」として開陳し涼しい顔して自信満々に語り出してしまう人がいるけど、私はあまりその手の活動が得意ではない。

思いっきりアクセルベタ踏みでバックするような作品に真面目な解説文が付いているのは好きだけど、微妙な「作品」に真剣なポエムなんて添えられてたりしたのを見た日には、他人事であるにも関わらず思考停止に陥るのである。

云うなればバッドアート美術館に収蔵されるような作品にはいくら真面目な解説が付いていてもオッケーだし、頭おかしい次元に飛んでしまったウィスキー評論家のレビューも抵抗ないが、巨匠丹下健三ミケランジェロ頌を読んでいるとあまりの中二病っぽさに吐き気がしてくる、あの感じに近い。

bijutsutecho.com

そんなひねくれた視点を持っているためか、私の写真道楽は写真を撮りつつ機材を眺めてニヤニヤしていると云った自閉症のような状況であって、自分の創作物を世間に開陳して「この作品」と呼ぶことは、なにかとてつもない抵抗があるのである。むしろ黄金期のライカレンズの工作精度の方が「作品」なんじゃないかと思ってたりするくらい。

N0332019

 Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Kodak Portra400

「こ、この、ささ、作品!作品なのかこれ!?、この作品はあの、あの…あのね!!」

自分の写真の横に立って写真の説明をしろと言われたら多分こうなるし、とてもじゃないけど、「作品」というワードを口にした途端恥ずかしさで憤死する。

注: 人前でのおしゃべりと仕事のプレゼンテーションは得意分野です。

 

写真への向き合い方、いままでとこれから

過去を振り返れば、山のように撮った玉石混交の写真の山の中から気に入ったものを拾ってflickrに上げ続けてきた。いま振り返ったら一時期写真を撮らなくなった時期を除いても10年くらいはコツコツ上げていた。

時折in exploreに選んでもらえたりすると軽くバズって嬉しいけど、特段何か活動をする訳でもなく、見たい人はどうぞくらいのスタンス。

言うなればちょっと世間に心を開いたヴィヴィアン・マイヤー状態。もちろん彼女のような技量と感性が備わっている訳ではないけれど。

www.youtube.com

 

ちゃんと撮った写真なら、きちんと世に送り出してみよう

ここからが本題。数週間前に突然そんな大層なことを思いついた。

過去写真を整理していると本当に色んな写真がある。室内に溢れる光を捉えようと何度も何度もフィルムを巻き上げて撮った写真、街歩きの最中に遭遇した社会問題(のような何か)を捉えようとした写真・・・酩酊して撮ったであろう何も覚えてない写真などなど色んな写真があるけれど、デジタルカメラからフィルムカメラに帰ってきてから撮られた写真は、その多くがきちんと何かを考えてシャッターを切っている。

N0312019

Leica M6/Summaron 35mm F2.8/Fomapan400 

 

N0352019

 Leica M6/Summaron 35mm F2.8/Fomapan400 

 

一方デジタルカメラばかり使っていた頃は、意識不明で何も考えずにシャッターを切った写真だとか、きれいな景色を撮りたいという意思のみでシャッターを切った写真が多く、「何考えてこの写真撮ったんだっけ…」と考えても思い出せない写真が多かった。

N0172016

Nikon D700/Nikkor 58mm F1.4G 

N0422014

SIGMA DP1 Merrill  

フィルムだと枚数が撮れないので一枚一枚をよく考えてから撮る。必然的に情念のようなものが写真に乗り移っているのか、(多分なんてことない一枚が)大切な一枚になっていたりする。

そんな訳で、私の写真が人に気に入られるかどうかは別として、強い意図を持って撮った写真であるならば、きちんと形にして美しい言葉(ポエムではない)を添えて世間様に開陳すべきなのではないかと思い始めた次第である。

紙焼きを始めたら面白かった

フィルムカメラしかなかった頃は当たり前にプリントしていたのに、デジタルに完全に切り替わってからというもの、写真は「ディスプレイで眺めるもの」に変わった。

一通りデジタルカメラを使って後にフィルムに戻ってはきたものの、写真の流通がSNSやインターネットである以上ディスプレイでの鑑賞というのが前提となってしまい、ネガスキャンのことは考えるけど、プリントを意識することは殆ど無くなっていた。

f:id:filmmer:20190413202255j:plain

Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Kodak Ektachrome

写真を形に残す作業としてきちんとプリントをし始めたら、これがまたどうして面白い。「写真の手触り」と云うと怪訝な顔をされるかもしれないが、私は焼いた写真に手触りがあると思っている。

物理的な「紙の手触り」とは別に紙に焼いた写真は、トーンの重量とでも表現すれば良いのか、独特の質感を持っているように思う。久しぶりにちゃんとプリントした写真を指でなぞって「あぁ、やっぱりいいなぁ」と思った次第。自分はオカルトに向いているかもしれない。オーディオ沼に落ちなくて良かった。

jp.wsj.com

紙焼きしていてもう一つ驚いたのは、Summaron 35mmで撮った写真を焼いた時のこと。

アレモコレモさん曰く、Summaron 35mmで撮った写真を紙焼きしたら暗部の表現に驚いたとのことだったが、私自身初めてこのレンズで撮った写真を焼いてみて本当に驚いている。スキャンして満足していた暗部からさらにディテールが浮かび上がってくるの。たまげたなぁ。

また、暗部の描写がすごく得意なレンズで焼いていて一番驚いたレンズ。スキャンして画像見てああ、これプリントしようと思って、プリントしていたら端っこの暗部の中に人がいることに気づいて驚いた経験がある。

aremo-koremo.hatenablog.com

N0082019

Leica M6/Summaron 35mm F2.8/Fomapan400  

 f:id:filmmer:20190413230938j:plain

スキャンの設定がおかしかったのかと思いもう一度スキャンしたけどやっぱりパラメータは間違っていなかった。iPhoneで撮った写真からはよくわからないが、黒いシルエットになっている部分から人がゾロゾロ出てきた。ちょっと怖い。

と云うことで、世間様に向けて展示をします

5月26日から6月1日の短い期間ではありますが、原宿のデザインフェスタギャラリーにてFilm is not deadと云う企画展に参加します。グループでの出展になるのでそんなに枚数は出せませんが、人生で初めて「作品」なるものを展示します。ポエムはありませんので、ぜひ皆様お誘い合わせの上ご来場ください。

また、この機会に今まで「じゆうなおとな」としてのらりくらりツイートしたりblogを書いたりしていましたが、その昔思いついてお蔵入りしていたStudio Plumhouseと云う屋号を掘り起こしましたので併せて宜しくお願い致します。

designfestagallery.com