analogue life

フィルムが捉える世界は美しかった

次の停車駅は35mm沼前。

「お降りになるお客様はお手元のブザーを押してください…」と云う声がどこからともなく頭の中をよぎった。

 

50mm沼地顛末記

数年前にふと出来心で50mm沼で下車して遊んでいたら、思いの外ノンビリ過ごし過ぎてしまったのである。車窓から眺める50mm沼はなんてことないただの浅い水たまりだったのに、いざ片足を突っ込んでみたらその沼は魔物の棲む底なし沼だった。

手始めにうっかり手を出したのがSIGMA 50mm 1.4(旧型)。出来心で掴んでしまったDP2(41mmだけど)。前後ボケがたまらんNikkor 58mm 1.4。おかえりSIGMA 50mm 1.4(新型)。Fujinon XF 35mm 1.4(換算50mm)…などなど50mmばかり何本買えば気が済むのあなた状態の僕の50mm病に終止符を打ってくれたのがSummicron-M 50mm F2。

この、小さくも恐ろしく解像する上品なレンズに入れ込みすぎて、とんと出番のなくなったSIGMA 50mm 1.4(旧型)にはびっしりカビが生えていたほど…(海辺の街の湿気を侮ってはいけなかった)。

しかし、熱病なんてものはいつか冷めるもので、ふと我に返って冷静にレンズを整理してみたら最後に残ったのはNikkor 58mmとSummicron-M 50mmだった。解像度はじめ数字のスペックを売りにしているレンズというのはどうしても飽きるのである。やはりレンズは使っていて気持ちいいかどうか、ということが大切なのである。

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ファインダーが変わったら見えるものが変わると云う当たり前の話

かくして50mm沼から無事抜け出すことができて早1年。レンズ熱はもう冷めたと思ってた矢先に35mm沼停留所があるとは思ってもいなかった。50mm付けっ放しの一眼からレンジファインダーにカメラを変えたら、今まで人や物ばかりだった写真のテーマが、街や人、時代とストリート…なんて感じに物事同士の関係性へと、自分の興味を巻き込んでころっと変わった。

一眼からレンジファインダーへの切り替えは本当に凄い変化で、アラーキー曰く「カメラを変えれば写真が変わる」ってのは本当だったのだが、写真のテーマが変わればレンズも変わる訳で、折良く35mm沼停留所が目の前に現れたという訳だ。

 

とりあえず、お手元のブザーを押すことにした。

前置きが長くなったが、このような理由で35mmを一本探している。要求は取り回しが楽なこと、毎日持ち出すのに躊躇しなくてよくて、そこそこちゃんと写ること。汚ボケは嫌だけど、ボケ味や解像度の良さはすぐ飽きるので、作例を眺めて触ってみて納得すればよしとする。

…と云う訳で、候補に上がってきたのがVoigtlander ULTRON 35mm F1.7。このレンズはなんと0.5mまで寄れる。レンジファインダーは寄れない…なんて固定観念を打ち抜く仕様。ボケるし寄れるし解像するし、持っていて損はないレンズの要素は満たしている…のだが、現物を見てそのデカさと仰々しいデザインに激萎えした。

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取り回しが楽で毎日持ち歩けて…という観点から急浮上したのが1959年発表のSummaron 35mm 2.8/3.5。モノクローム専用レンズかと思っていたら、カラーでも全然いい感じ。むしろ好き。

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ところが、Summicronの陰に隠れた優秀オールドレンズ。コスパも良い…というSummaron評は数年前の話で、委託品として店頭に並んでる状態のよいSummaronは現行Summicronとあんまり値段が変わらない…ということは、ローン組んでSummicron新品買っちゃえばいいじゃん!

 

35mm沼だと思っていた停留所はライカ沼停留所だった。

気がついたら電卓を叩いている。税込表示価格を48で割っている。そして気がついたらレモン社で時間を潰していて、マップカメラのショーケースを眺めていた。確かに35mmを探しているのだが、目当てはSummaronかSummicronかSummaritか。

おそらく数日後には私もライカ沼の住人になることかと思われる。