analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

自宅暗室を作っている話

始まりは額縁を作ったところから。

アフリカ産のとあるハードウッドが手に入ったので試しに額縁を作ってみたらとても良い質感に仕上がったので勢い余って5セット分の額縁を製作した。

バライタ紙に写真を焼き作った額縁に収めてみたら想像以上に良く合っていたので、追加でさらに5セット分の製作に取り掛かっている。

計10セットも額縁作ってどうすんだと思ったけど、木工楽しいもんね。止まらない。

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Nikon D700/Nikkor 58mm 1.4G/VSCO Film 04 Astia

展覧会や展示を指南する本やHPを見ると、写真を引き立てるためにシンプルな額を…なんて書いてあるけど、その考えは間違っていると私はぼんやり思う。

額縁は壁に穿たれた建具のようなものなので、写真の世界と現実の壁の間をきちんと区切る「けじめ」を持ったものでなければならないのだから。

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Nikon D700/Nikkor 58mm 1.4G/VSCO Film 04 Astia

日頃から撮っている海辺の風景シリーズをこの額縁に収めているのだけど、手前味噌ながらとても良い。

木栓の位置がちょっとずれてしまっているけど、そこは次の5セットできちんと処理するとして…ここまではなかなかいい出来だと思っている。

きちんとプリントした写真を丁寧に作った額縁に入れて壁に飾るのはとても良い。

 

ディスプレイの限界

ちょっと前まで言われていた「電子書籍が紙の雑誌を駆逐する未来」が実現した気配はなく、紙の冊子と電子書籍の棲み分けが出来てきたような気がする。最近。

両者はどちらが優れているということではなく、共に同じコンテンツを供するものでありながらそもそも用途が別物なのではないだろうか。

電子書籍は短時間で流し読みができ必要な時に内容を検索できる利便性がある一方で、目に掛かる負担が大きいのでKindleみたいなe-Ink端末を除けば長時間の読書は難しい。

紙媒体の書籍は経年劣化で傷むしそもそも検索なんてできないものの、長時間の読書でも疲れないし物語の世界への没入感は電子書籍では味わえないものだと思う。

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Nikon D700/Nikkor 58mm 1.4G/VSCO Film 04 Astia

結局、電子書籍は紙媒体を包含するものにはならなかった。ディスプレイは魔法の紙ではなく、旧来の紙で作られた本と電子の本は別物なのだ。

写真だって紙がいい

額縁を指でなぞりながら額縁に収めた写真を眺めていると、ディスプレイに映される写真はやはり別物なのではないかと思う。

そもそもディスプレイを飾る…なんてことはできないし、タブレットで雑誌を読むのと同様に長時間ひとつの写真を鑑賞するにはあまり向いていない。ディスプレイに映す用途の写真はネットに放流して知らない誰かに見てもらうためだけにある訳で、言ってみればただの試供品みたいなものだ。

一度きちんと額装して写真を眺めてみると、PCやタブレットのディスプレイの枠の中に収められた写真は恐ろしく安っぽく見える。

活字の本ならe-inkで読み続けることができるけど、雑誌や写真集を電子書籍で読むのがとても疲れるのと同様でこれらのコンテンツはやはり紙媒体の独壇場なのではないか。

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Nikon D700/Nikkor 58mm 1.4G/VSCO Film 04 Astia

暗室を作っている

随分と話が遠回りしたけど、きちんと納得できるプリントを作るためにも自宅暗室を作っている。

いま思えば額縁の製作が発端だったのだけど、引き伸ばし機本体をお譲り頂けたり不足していたパーツがとんとん拍子で転がり込んできた状況を振り返ると、自宅プリントを始める運命だったかのように追い風に乗って物事が進んでいる。

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Nikon D700/Nikkor 58mm 1.4G/VSCO Film 04 Astia
忙しい日々の時間を縫い合わせて、穴の開いた財布からどうにか資金を捻出してチマチマと暗室をセットアップしている。

年末までに間に合えばいいんだけど。

この記事の中で使ったフィルム&機材

Kindle Paperwhite

タブレットのディスプレイを眺め続けるのは間違いなく苦行だけど、電子書籍がまったくダメというわけではなく、e-inkを採用したKindleは素晴らしいプロダクトだと思う。

電池の持ちも良いし何よりかばんに雑に放り込んでいても壊れない丈夫さがよい。軽いのも良い。読む対象が活字の本だけならKindle Paperwhiteはなくてはならないプロダクト。

Nikkor 58mm F1.4G

中々値崩れしないニコンの名作単焦点レンズ。

デジタル一眼レフのDシリーズからミラーレスのZシリーズに時代は移行しているけど、電子書籍と同様にファインダーは従来の一眼のものの方が疲れない。

開ければ芯がありつつフワッと、絞ればキリッと決まるスペックに現れない良さを持つ銘玉。