analogue life

フィルムが捉える世界は美しかった

Nikkor 58mm F1.4Gとフィルムで撮る写真

日本製の一眼レフは優秀なのである

先日中古カメラ市で即買いしたNikon F80Sの便利さに驚いている。

最近のフルサイズ一眼レフよりひとまわり小さくて軽くて、基本的な機能はしっかりしつつも無駄な機能が付いていない潔さがいい。Leica M6だとかBessaみたいなカメラを毎日持ち歩いて写真を撮っている日常に国産一眼レフが割り込んでくると、その便利さに本当にびっくりするのである。

自動でピント合わせてくれて露出まで決めてくれてレンジファインダーよりも寄れちゃって、巻き上げも勝手にやってくれてフィルム1本撮り終わったらウィーンって巻き取ってくれちゃう。これを便利と云わずになんと表現すればよいのか。

こんな至れり尽くせりのカメラがあったら、そりゃレンジファインダーカメラが市場から駆逐されても文句言えないよなぁと思えるくらい便利で、うっかりすると「写真チョロいっす!」なんて誤解しそうなくらいのお手軽さ。

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filmmer.hatenablog.com

Nikkor 58mm F1.4Gについて

今更私がどうこう云う必要はないであろうニコン2013年に発表した銘玉。シグマやツァイスを先頭に解像度レースが繰り広げられている50mmレンズの市場にあって、空気感やボケ味というおよそスペックに現れない撮影者の自己満足の世界で勝負をかけた、とてもチャレンジングなレンズ。シャープじゃないと怒られちゃうこのご時世に、写真の本質を問いかけたレンズだと思っている。

digicame-info.com

開発者の方々がどのようなアプローチをかけたのか、どんな苦労をされたのかを外部から知る事はできないが、このレンズの設計はきっと楽しい仕事だっただろうな、と勝手に想像している。

photo.yodobashi.com

モダンレンズを付けたフィルム一眼レフで写真を撮ること

古エルマーや古ズミルックスM10に付けたりα7に付けて撮った作例は毎日のように目にするし、アポズミクロンをM6だとかMPに付けて撮ったフィルム写真も(数こそ少ないが)時折目にする。

一方でニコンやキャノンユーザー層の殆どは新製品を追いかける傾向が強いようで、フィルム一眼レフに最新のニッコールレンズを付けて撮った作例を目にすることは極端に少ない。

新しい設計のレンズはCMOSセンサーの性能を引き出すべくテレセントリック性やコーティングが改良されているはずなので、そんなレンズを通した光を35mmフィルムと云う古いフォーマットで受け止めるとどんな写真になるのだろうという興味があった。特に現代のコーティングがなされたレンズと古い設計のフィルムの組み合わせは何か面白いものが撮れるかもしれない。 

評価軸をどこに置くか

ぶっちゃけた話、モダンなレンズの解像度はAdoxのCMS20みたいな特殊例を除けば35mmフィルムの解像度を上回っていると考えられるので、現像したフィルムをスキャンしてびしっとバリッと解像してるか否かを評価するのは意味がない。レンズを通った光が到達する場所はCMOSセンサーではなく写真フィルムという前時代の産物である。数値で立ち現れる解像度やダイナミックレンジのようなものとは違う評価軸が必要だ。

 

www.adox.de

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フィルムの情緒とNikkor 58mm F1.4Gの空気感

そんな訳で、Nikon F80SとNikkor 58mm F1.4Gの組み合わせテストのゴールを「フィルムが持つ湿度感と情緒とこのレンズの持つ空気感を掛け算したらどんな写真になるのか?」という事に設定した。

我ながら大仰なゴールを設定してしまい、情緒も空気感もない写真が撮れなかったらどうしようと後悔したが、悩んだところで何も始まらないのでとにかく撮ってみた。

使用したフィルムは3種類。フジ記録用100とKodak Portra400とフジACROS100。

いきなり言い訳から始めると、先日購入したF80Sはどうも巻き上げに問題があるらしく、シャッターを切ると時折ミラーが上がったままになりエラーを吐き出す。そのままもう一度シャッターを切ると何事も無かったかのようにエラーが消えるのだけど、都合2コマ分を消費するという状況に時折陥るため、特にPortra400で実際に撮れた写真は少ない。

言い訳はほどほどに作例を。

N0212019

Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/フジ記録用100

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 Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/フジ記録用100

 

N0202019

Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Kodak Portra 400 

 

N0272019

 Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Fuji ACROS 100

考察を試みる

比較対象はNikon D700とSummicron 50mm F2、Summaron 35mm F2.8。

Nikon D700のCMOSセンサーが捉えた写真とPortra 400、フジ記録用100が捉えた写真を比較すると、やっぱりCMOSセンサーの色はあっさりしているなーという印象。線が細くてあっさりしている優等生タイプ。一方のPortra 400は雑味の旨味が凝縮されたようなこってり濃密な写り。フジ記録用はまぁ、、、記録用の空気感ですかね。

個人的にはACROSの写りが一番好みかも。

ベイヤーセンサーのデジタルカメラで撮った画像をモノクロ処理すると、どうしても煮え切らないもやっと感が出てしまうのだけど、そこはフィルム。きちっと写ってくれる。

N0942014

 Nikon D700/Nikkor 58mm F1.4G 

イカには時代を超えた写真へのポリシーがあるのか、私の手元にある2001年製のSummicron 50mm F2と1965年製のSummaron 35mm F2.8はぱっと見画角の違い以外あまり違いがない。よーく見ると暗部の階調だとかコントラストは違うのだけど、なにか一本の軸が通っている印象がある。

この2本のレンズと比べるとNikkor 58mm F1.4Gはコントラストが微妙に強い気がする。

N0382017Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Kodak Portra 400 

 

N0442018

Bessa R3A/Summaron 35mm F2.8/Fuji ACROS 100 

N0422017

Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS 100 

結論: そこに湿度感、空気感はあるだろうか?

もうこれは趣味嗜好と自画自賛の世界でしかないが、私個人としてはNikkor 58mm 1.4Gが持つ空気感とフィルムの持つ湿度感はいい感じの掛け算になっていると思う。このレンズを持っている方は迷わず中古屋に走ってNikonのフィルム一眼を探すべきだと思うし、このレンズもフィルムカメラも持ってない人は今すぐ両方を買いに走ることをお勧めしたい。ことNikkor 58mm F1.4Gは後世に残す財産のようなレンズなので、持っていて絶対に損はない。

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 Nikon D700/Nikkor 58mm F1.4G 

 

N0282019

Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Fuji ACROS100 

 

N0292019

Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Fuji ACROS100 

デジタルカメラとこのレンズの組み合わせでも充分に美しいボケと空気感を味わえるが、かつてこのレンズとD700で撮った写真を眺めると、あまりにクリアかつシャープ過ぎて湿度ゼロの世界を撮ったような、生気の薄い写真のように思う。

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Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Fuji ACROS100 

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Nikon F80S/Nikkor 58mm F1.4G/Fuji ACROS100 

加えてデジタルの特性上光源があっさり白飛びしてしまうので、光芒だとか陽だまりをぼかしつつ撮る事を考えたらこのレンズはやっぱりフィルム向けかもしれない。

レンズの空気感とフィルムの湿度感がマッチするかもしれないという私の見立てを裏付けるためにも、もう少し検証を続けようと思う。