analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

光の粒をとらえるシネマフィルム

最近長巻フィルムを使う人が増えてきた気がする。

世の中的にはフィルムで写真撮ってる人なんて超少数派だしモノクロフィルムで写真撮ってる人なんてもはや絶滅危惧種として保護してほしいくらい少ないので、フィルムローダーを買って長巻デビューした人が増えてきたと言っても僕が見聞きする範囲の超絶狭い世界の話なんだけど、この小さな世界では長巻がちょっとしたトレンドになっていると思う。

ほんの3,4年前まで¥890だったKodak Tri-Xが1本¥2,900まで高騰したのはどうにも解せないし既に消費財の価格として常軌を逸しているので、肝の座ったモノクロフィルム愛好家がフィルムローダーを買って長巻を詰め直す方向に進むのは当然の流れだろう。富士フィルムもアラリスもビジネス続ける気がないようなので仕方ない。

ある寒い雨の朝、Eastman Kodak DoubleXが届いた。

このフィルムは映画用のフィルムだけど、カートリッジに詰めてしまえばなんの問題もなくカメラに装填して使える。400ftを100ftずつに小分けするのに若干手間がかかるとはいえ普通に使っていたら1年は使える量だし1本あたり700円程度とお安い。そしていかにもフィルムらしい美しいトーンとコントラストと適度なざらつきが素晴らしく、ずっとこのフィルムばっかり使ってる。

過去を振り返ってみればかの小津安二郎監督だって映画用のフィルムをライカに詰めて撮っていたのだ。

時代が一周したのか僕が壮大に周回遅れになっているのかわからないけど、このまま行くと写真用のフィルムメーカーは自滅して市場から退場し、フィルム写真愛好家は昔みたいにシネフィルムを流用して写真を撮るようになるのかもしれない。

Eastman Kodak DoubleXの作例をいくつか。

なにかの間違いでこのblogを訪れた人もせっかくなので作例を見ていってほしい。普段デジタルでしか撮らないよって人も、ほんの数枚なので見ていってほしい。

手前味噌だけどフィルム写真って良くない?シネフィルムいいよね?ね?

1950年代の設計のフィルムだけど最新の現像液を使っていることもあって古臭さだとか懐古趣味みたいなのは取り除けていると思う。むしろ雲とガラスの質感だとか波に反射する光を捉えるのはフィルムのほうがいいと思う。見事としか言えない。写真とは光の粒子を捉えることなのだ。

拡大して眺めたらそりゃデジカメの方が精細だけど、そもそも写真って拡大してピクセルの粒を鑑賞するものじゃないから。ピクセル等倍にして「うぉーすげー!」ってやるのはメーカーのマーケティングにまんまとハマって消費してるだけだから。

写真用のフィルム市場が値上げのやりすぎと撤退で急変したけどKodakのシネフィルムはまだまだ現役のようで、映画撮影の現場で大量に消費してくれているおかげで僕たちもこの高品質なフィルムを安く使える恩恵にあずかれている。

「いいじゃん、フィルム」ってちょっとでも感じたらぜひ始めてみてほしい。