analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

癒しメディアとしてのラジオ 

まだ薄暗さが残る午前6時、半分夢の中にいる僕はベッドサイドに置いたラジオを手探りで探す。 スイッチをひねると1秒ほどの間を置いてスピーカーから賑やかな話し声が聞こえてきたのでダイヤルを掴んで周波数を落としていく。 89MHz...…話し声がノイズに変わ…

早春とフィルム写真

カラーネガフィルムとはなんとも不思議なメディアで、その季節の陽光だとか湿度が写真に乗ってくるような気がする。 冬の写真は暗くかさついているし春の写真は霞がかって見える。夏の写真は湿度100%に近い空間を貫いてくる強い太陽光がフィルムの乳剤面に記…

今月のあとがき: 2024年2月

季節外れの生温い気温の昼、都内の高層ビルの窓際に座りコーヒーを注文した。 鉛色の空を眺めながらあっという間にすっ飛んでいった2月に思いを馳せ、記憶をひっくり返してみても今月は仕事していたことくらいしか思い出せない。毎年この季節って新年の仕事…

文章は短く粒度は荒めに

文章を書くのってむつかしい。 最近文章を書くことがすごく楽しいんだけど、それでも言いたいことを丁寧にまとめてわかりやすい言葉で整えることができず、言葉にならないモヤモヤだとか形を与えられない思いに手を焼いているうちに、それらの思いは日々の時…

社会の窓は8.3インチ

閉店間際のApple Storeに駆け込みiPad miniを買ってきた。 そろそろマイナーチェンジの時期かもしれないというルーマーサイトのご意見なんて気にせず1nmのためらいもなく、スッとカードを出したらサッと商品が裏から出てきて10分で会計が終了し銀座の夜に飛…

ECN-2自家現像について

カラーネガフィルムがあまりにも高額商品になってしまったため400ftのシネフィルムを購入しカラーネガ自家現像に踏み切ったのが去年のこと。あれから半年くらいKodak Vision3の自家現像を繰り返す中でわかってきたことがあるので、恥ずかしながら失敗写真と…

Lightroom卒業のススメ

先日Adobe Creative Cloudが値上げされ、Lightroomの維持費が月額1,180円になった。 月額1,180円とはいえ年間でLightroomに14,080円も払うとなると馬鹿にできない出費だし、将来的にAdobeが少しづつ価格を引き上げてくることは容易に想像できるので、少し前…

数年ぶりの降雪とはしゃぎ回る子供の声と

あのね、首都圏に住む僕たちにとって雪は数年に一度のアトラクションなの。 だから降雪を喜ぶなんて不謹慎!とか交通機関で大混乱が起きたらどうするんだ!なんて怒鳴り込んでこないでね。 ぼんやりネットを見ていたら首都圏に大雪が降り電車が止まったり行…

今月のあとがき: 2024年1月

みんな一年よく頑張ったねって肩を抱き合うような優しさに溢れた年末から急転直下で「さぁ、今年も正しく生きましょう!まずは目標から!」みたいな正月の手のひら返しが凄く苦手で、急に日本社会の理不尽さが春の海と共に入場してくるこの感じは何度経験し…

休みを告げられる心の準備はできていた

朝起きて「あぁ今日も仕事だ、嫌だなぁ」と眠い目を擦っていたら急に休みになる…なんてことがあるとしたら業績不振か何かで突然人員整理されることくらいしか思いつかないので、もし明日急に休みになったらどうする?なんて考えると一瞬胸踊るが心中穏やかで…

SilverFast 9はGT-X 980を最高のスキャナにする

ちょっと出来心でSilverFast 9を試してみたらうっかり買ってしまった話。 元々35mフィルムはPlustekのスキャナとSilverFast 8の組み合わせでスキャンしていて、中判フィルムのためだけにEPSONのGT-X 980を併用していた。 EPSONのスキャナーに付属するソフト…

スロウで優しい

毎年のことだけど1月は仕事のスイッチが入らない。 やっと仕事モードに入ったかと思えば急にエンスト起こしちゃったりして。その度にどうにか仕切り直しを図るんだけどまたすぐに切れちゃう。コーヒーを飲んでもお茶を飲んでもだめ、うっかり酒でも飲んだら…

捨てると止める

今年の行動指針は捨てると止める。 このブログでも紹介したジョナサン・マレシック著「なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか」の中で引用されている「雑用の渋滞」という概念をもう一度振り返ってみると、ここ数年の僕は子育てと仕事に忙殺されて明らかに雑用が…

平山さんに会いたい

エンドロールが終わって最後のカットを眺めた後、架空の存在であるはずの平山にもう一度会いたくなった。 無口で愛想もなく、気の利いたことを言えるわけでもない一人の地味な架空の男がひょっとしたら身近にいるかもしれない。そんなリアリズムと期待を胸に…

今月のあとがき: 2023年12月

2023年も残すところあと僅か。 ブログの記事にする程ではなかった小さな話を書き綴る「今月のあとがき」の2回目。まとまりの無い思考の断片、見聞きしたあれやこれやの感想。カレーも豚汁も鍋底に残った具の残骸が一番美味しいのだ。 「ありがとう」と「ごめ…

静かな時間

12月も半ばを過ぎると次第に時間の流れが遅くなっていく。 見切り発車ならぬなんちゃってゴールと言うか、もうこれで終わったことにしない?年末だからいいよね?ね?みたいな感があちらこちらにあって、急に優しい社会がこの世界に実現したのではないかと思…

東京点景

まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のよう。 シネマフィルムを手に入れてからと言うもの、朝出かける前にフィルムを詰めてあちこちで写真を撮っては夜な夜な現象している。 もちろん働かなければいけないので仕事の合間だとか移動の際に写真を撮っている…

新宿シネマフィルム

10年くらい前まで新宿の民をやってまして。 正確には高円寺の民だったので新宿のど真ん中に住んでたわけではないんだけど、仕事も遊びも食事も買い物も新宿だったし学校も新宿区だったので、新宿の民と表現しても怒られないだろう。 その後の人生サーフィン…

インディゴと紙のラベル

手持ちのデニムがくたびれてきたので、新しいデニムパンツを買った。 インディゴブルーのザラザラした触り心地のデニムは、いつの時代も男子の心を掴んで離さない。退屈な社会に拘束された都市生活者から自由を満喫する一人の人間に戻るために必要な服なのだ…

今月のあとがき: 2023年11月

本の最後に添えられる「あとがき」が好きだ。 読了した満足感や高揚感、腑に落ちない問題提起で終わってしまったルポルタージュでも不協和音めいたエッセイでも最後に添えられるあとがきはデザートのようでもあり、読み手をそっと受け入れ本文が書かれた時代…

ニューシネマフォトグラフィ

遂にシネマフィルムで写真を撮る環境が整った。 週末の早朝に届いた梱包箱を開けると、ピザボックスのようなパッケージに収められた金色の丸い缶が現れた。400フィート巻のシネマフィルム、VISION3が我が家に到着したのだ。 気分は映画フィルムの切れ端をつ…

海をあるいて帰ろう

仕事を片付けたふりをして電車の中で寝落ちしたのだと自分に嘯いて乗り過ごし、夕暮れの海を眺めてから帰る。 そういえば僕が小さい頃は軽トラックの助手席に乗せられて海によく連れて行かれた。配達帰りの昼下がりに畑道を抜けて、砂浜のちょっと手前で止め…

60年に1度開催される洪鐘祭に行ってきた

円覚寺の洪鐘弁天大祭を見るために北鎌倉まで足を伸ばした。 この祭事は円覚寺の国宝である洪鐘(おおがね)の鋳造を祝うものでなんと開催間隔が60年に1度という超長スパン。おそらく僕は60年後に生きてはいないだろうしせっかくの機会なので前回の洪鐘祭(1…

ブログの方針転換

数ヶ月前から悩んでいたことなのだけど、自分で書いているブログなのに改めて読み直してみると面白くない。 数分にわたる熟考の結果、数十あったこのブログのカテゴリをばっさり削除し機材レビューっぽい記事や理屈っぽい記事をバックヤードに押し込んだ。 …

Lomography CN400を使ってみた

LOMOGRAPHYが中判フィルムをまさかの値下げをした話の続き。 ロモというとトイカメラ風というかレトロ調に転んだ色と粒状感の強い写真の印象が強くてずっと敬遠してきたんだけど、今回の値下げを機にLOMOGRAPHY CN400を2本買ってお試ししたらとてもカラーネ…

ボタンフライのブラックデニムを探す旅

去年買った無印良品のブラックデニムが早くもヘタってしまった。 これは無印良品がダメなのではなく、夏が過ぎると毎日のようにブラックデニムを履いてカメラをぶら下げひたすら長い距離を歩く僕の生活に無印良品のパンツが負けてしまったのだと思う。2本買…

おいでよ、中判フィルムの世界。

タイムラインに流れてきたLOMOGRAPHYのリリースに我が目を疑った。なんと中判フィルムの「値下げ」なのだ。何度見直してもそこには値上げの文字はない。本当に値下げなのだ。 僕たちフィルムユーザーは毎年のように釣り上げられるフィルム価格に落胆し、暗い…

うつくしき晩夏の浜辺

にっぽんの夏、地獄の夏がようやく去る。長く苦しい2023年の夏がやっと終わった。今年の暑さと湿度は本当に本当に…辛く、そして長かった。 6月の終わり頃から3ヶ月以上も地獄のような日々が続いたのだ。あまりの長い夏に食欲がなくなり子供の頃以来初めてあ…

フィルム風に仕上げるフィルターの話

あまりにもコストが高すぎてカラーネガフィルムで写真を撮るのは無理だ。 そう誓って(言い訳して)GRIIIを買った筈なのに、気が付けばカラーネガの色乗りのよさと表現力を手放すことができずにずるずると買い続けている。あまりにも高いから最近は使う前に…

IPA2023から賞を頂きました

International Photo AwardからHonarable Mentionを頂きました。 これは3等に次ぐ佳作の位置付けとのこと。選外に放り出されなくてよかった気持ちとあわよくばもうちょっと行けたんじゃないかという気持ちがほんのり残っているものの賞を頂けたことは純粋に…