analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

2023-01-01から1年間の記事一覧

平山さんに会いたい

エンドロールが終わって最後のカットを眺めた後、架空の存在であるはずの平山にもう一度会いたくなった。 無口で愛想もなく、気の利いたことを言えるわけでもない一人の地味な架空の男がひょっとしたら身近にいるかもしれない。そんなリアリズムと期待を胸に…

今月のあとがき: 2023年12月

2023年も残すところあと僅か。 ブログの記事にする程ではなかった小さな話を書き綴る「今月のあとがき」の2回目。まとまりの無い思考の断片、見聞きしたあれやこれやの感想。カレーも豚汁も鍋底に残った具の残骸が一番美味しいのだ。 「ありがとう」と「ごめ…

静かな時間

12月も半ばを過ぎると次第に時間の流れが遅くなっていく。 見切り発車ならぬなんちゃってゴールと言うか、もうこれで終わったことにしない?年末だからいいよね?ね?みたいな感があちらこちらにあって、急に優しい社会がこの世界に実現したのではないかと思…

東京点景

まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のよう。 シネマフィルムを手に入れてからと言うもの、朝出かける前にフィルムを詰めてあちこちで写真を撮っては夜な夜な現象している。 もちろん働かなければいけないので仕事の合間だとか移動の際に写真を撮っている…

新宿シネマフィルム

10年くらい前まで新宿の民をやってまして。 正確には高円寺の民だったので新宿のど真ん中に住んでたわけではないんだけど、仕事も遊びも食事も買い物も新宿だったし学校も新宿区だったので、新宿の民と表現しても怒られないだろう。 その後の人生サーフィン…

インディゴと紙のラベル

手持ちのデニムがくたびれてきたので、新しいデニムパンツを買った。 インディゴブルーのザラザラした触り心地のデニムは、いつの時代も男子の心を掴んで離さない。退屈な社会に拘束された都市生活者から自由を満喫する一人の人間に戻るために必要な服なのだ…

今月のあとがき: 2023年11月

本の最後に添えられる「あとがき」が好きだ。 読了した満足感や高揚感、腑に落ちない問題提起で終わってしまったルポルタージュでも不協和音めいたエッセイでも最後に添えられるあとがきはデザートのようでもあり、読み手をそっと受け入れ本文が書かれた時代…

ニューシネマフォトグラフィ

遂にシネマフィルムで写真を撮る環境が整った。 週末の早朝に届いた梱包箱を開けると、ピザボックスのようなパッケージに収められた金色の丸い缶が現れた。400フィート巻のシネマフィルム、VISION3が我が家に到着したのだ。 気分は映画フィルムの切れ端をつ…

海をあるいて帰ろう

仕事を片付けたふりをして電車の中で寝落ちしたのだと自分に嘯いて乗り過ごし、夕暮れの海を眺めてから帰る。 そういえば僕が小さい頃は軽トラックの助手席に乗せられて海によく連れて行かれた。配達帰りの昼下がりに畑道を抜けて、砂浜のちょっと手前で止め…

60年に1度開催される洪鐘祭に行ってきた

円覚寺の洪鐘弁天大祭を見るために北鎌倉まで足を伸ばした。 この祭事は円覚寺の国宝である洪鐘(おおがね)の鋳造を祝うものでなんと開催間隔が60年に1度という超長スパン。おそらく僕は60年後に生きてはいないだろうしせっかくの機会なので前回の洪鐘祭(1…

ブログの方針転換

数ヶ月前から悩んでいたことなのだけど、自分で書いているブログなのに改めて読み直してみると面白くない。 数分にわたる熟考の結果、数十あったこのブログのカテゴリをばっさり削除し機材レビューっぽい記事や理屈っぽい記事をバックヤードに押し込んだ。 …

Lomography CN400を使ってみた

LOMOGRAPHYが中判フィルムをまさかの値下げをした話の続き。 ロモというとトイカメラ風というかレトロ調に転んだ色と粒状感の強い写真の印象が強くてずっと敬遠してきたんだけど、今回の値下げを機にLOMOGRAPHY CN400を2本買ってお試ししたらとてもカラーネ…

ボタンフライのブラックデニムを探す旅

去年買った無印良品のブラックデニムが早くもヘタってしまった。 これは無印良品がダメなのではなく、夏が過ぎると毎日のようにブラックデニムを履いてカメラをぶら下げひたすら長い距離を歩く僕の生活に無印良品のパンツが負けてしまったのだと思う。2本買…

おいでよ、中判フィルムの世界。

タイムラインに流れてきたLOMOGRAPHYのリリースに我が目を疑った。なんと中判フィルムの「値下げ」なのだ。何度見直してもそこには値上げの文字はない。本当に値下げなのだ。 僕たちフィルムユーザーは毎年のように釣り上げられるフィルム価格に落胆し、暗い…

うつくしき晩夏の浜辺

にっぽんの夏、地獄の夏がようやく去る。長く苦しい2023年の夏がやっと終わった。今年の暑さと湿度は本当に本当に…辛く、そして長かった。 6月の終わり頃から3ヶ月以上も地獄のような日々が続いたのだ。あまりの長い夏に食欲がなくなり子供の頃以来初めてあ…

フィルム風に仕上げるフィルターの話

あまりにもコストが高すぎてカラーネガフィルムで写真を撮るのは無理だ。 そう誓って(言い訳して)GRIIIを買った筈なのに、気が付けばカラーネガの色乗りのよさと表現力を手放すことができずにずるずると買い続けている。あまりにも高いから最近は使う前に…

IPA2023から賞を頂きました

International Photo AwardからHonarable Mentionを頂きました。 これは3等に次ぐ佳作の位置付けとのこと。選外に放り出されなくてよかった気持ちとあわよくばもうちょっと行けたんじゃないかという気持ちがほんのり残っているものの賞を頂けたことは純粋に…

フィルムに残された夏休みの思い出

なつやすみの思い出をHASSELBLAD 907Xで撮った記事の続き。 今年の夏休みは久しぶりにデジタルを持ち出してあちこちぶらぶらしていたけど、もちろんフィルムカメラも連れ出していた。ようやく現像が終わったのでカラーネガフィルムに記録された今年の夏休み…

週末のラジオがおもしろい

ラジオが好きだ。 芸人同士のいじり合いもなければ年寄りの政治論争もないし、画面を通してセットの安っぽさを感じることもないし同調を強いるようなテロップの垂れ流しもない。楽しく喋ってますから気になったら耳を傾けてくださいね、みたいなお気になさら…

暑がりの僕は無印良品の布帛Tシャツにいたく感動した

無印良品が作っている布帛(ふはく)Tシャツにいたく感動したので、感動の熱があるうちに書き残しておきたい。今日リピート買いに走ったらセール価格になっていて在庫僅かになってしまっていた。まだ今年の夏は終わってないのに。 布帛と書いて「ふはく」と…

なつやすみの思い出

ダムダムダム…ダムダム…ガコン…ザッ…ダムダムダムダム…ガッコン… ベッドに寝転がっていたら近所の子供がバスケットの練習をする音を遠くに聞きながら眠りに落ちていたらしい。リズム感のある音の反復は眠りの入り口だ。目を覚ますとリビングからは朝ごはんの…

Tivoli PALを室内アンテナにつなげた話

このブログで何度もいいぞいいぞと言っているTivoli PALのアンテナが折れた。 2度ほど机から落ちた(落とされた)際の当たりどころがいずれも悪かったらしく、アンテナの角度を変えようとしたらポッキリ折れてしまった。この小さなラジオはポップな見た目と…

なんでもないある夏の日の写真

幾つ歳をとってもこの季節は苦手だ。 寝苦しい暑さの中で扇風機が部屋の空気を細切れにする音を聞きながらウトウトと眠りに落ちたかと思えば、窓から差し込む日差しが強引に眠りから引き戻す。「美しい日本の夏」なんて言う人が数年前にいたけど最近あまりこ…

B&Hで売っているUSEDフィルムを買ってみた

フィルム代についてジョセフ・クーデルカは以下のように語っている。 If I couldn’t shoot lots of photos, I would not be the photographer that I am. Still, the cost of film has often been a problem. At times, to save money, I had to work with r…

夏の海辺には歳の数だけ思い出があるのかもしれない

2023年の夏がはじまる。 人生で何十回も日本の夏を経験しているというのに一向に飽きない。子供の頃はただただ楽しかった夏が10代の後半になるとうっすらとメランコリーな、憂いの影を帯びた夏になり、20代のはじめの夏は社会が押し付けた理不尽な拘束着と汗…

PORTRA 400の最安値を見つけたかもしれない

フィルムの値上がりも凄いがドル円のレートも極悪なこの数ヶ月。 PORTRA 400を量販店で買うと¥18,800もするので仕方なくB&Hで買ってたんだけど、ドル円が140円を超えてきたため全然割安感がない…。これを書いている時点でのドル円のレートは1$=143.7円。B&H…

おしらせ

このブログのデザインを変更したので過去の記事も見直してみた。 あまり記事としての価値がないものを取り下げることでわずかだけどブログの質が上がったと思うんだけど、フィルム写真やアナログ生活を綴るブログにしては随分と理屈っぽい文章を書いていたこ…

カラーネガフィルムに帰る

もうカラーネガはダメだ、あの値上がりに付いていけない! そう思い2021年の初旬にHASSELBLAD 907xを買いカラーはそちらに全て集約することにした。 その後カラーネガの供給不足が起こり、もう一段値上がりが起きてポートラ400の国内価格は5本で¥18,800とい…

大きな子供のように生きている

明日でまた歳をひとつ重なることになるのだけど、今までの人生を振り返ってみると「ぼんやりしていたら大人になってしまった」ということに尽きる。 今年のこどもの日は小さな子供の手を引いて結婚式に出席していた。周囲にも小さな子供がたくさんいて、あぁ…

切り替えができない

デニムパンツを裏返し、洗濯機に放り込んだ。 まさかの9連休となった今年のゴールデンウィークも今日でおしまい。こんなにまとめて休めたのは何年ぶりだろう。 この連休中は組織の中での言葉遣いを捨て当たり障りのない服をクローゼットに押し込んで、Tシャ…