analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

ハレの日はカラーネガフィルム

春はあけぼのカラーネガ。

出会いと別れの季節をきちんと写真に残してあげるためにポートラを買った。

あっという間に価格が高騰し5本で18,800円というとんでもない価格なのでもう日本で買うことはできないけど、海外から調達すれば10本で160ドルほどで調達できるのでまだどうにか継続できる。まだ、どうにか。

高い高い文句を言うけど、ここ一番って時はフィルムで撮りたい。

最新のデジタルカメラで撮ってフィルム風フィルタをかけてもすっ飛んだハイライトやシャドウは復元できないし、かといってHDRで撮ってフィルタをかけ始めるとCGのようなファンタジーになってしまう。等倍まで広げた時にディテールがきっちりしているのもちょっと、ね。

ディスプレイでしか見れない写真とかデータが破損したら永久に失われる写真もなんだか嫌だ。現物としてのネガやプリントが手元にあってほしいし、手に取れる形で長く残っていてほしい。

大切な写真なら尚更。

イカにポートラを詰める。本当に久しぶりだ。

もう2年くらいモノクロフィルムばかり使っていたので本当に久しぶりのカラーネガフィルム。価格にびびって普段使いから遠のいていたがハレの日はカラーネガを使いたい。3月から5月くらいまでは出会いと別れと、楽しいことにうっすら憂鬱が霞のようにかかった季節だから。

話は少し脱線。

ここまでの3枚の写真はGRIIIにネガフィルム調フィルタをかけて撮った写真だ。ハイライトが飛んじゃうと途端にデジタルっぽくなるけど、極端に明るくない場所ならとても雰囲気のある写真が撮れる。

個人的にGRIIIのカラーネガフィルタは侮れないと思うんだけどどうだろう?

 

過去写真からポートラ400の作例をいくつか。

こうやってポートラ400の写真を眺めているとデジタルとカラーネガフィルムの写真はそもそも別物なんだって思える。

デジタルとフィルムの決定的な違い。それはフィルムにはたくさんの白が写ることと明確な黒が存在しないことだ。

カラーネガで撮った雲の色やバイクの白、ペンキで塗られた柵の白はどれも違うし、同じ白の中にも豊富なグラデーションが映り込んでいる。当たり前だけどフィルムカメラはホワイトバランスを勝手に調整してくれないので、自然光のかたちがそのまま白の調子に反映され、より魅力的なグラデーションを描き出している。

白と同様にカラーネガが作る黒も独特だ。カラーネガフィルムにはそもそも黒という概念がない。

カラーネガに黒がないと聞くと一瞬不思議な印象を持つけれど、カラーネガフィルムにはイエロー、マゼンタ、シアンの感光層はあっても黒の層はない。だから黒に見えた暗がりもよく見るとあらゆる色が混じった混沌として表現される。

巷で耳にする「フィルムはハイライトと暗部が粘る」というのは、ハイライトとシャドウにこの3つの色のどれかがしつこく残ったことでグラデーションが生まれるということなのだろう。

僕らはこの曖昧な色の隙間に思い出を埋め込んでいるのだ。ノスタルジーという表現で安直に括られる何かではない大切なものを。だからこそ、ハレの日はカラーネガフィルムで残しておきたい。