analogue life

フィルムが捉える世界は美しかった

最後のACROS

ストックしておいた最後のACROSを冷蔵庫の奥から取り出した。
真夏の太陽がぎらぎらと照りつける土曜日の朝、リビングのエアコンを夜通しかけっ放しにしていたにも関わらず部屋の気温は朝から高い。

冷蔵庫から取り出されたフィルムは、部屋の湿気を纏いうっすらと汗をかいているようにも感じられた。
この時勢、写真フィルムの運命なんてハナクソよりも軽いのかもしれない。名作モノクロフィルムと言われたACROSだって例外では無い。

物事の幕切れ、最期なんてあっけないものである。

 

2週間近くかけて最後に残った2本のACROSを撮り終え、家に帰り昼間から酒を飲みつつ自家現像。
手元にあったSilvermax Developerで現像。薄紫色の廃液を捨ていままで何度となくやってきた手順に従って水洗を終えバスルームに吊るすことしばし。撮り終わった時点で、もう既に後戻りはできない訳だけれど、吊るされたフィルムを改めて眺めているとACROSを使い終わった実感が湧いてくる。

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Fuji Xpro1/ Fujinon XF35mm F2.8

ACROSで最後に撮ったのは晩夏の海辺

フィルムをM6に詰めながら、最後のACROSで何を撮ってやろうかと一瞬考えたものの、考えれば考える程何も撮れなくなりそうな気がしたので、あてもなく都内をぶらぶら散歩しつつシャッターを切り、気がついたらに海辺に向かっていた。

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS 

 

暮れゆく夏の日差しがぎらぎらと照りつける海岸は最後のACROSを使うのにうってつけの場所だったかもしれない。

初々しく優しげな初夏の日差しに比べ、残暑の日差しは過酷でありながら秋の気配を忍ばせていて、最後のACROSを詰めたカメラで撮る風景としてなにがしかの意味がある場所だったように思う。

N0762019

LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Fuji ACROS
 

晩夏の海辺は美しい。

つい先日までそこにあった喧騒が途端になりを潜め、強い日差しの向こう側から波の音が延々と聞こえてくる。穏やかな景色の中に焼きつくような強いコントラストの長い影が、夏の名残を物語っているかのようだ。

 

代わりのフィルムを探して

過去を振り返るたびにACROSは本当にいいフィルムだったなぁと思う。描写は精細かつ緻密。現像を失敗したこともなければ失敗写真を量産したこともなく、悪い思い出が一つもない。

本来ならばACROSの後継フィルムにスイッチして使い続けたいのだけれど、ACROS終売の決定と後継フィルムのアナウンスがどうにもマッチポンプ的というか田舎のパチンコ屋の新装開店的というか、予め予定されていた値上げの寸劇のようで、喜んで使う気になれない。

そんな訳で私はこれを機にACROSからAdox Silvermaxに切り替えようと思う。

ACROSとあまり変わらない価格で調達できるしシャープネスはACROSと同等のレベルだと思う。加えてこのフィルムは短波長側の感度が素晴らしく青色をきちんと拾うためグレイトーンの美しさは素晴らしいものがある。

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 Bessa R3A/Summicron-M 50mm F2/Adox Silvermax

N0532019

LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Adox Silvermax

 

filmmer.hatenablog.com

 

とはいえ、ちょっと寂しい気分だったりもする

ここまで書いてみて、ほんのちょっと感傷に浸りながらいろんな人が撮ったACROSの写真を眺めている。いま市場に残っているACROSの使用期限はおそらく10月まで。もう一本どこかで調達して最後に使ってみるのもいいかもしれない。 

www.bgg-eikokudo.net

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旅するカメラとしてのライカ

改めてM型ライカの良さを知る。

旅カメラというジャンルがあるとすれば、ライカは正に旅カメラの王道じゃないだろうか。今回数週間の旅をM6と共にしてその良さを改めて実感した。

堅牢でありながら取り回しが軽快で、シャッター音もおとなしい。ポートレートだとかストリートを撮るのであればこれほど頼もしい機械はない。レンズも昨今の大口径レンズに比べて遥かに小さく描写も良好だし、人間の身体スケールにとても合っていると思う。

出てくる写真の質は各人のお好みの世界なので、ここではオカルトめいたごたくを並べるつもりはないが、この取り回しと描写は素晴らしいものがある。

サイズ感や重量感だけならば昨今のミラーレスとあまり変わらないが、情緒という評価軸を足してしまうと「ライカ」と「旅」は見事にしっくりとハマる。そんな気がする。

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Xpro1/XF 35mm F1.4

イカ以上のカメラは数多くあるけれど身体スケールにあった大きさがライカの良さだと思う。改めてiPhoneと並べてみてもこのサイズ感。フルサイズデジタル一眼レフだとこうは行かない。

 

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Xpro1/XF 35mm F1.4

手にすっぽり入る大きさであり、重過ぎないけど軽すぎるということもない。まさに適者生存。

 

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Xpro1/XF 35mm F1.4

素っ気ないトップもいい。ゴテゴテしていない後ろ姿もいい。最小限のダイヤル類のみにまとめられているシンプルさも良い。レンズを35mmに変えれば更にコンパクトになる。

旅の道中にて

今回はSummicron-M 50mm F2とSummaron-M 35mm F2.8を鞄に詰めて旅に出た。

性格が無精であることに加えてバックパッカー根性が抜けないため、持ち物はいつだって最小限に留めてしまう。フィルムも最小限の数量を鞄に詰め、半分以上は現地調達とした。

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS 

 

N0622019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS  

私の手元にあるM6は箱入り娘だったと思う。

ほぼデッドストックのような外見で外箱一式が手元にあるので、本当にあまり外に持ち出されなかったんだろう。今回の旅はもしかしたらこのカメラにとって初めての長旅だったかもしれない。

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 LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS  

 

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS   

 

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 LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS   

 

若人よ、ライカを買わないか?そして旅に出よう。

我々日本国民は消費税を10%に上げることに同意した。

私含め「ちょっと待った!そんなの同意できない!」と異議を申し立てたい人間がごまんといると思うが、悲しいかな大多数の日本国民の意思は増税であったのだから仕方ない。

www.nippon.com

残念ながらこの消費税増税は回避できなさそうなので、欲しかった機材があるなら消費税が10%になる前に買ってしまおう。こと若い子には無理をしてでもフィルムライカの中古に手を出して頂きたい。

国産ミラーレスカメラも素晴らしいが、写真を続けているとそのうちライカフィルムカメラに触れることになるから。そして、自身を振り返って「ずいぶん遠回りしたなぁ」と思うから。

2%の増税って大したことないように思うかもしれないけど、100万円の買い物したら2万円、500万円なら10万円も差がつくんだぜ。汗水垂らして稼いだ金をこんなしみったれた国においそれと渡すなんて馬鹿げてる。

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Adox Silvermax

 

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Kodak Tri-X 400

写真に興味があってフィルムカメラの世界に踏み入れたいと考えている若い子には、ぜひフィルムライカに手を出して頂きたい。そして旅に出て欲しい。

どのライカを買う?

M6の価格はいつの間にか随分と上がってきていて、相場は大体18万から24万くらい。たまに13万くらいの個体が出てくるので許容できる状態なら買いかもしれない。露出計もついてるしフレームも28mmまで出るので使っていて何ら不満が無い。 

予算が厳しいならM4がいい。

大体の相場が10-15万くらいなのでM6よりだいぶ手を出しやすいけれど、露出を勘で決める自信がない場合は別途露出計を買う必要がある。また35mmまでしかフレームが用意されていないので、28mmのレンズを使いたい場合は外付けビューファインダーも買う必要がある。

個人的な好き好みではあるけれど、造形的にM6とM4が一番美しいと思っている。

sunrise-camera.net

 

更に予算が厳しいのであればM4-2かM4-P。

いわゆるライカ暗黒期の製品なのであまり評判は良くない。相場は12万から14万くらいなのでM4と比較してみて程度のいいM4が近い価格で出ていたら、ちょっと無理してM4を買うのがいいかもしれない。その他縦吊りがカッコいいM5やM3も大体この価格帯で買えるので、お好きな個体をどうぞ。

sunrise-camera.net

欲しいレンズが決まっていないなら現行のSummicron 50mmか35mmを1本買えばいい。後悔することはないので、清水の舞台からダイブする気分で状態の良いレンズを大枚叩いて買って良い。

blog.yokokanno.com

blog.goo.ne.jp

 

定期的に新宿高島屋か銀座松屋で開催されているクラシックカメラの即売イベントに足を向けるのも良い。ちなみに現在新宿高島屋で8月20日までクラシックカメラ博が開催中。

www.takashimaya.co.jp

くれぐれも注意して頂きたいライカ

イカは素晴らしいカメラだけど、時代時代の限定品やレアライカがあったりするので沼の深さも相当なものがある。私がうっかりハマりかけたKE-7A始め、ひと財産潰しそうなレア物があるので、珍しいライカを見かけた際は無視するに限る。

japancamera.org

ohnukicame.exblog.jp

aremo-koremo.hatenablog.com

 

シンガポールのフィルムカメラ事情

仕事でシンガポールにしばらく滞在していました。

リュック背負って日本を飛び出して、毎日のように屋台とランドリーと仕事場を往復する日々。出発前に髪を切りに行くのを忘れていたので、髪はボサボサだし身なりはヨレヨレだし。元々が自由人なので全く気にならないのだけど、バックパッカーに仕事がついてきたような。そんな不思議な感じ。

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji C200

 

そんな滞在中のとある夜、M6ぶら下げて屋台の夕食を探していたら隣に居合わせたオタクっぽいおじさんから話かけられる。

このおじさんのカメラにかける情熱は素晴らしいのだけど、彼の喋るほぼ広東語らしき中国語を私が全く理解していないにも関わらず、頭をぼりぼり掻きながら何とか英語を捻り出し、暗室の素晴らしさやズマロンの素晴らしさ、自分はドイツ製が大好きであることを訴えかけてくる。

時折「うー…」とか「あー…」と唸って下を向き考え込んでは早口でまくし立てるこのおじさん。オタクのテンプレに乗りすぎてて微笑ましった。今思えばこのおじさんのポートレートを撮ればよかったと後悔している。

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 LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji C200

 

初めて訪れたシンガポールは、近隣諸国の文化がごちゃ混ぜになった上に成立しているとても色鮮やかな国に思えた。様々な宗教や文化風俗がバランスを保って共存する国。そんな印象。

 

シンガポールフィルムカメラ事情

シンガポールの写真は別の記事にまとめるとして、滞在中に中古カメラ屋が集結した雑居ビルを見つけたので忘備録的に書き残しておく。彼の国にフィルムカメラを持っていく方は当地でフィルムの調達もできるので参考にして頂ければと思う。

件のビルはシンガポールの中心部のCity Hall駅から歩いて5分ほどのところにあるPeninsula shopping centerというビル。

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住所:3 Coleman Street Singapore 179804

 

発展著しい彼の国にあって隣の商業施設と比べてしまうと正直くたびれている感は否めないし、Trip adviserには「汚くて臭い」とまで書かれている(確かに綺麗じゃないけど正直そこまで酷いことはないと思う…)けど、このビルの中は楽器屋あり中古カメラ屋ありの道楽者には嬉しい内容。

H&Mだとか無印、流行りのカフェばかり入った商業施設なんてもう要らねえ!!

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iPhone SE/VSCO

FUNANショッピングセンター横の白いビルが現場。旗を揚げるポールが5本並んでいるところまで行くとフィルム屋の看板が出迎えてくれるので間違いようがない。

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iPhone SE/VSCO

We've Filmsって響きが頼もしいこの看板の後ろは、主にフィルムを取り扱っているRuby Photoというお店。今回はあまりお世話にならなかったけど、現像液を初めタンクなんかも買えるっぽい。またここはAdoxのフィルムも扱っているらしい。

Ruby Photo[https://www.facebook.com/RubyPhotoSingapore]

 

中に入ると1Fだけで中古カメラ屋が4,5店舗あり上の階に上がると大きめの店舗がひとつある。基本的にくたびれた雑居ビルの様相。

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iPhone SE/VSCO

帰国してから気づいたけど、値札に三宝カメラの名前が…。1Fのどこかだったと思うんだけど店の名前が全く思い出せない。

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iPhone SE/VSCO

ここはソニー製品の品揃えが良かった気がする。

The Camera Workshop[https://thecameraworkshop.sg]

 

1FのにあるRiceballは入りやすくて親切な印象。

なぜおにぎりなのかは解らないけど商品のセレクトは中々いい感じ。今回の旅の道中フィルム補給のために何度も寄らせてもらったのがここ。たまに店の前にワゴンが出ていてジャンク品が並んでいたりする。日本でよく見るあの光景。

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iPhone SE/VSCO

間口は狭いけど、会話内容から常連さんと思しきお客さんが常にいる。常連さんがいても不思議と入りにくい雰囲気じゃないところが素敵。

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iPhone SE/VSCO

店員さんもフレンドリーで客層もコアな道楽者が多かった。私の横で新しいLEICA M-Eの話をしているおじさんだとかさらっとSummilux-M 50mmを買う兄さんだとかがいて賑わっていた。それにしてもこの国は金あるなぁ。

写真のお兄さんとシンガポールフィルムカメラ事情を聞いてみたら、やっぱりここ数年フィルムカメラ熱は高いらしい。彼は20歳そこそこらしく、フィルムカメラをリアルタイムで経験していない世代らしい。

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iPhone SE/VSCO

店のお兄さんに断って撮らせてもらった店内。取り扱いフィルムはこんな感じ。Portraはバラ売りしてくれるけど、価格帯は日本とほぼ変わらない。フジ記録用400の在庫をまだ持っていたのが驚きだけど、C200があったので道中はこればっかり買っていた。

モノクロフィルムをたくさん持って行ったのに、やっぱり南の国に行くとカラーネガを使いたくなる。

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iPhone SE/VSCO

うっかり立ち止まってしげしげ眺めてしまったこれ。1500SGDだから12万円くらいだけど…財布の中身とレシートの山を見たら、そんなにカメラばっかり買ってどうすんだと正気に返った。

Riceball Camera[https://www.facebook.com/RiceballPhotoBook/]

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji C200

上階にあるBlack Market Cameraも外せない。

ここはぐるり周囲を囲むショーウィンドウにカメラとレンズがぎゅっと陳列されていて店の中は三脚だとかアクセサリ類が所狭しと詰め込まれている。

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iPhone SE/VSCO 

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iPhone SE/VSCO

や、安くはないかな…。

Elmarit-M 28mm F2.8の値段を見る限りマップカメラとどっこいか少し高いくらい。ここんちだけじゃなくどこの店も総じて高い。下手したら日本より若干高かったりする。

安かったらシンガポール製ローライ35をお土産に買ってこうかと考えていたけど、また次回のお楽しみとすることにした。  

 

追伸:

当地でしばらく仕事をしていたら、バグっていた頭がすっかり良くなりました。仕事が忙しすぎることよりも、一人で過ごす時間が無かったことが体調不良の原因だったらしいです。

 

 

 

Silvermaxを専用現像液で仕上げた写真は美しかった

忙しすぎてバグった頭はあまり改善してない。

思考力も判断力もどん底という日は順調に減ってきたけれど、相変わらず無限高速テトリス状態で仕事が降ってくる状態は続いていて、時折処理能力を超えた仕事とトラブルににっちもさっちも行かなくなる日が訪れる。そんな感じ。

気がつくとリズムのある音楽を聴かなくなり、最近は落語とホワイトノイズと波の音を愛聴している。末期かもしれない。iTunesでポチポチ音楽を探していたらホワイトノイズばかり集めたプレイリストがあったのには驚いた。

music.apple.com

music.apple.com

欲しいものがあります

ところで、ストレスが極限まで高まると人間は浪費に向かうと思うんだけど、この理屈はあってるだろうか?

Summaronがあるから35mmはもう要らねーやと思っていたのに、最近現行Summicronが光り輝いて見えたりBiogonが私を誘っているような気がする。M6あるしライカはもういいやと思っていたのにM4とかいうカメラが気になってきたりする。M4のことをポチポチ眺めていたらKE-7Aとか云うアレが目の前にデーンと表示されたりして。

煩悩回廊に迷い込んだ気分である。

ohnukicame.exblog.jp

そんな気分になっている時のPhoto Yodobashiは目の毒だ。ふと仕事中に現像逃避を兼ねてPhoto Yodobashiを覗いたら今度はライカモノクローム が欲しくなってしまった。危ない。 

rangefinder.yodobashi.com

Photo Yodobashiが狡いのは、新製品に混じって時折オールドレンズやフィルムカメラや二眼の記事を織り込んできたりするところだと思う。デジタルカメラにあまり興味がない私のような人をヨドバシカメラは放っておかない。沼に落とそうとするその姿勢が誠に狡い。

photo.yodobashi.com

写経をするがごとく自家現像をする

私の趣味は道具収集ではない。写真を撮ることなんだ…と自らに言い聞かせるように写真を撮り、夜中にごそごそと現像をしている。現実から逃げるように酒を飲みつつ、一つの作業に没頭する。

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Kodak Tri-X 400

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Kodak Tri-X 400

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 LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Kodak Tri-X 400

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LEICA M6/Summicron-M 50mm F2/Adox Silvermax 

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Adox SCALA(Silvermax)

最初の3枚はTri-X 400をAdonal(Rodinal)で現像。バリッとシャープだけど粒状性が荒々しくクラシックな印象。一方下の2枚はAdox SilvermaxをSilvermax現像液で現像したもの。とてもモダンでスムーズかつ繊細な仕上がりだと思う。

ちょっと前のアサヒカメラでSilvermax現像液とD76現像の比較記事があったので改めて見直してみたら、ぱっと見は全然両者の違いがわからないんだけど、拡大するとSilvermax現像液で仕上げた写真は明部から暗部にかけてなだらかなトーンとなっていた。

今回はクラシックなTri-Xをクラシックな現像液で仕上げた写真と、モダンな現像液で仕上げたSilvermaxの写真を並べて比較してみたけれど、両者の違いは決定的だなぁと思っている。もしかしたら酔っ払って現像している私の腕の問題なのかもしれないけれど私はSilvermax現像液で仕上げた写真が好きだ。

まとまりのない文章になってしまった。次回は時間ができたら自家現像の話でも書いてみようかなと思います。

 

それでは、仕事でしばらくシンガポールへ行ってきます。

2019年上半期の写真を振り返る。

最近、まったく写真を撮ってない日が続いている。カメラをぶら下げて街を歩いていてもファインダーの先にある景色の何が面白いんだかさっぱり解らず、12枚撮って帰ってきてしまう。撮った写真を現像して眺めても何も感じない、面白いと思えない。そんな日が続いている。

加えてあれが欲しいこれが欲しいということもなく、行きたい場所も見たいものもない。写真に関する欲望ゼロの賢者モードで、週末は昼から酒飲んで寝てるという有様。

日照りと呼んでいい。なんの収穫もない。

ツイッターを眺めていると、みんなせっせと写真撮っていて、展覧会やったり賞を取ったり休みなく高いテンションで写真を語っていたりして凄いなぁ、と。アヘン窟の廃人のようにぼんやりネットを眺める週末が続いている。何も達成できていない。 

頭がバグり始めた。

元々の性格が飽きっぽいというのは重々承知しているが、何度も訪れた倦怠期を乗り越えて細く長く撮り続けているので、写真自体には飽きていないんだと思う。

むしろ問題は公私ともに休み時間ゼロ行進が続いている状況だと思う。

元来集団行動ができない性質で一人で物事を考えることが好きなのに、24時間365日誰かと一緒にいて常に話しかけられて返答しなければいけない状況というのは中々辛い。ゴールが見えないと言う状況はさらに辛い。

時折手は震えるし動悸はするし、メンタルの丈夫さには自信があったけど、残業と連勤で過労死したり自決する人の気持ちがちょっとだけ理解できるような気がする今日この頃なのである。もしかするとメルケル婆さんは私と同じ状況かもしれない。

www.bbc.com

メンタルが疲弊すると、驚くほど物事を考える力だとか判断する力が落ちて、自分の身の回りのことに無頓着になるというのは本当のようだ。日常生活のあらゆることが雑になっている。

出来ることなら何もかもから自由になって、誰とも会話せずOutlookの通知からも解放された風の音と波の音しかしない場所で少し休みたい。そして、気が晴れたらカメラを持ってどこかに行きたい。 

2019年上半期の写真を振り返る。

ペースを取り戻すべく少し前の自分を振り返っている。

振り返ってみて思ったんだけど、ありがたいことに2019年に入ってから5枚もin exploreに選んでもらっているらしい。今日時点で51枚ほどflickrに上げているのでこのペースは悪くない、と言うか今までで一番いいペースかもしれない。

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F.28/ARISTA Edu 100

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F.28/Fomapan 400

N0132019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F.28/ARISTA Edu 100

N0242019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F.28/Tmax 400

N0492019

LEICA M6/Elmarit 90mm F2.8/Fuji ACROS

N0442019

LEICA M6/Elmarit 90mm F2.8/Tri-X 400

  

違う景色を眺めるようにしたい

flickrに上げている写真はまま自信を持って出している筈なんだけど、振り返ってみてもどうにも面白くない。もしかしたら趣味嗜好が変わってきたのかもしれない。

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F.28/Fuji ACROS

正直な話、頭がバグってるこの状況で何が面白いのかさっぱりわかっていない。

焦れば焦るほどドツボに嵌っていくこともわかっているけれど、何かを変えなければならないと焦った数十秒後には急に無気力が頭と身体を支配する。そんな状況。

優しさが不足しています。

Elmarit 90mm F2.8は破格の良玉

初めて身銭を切って50mm単焦点レンズを使った日の事を覚えているだろうか。

私の場合はズームレンズがセットになったエントリー向けの一眼レフを買った数年後に、知り合いから投げ掛けられた「写真が上手くなるには単焦点が必要だよね」と云う言葉を素直に受け取って50mmのレンズを買いに走ったことが発端だった。

初めて買った交換レンズをマウントに取り付け、喜び勇んでいざファインダーを覗いた際に「うわ!狭いな!」と思い10歩近く後ろに下がったことを覚えている。あの頃は若かった。

One Sunday Afternoon.

Nikon D700/SIGMA 50mm F1.4 

改めて昔の写真を見直すと色々無理してる感があって面白いやら恥ずかしいやら。この写真も例に漏れず50mmを使った時の「間合い」が解ってない。何撮ろうとしたんだろう自分…。

90mm童貞を卒業した

先月のはじめに譲ってもらったElmarit 90mm F2.890mm童貞を卒業した。

気に入ったレンズを使い倒す性分であるため今まで50mm35mmばかり使っていたけれど、実はずっと気になって仕方がなかった90mmという画角。実はTele Elmarit 90mmとElmarit 90mmの間で散々悩んだ挙句、ご縁のあった後者を迎え入れることとした。

全長も短くモダンなスッキリした印象のTele Elmarit 90mmに対して、Elmarit 90mmは図体もでかくて取り回しも面倒臭そうだし、鏡筒の長さがあまりスマートじゃなくて敬遠していたレンズなんだけど、実際に使ってみたらあっと言う間に馴染んだのには驚いた。

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iPhone SE/VSCO preset B3 

90mmのレンズが気になったきっかけはソウル・ライターの”Early Color”と鈴木恂の”回廊”、”天幕”だった。いずれもジャンルはストリートスナップなのだけれど、時折望遠レンズで撮ったであろうストリートの写真があってとても興味深い。

 

 

ソウル・ライターは自身のインタビューでTelephoto lensを使ったと言っているし、一方の鈴木先生の場合も105mmで道路の反対側から路地を撮っていた(これは近い人から聞いたので多分間違いない)ようなのでどちらも90mmではないのだけれど、35mm28mmのレンズを通した「肉薄した」世界ではない、どこか当事者感の薄い世界の切り取り方に魅了されていたのである。

そんな彼らの影響もあって私はポートレートを撮るためではなく、社会や世相を切り撮るためのレンズとして90mmを入手した次第なのである。

予想以上に狭い90mm

M6Elmarit 90mmを着けてファインダーを覗いたら、初めて50mm単焦点レンズを使った時のことを思い出した。世界が遠い。超狭い。

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iPhone SE/VSCO Preset C1

ことレンジファインダー90mmを付けて世界を覗くと、これでもか!ってくらいにフレームが小さい。これで都市とか建築を相手に写真を撮っていた鈴木恂先生は偉大だなと思う。

Elmarit 90mm作例

残り数コマとなったACROSが入ったM6とこのレンズ、手元にあったTri-X 400Tmax 400を持って街撮りに出かけた。Tri-XとACROSはフォトラボオクダさんに現像をお願いし、Tmax 400は自宅で夜中にこっそり現像した。自宅現像の現像液はAdox Silvermax 現像液を使い、Silversaltさん推奨の要領で行った。

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LEICA M6/Elmarit-M 90mm F2.8/Tri-X 400

前々から聞いていた通り、繊細かつとても諧調豊かな写りである。人生初の90mmショットだったけど、いきなりflickrがexploreに入れてくれた一枚。幸先良しである。

 

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LEICA M6/Elmarit-M 90mm F2.8/Tmax 400 

まだ陽の明るい新橋の飲屋街。狭い路地で写真を撮るとこんな塩梅。

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LEICA M6/Elmarit-M 90mm F2.8/Fuji ACROS

ボケはなだらかで美しい。

Ken Rockwell爺さんによると開放のボケは煩くてダメらしいけど私はそんなことはないと思う。ただ開放時のピント合わせは非常に神経を使う。合ってるんだか外しているんだからよく解らない時が結構ある。

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LEICA M6/Elmarit-M 90mm F2.8/Tmax 400 

日差しの強い5月末の公園。 なんだか好きな一枚。

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LEICA M6/Elmarit-M 90mm F2.8/Tri-X 400 

夕暮れ時から夜の有楽町。このレンズを付けて夜の街歩きをするときはISO800くらい欲しい。絞りを開けると合ってるか外しているか分かりづらいしシャッタースピードを遅くするとブレそうだし。でもこの黒の締まり感はいいと思う。

Elmarit 90mm F2.8について

このレンズは1959年から1974年まで製造された90mmレンズの傑作。

製造された期間はちょうどLeitz社の黄金期にかかっており、鏡筒の作りや工作精度の高さ、作業の丁寧さは驚くほど高い。私のところに来た個体も製造から50年経過してるにも関わらず、堅牢かつ優美な作りで経年劣化も少ない。まるで工芸品のようなレンズと言ってよいと思う。

イカのオールドレンズの値上がりが激しい昨今、どういう訳かこのエルマリート90mmは値上がりの波から取り残されている気がする。マップカメラで5万円台ということは、他の中古屋さんだと4万円台で買えるかと思う。この写りからしたら破格。

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同じ画角のTele Elmarit 90mmはそこそこの値段になっているので、ぱっと見の不恰好さが人気薄の原因なのかもしれないが、この写りと工芸品のような作りの良さは買いではないだろうか。

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まったくの余談だけど、2014年頃の「行くぜ、東北」のCMでこのレンズを木村文乃が使っていたようだ。散々不格好だとか、見た目に難があるだとか書いたけど木村文乃が持つととてもバランスが良く見えてしまうのが悔しい。 

www.jreast.co.jp

写真フィルムとフィルム写真の将来に思いを巡らす

2週間ほど前に方々で話題になった富士フィルムのフィルム価格改定の件。

具体的にフィルムのどの材料が値上がりしているのか外野からは中々解りづらいけど、物流コストが増加しているのは職業柄肌で感じているだけに富士フィルムとしても苦渋の選択だったのではないかと思っている。

…が、それでも30%以上の値上げ幅にはちょいと驚かされた。値上げ幅40%とか尋常じゃない数字だと思う。

たとえ会社の方針だったとしても、客先に出向いて「来月から40%値上げしますので」なんてさらっと言える?とてもじゃないけど、怖くて私にゃ言えない。終業後にこっそりメール一本流して逃げるように帰ると思う。

aremo-koremo.hatenablog.com

フジがACROSの生産終了を決定しモノクロフィルムから撤退した際に、私の中では富士フィルムという会社は終わったので、頬杖つきながら対岸の火事を眺めている気分ではあるけれど、それでもプロビアとかProHが1800円程度になると聞かされると心中穏やかではない。 

N0452019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS

ACROSは本当にいいフィルムだった。さよなら富士フィルム

写真フィルムの将来って、やっぱり暗いんだと思う

ところで、富士フィルムが販売店に送っていたFAXに「ワールドワイドでの長期的な需要の減少により安定的な供給が困難になった」という一節があったんだけど、エクタクローム再販の際に「アナログ・ルネサンスは世界的な消費トレンド」とプレスリリースを出していた競合のコダックとの対比が面白い。フィルム市場に対するフジとコダックの温度差って結構あるなぁ、という印象を受けた。

wwwjp.kodak.com

私は写真フィルム業界の関係者ではないので、エラそうなことは言えないし憶測で無責任なことも書けないけれど、富士フィルムは医薬品事業に進出し、いまや業績絶好調な企業であることは誰の目にも明らかだし、写真フィルム事業は既に稼ぎ頭からは程遠い状況であることも間違いない。

昨今のアナログ回帰により短期的には需要は増えるけど、中長期的に見たときに写真フィルム事業に伸びしろはないし、いち民間企業としてフィルムを供給する道義的な責任もないしね。

実際は数年前にこのような経営判断はなされていて、今回の値上げも死に向かうフィルム事業が辿るひとつの通過点なんじゃないかな、と思う。

N0392019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS 

デジタルで撮ろうがフィルムで撮ろうが

ぶっちゃけた話、大多数の一般消費者にとって一枚の写真がフィルムで撮影されていようがデジタルで撮影されていようが、違いなんてどこにもないのである。

デジタルで撮ってVSCOなんかを通せばフィルム風に加工することはできるし、やもすれば結構いい感じの雰囲気でフィルムっぽい画像を作ってくれたりするので、「フィルム風の絵」が欲しいだけの人は引き続きデジタルを使っている方が賢明だ。

*1

N1212018

BESSA R3A/Summaron-M 35mm F2.8/Adox SCALA

N0232016

Fuji Xpro1/XF35mm F1.4/VSCO film package 4 Agfa Scala 

AdoxのScalaで撮った路地裏と、Xpro1で撮ってVSCOのScalaプリセットを通した2枚を並べてみた。VSCOのプリセットも雰囲気あって良いし、ハイライトが変にすっ飛んでいない限り、目を皿のようにして等倍で見比べないとどちらがフィルムかわからない。 

フィルム写真の未来

1990年代〜2000年代初頭のような状況はもう二度とこない。これはもう間違いのないことだと思うけれど、じゃあ写真フィルムは絶滅するかと問われたら、そんな未来もちょっと考えづらい。

実用的な消費財としての写真フィルムの価値はすでになくなったけれど、嗜好品としての写真フィルムと道楽としてのフィルム写真は残り続けると思う。

N0412019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fomapan 400  

自分の頭で考えてシャッターを切り、自分の手で現像し紙に焼くというプロセスはものづくりのプロセスそのもので、一度この深みにハマってしまうとデジタルで写真を撮ってディスプレイの上で写真を眺めることに物足りなさを覚えてしまう。

ものづくりが好きな人にとってはフィルム写真の方が絶対的に楽しいのである。この味をしめた人は、フィルムカメラがメインになる。きっとね。

個人的には、カメラやレンズを売る中古屋さんも大切だけど、フィルム写真の楽しさを伝えるワークショップも大切だよなと思っている。 道楽の伝道、承継みたいな。

もしかしたら向こう100年でフィルム写真は、茶道とか華道みたいな位置付けになるのかもしれない。まずはレンズとカメラをお互い褒めちぎり現像タンクを愛で、攪拌作業のお点前をどうたらこうたら…みたいな伝統芸能に進化しちゃったりして。

フィルムメーカーの将来像

専業フィルムメーカーは本当に大変だと思う。

コダックアラリスやアグファゲバルト、フォマボヘミア、イルフォードあたりはちゃんと安定した経営できているのだろうか。田舎のおっかさんじゃないけど心配でならない。フジみたいに業態を変えて脱皮すればいいんだろうけど、どこのフィルムメーカーだってフジみたいな大成功はそう易々とできない。

N0432019

LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fomapan 400 

そんな中にあって、Adoxはある意味フィルムメーカーの将来的な姿なんじゃないかと思っている。スモールブルワリーが作るクラフトビールのように、小バッチで高品質なフィルムを作り続ける小回りのきくメーカー。

事業撤退したり倒産したフィルムメーカーから製造設備を導入し、ノウハウを承継しつつ新しいフィルムを作り出していく姿勢はとても好感が持てる。 

www.yorocco-beer.com

www.adox.de

逗子のヨロッコビールのページとAdoxの工場設立のページを並べて眺めてみると、少量高品質のものづくりにかけるスタンスが似ているようにも見える。

フジのモノクロフィルム製造設備はどうなるんだろう

ちょっと前にフジがモノクロフィルムの新製品を出すんじゃないかと云うニュースが駆け巡ったけれど、あれは企画倒れに終わっちゃったのかもしれない。…となると、フジが持っていたモノクロフィルムの製造設備はどうなるんだろう。

解体して廃棄されちゃうのかな。もし減価償却も終わってるしあとは捨てるだけ…なんてことだったら譲ってもらえないかな。

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LEICA M6/Summaron-M 35mm F2.8/Fuji ACROS 

私一人では何もできないけれど、数人の同志を集めてクラウドファンディングを資金を集めて技術者共々事業を承継して…Adoxみたいな小さなビジネスができたら面白そうだと考えてるんだけど。

 

 

*1:注:Mac/PCで使えた旧来のVSCO filmは素晴らしい出来だったのに、残念ながら2019年2月でデスクトップ版は廃止となり以降はスマホ/タブレットのみ供給されている。