analogue life

シンプルな暮らしとフィルム写真のこと

2019年のフィルム家計簿

早いもので今年も残すところあと僅か。
フィルムが足りなくなると近所のお店で1本ずつ買っては装填する…といったサイクルでフィルム写真と向き合ってきたのだが、フィルムやら現像やらにかかる費用をざっくり集計してみたら、私のコスト感覚が随分とドンブリ勘定であることに気づいたのが2018年の暮れ。

このままじゃいかんと一念発起し2019年に使うフイルムをB&Hで大人買いし、1月からきちんと家計簿をつけてきた。2019年も終わりに差し掛かってきたので、そろそろフィルム家計簿を集計してみようと思う。

filmmer.hatenablog.com

まずは結論から

今年使ったフィルムは65本。

例年通りカラーネガはほぼPortra400一択である一方モノクロは節操なく色々使っている。今年はACROSが終売するということもあって、一時期冷蔵庫の中はACROSが詰め込まれすぎており、気がつけばバターやら梅干しを置く場所まで進出していた。

filmmer.hatenablog.com

今思えばよく嫁から折檻されなかったなと思う。

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EPSON GT-X 980の良いところと致命的な点について

中判フィルム写真を始めた時におそらくぶつかるであろう壁のひとつがスキャナーだと思う。

HASSELBLADのFlextightはいつの間にか製造終わってしまったしPlustek社製のOpticfilm120は作ってるんだか廃番になっているのかわからない状況。おそらく一番手が出しやすいと思われるPacific Image社のブローニーフィルムスキャナーでも12万円もする上に解像度は3600dpi止まりなのでちょっと物足りなさを感じる。

 

結論から言うとこの記事を書いている時点で中判フィルムをスキャンする現実的な選択肢はEPSON GT-X 980しかない。

この機種はフラットベッドスキャナーなのでドキュメントスキャンのついでにフィルムスキャンもできる機種だ。フィルム専用スキャナではないので構造上どうしても画質が甘いと聞いていたのだが背に腹は替えられずに購入したのでインプレッションを綴ってみようと思う。

おそらく多くの方が僕と同じようにフラットベッドスキャナーどうなんだろう…フィルム専用スキャナとどれくらい違うんだろう…という疑問があると思うので、この記事では中判フィルムのスキャンと併せてPlustek社製のスキャナーで取り込んだ35mmフィルムの比較考察もしてみた。

GT-X 980の致命的な弱点であるネガキャリアの埃対策も書いているのでぜひ最後までお読みください。この記事は今後の活動のために有料記事とさせて頂きました。GT-X980用のネガキャリア型紙も付いてますのでぜひお買い上げください。

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Foveonモノクローム

ここ最近、自宅の防湿庫の中からSIGMA DP1Merillを引っ張り出して使っている。

久しぶりに使ったDP1は悪くない…というかモノクロ専用機として絶好調すぎる。このblogの目的はフィルム写真に関することを書くためだけど、たまにはデジタルのことを書いてもいいよね。

 

未現像のX3Fファイルたち

防湿庫の掃除をしていた際たまたま手に取ったDP1Mをいじっていたら、紛失したと思っていたSDカードが入っていた。久しぶりに再会したSDカードをMacに差し込んだら未現像のX3Fが残っていたのだけど、当時は気にも留めなかった写真が随分と輝いて見えた。ほぼ4年前の写真たちである。驚き。 

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N0862019

愛すべき問題児

元々このカメラは西表島に行くときに携行品を軽くする目的で買った経緯がある。Foveonセンサーと専用設計のレンズがひねり出す超精細な解像感が信じられないくらいの小ささにまとまっていて、島巡りをするにあたって巨大なデジタル一眼レフを持ち歩くより遥かに快適だった。

Somewhere in Japan.

Nishihama Beach

 

しかしながら現実はそういいことずくめではない。

Foveonセンサーは色再現の問題が解決できておらず、いわゆる「当たればすごいけど当たらない」問題は無印DPの頃からあまり変われなかった。陽が燦々と輝く南国に持っていくには良いけれど、人工的な光源を見せたい場合だとか東京より北の地域ではどうしても色への違和感が拭えなくて、気がつくと使用頻度が段々と減り、いつの間にか防湿庫番になっていた。

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4年前の自分が何を考えたのかはっきりと覚えてないけれど、SDカードに残った写真は色の調整に手を焼いて放棄したものだったと思う。ホテルオークラのロビーを撮った上の写真も、べったり張り付いたイエローがどうにも嫌で悪戦苦闘したけどどうにもならなかった。

プアマンズライカモノクローム

Foveonセンサーの高感度がまるでダメというのはこのセンサーが世に出た頃からずっと言われていて、モノクロームに変換するのは元々ダメな高感度をどうにか使うための苦肉の策だったと記憶している。言うなれば臭い肉をどうにか美味く食う、生活の知恵のような何かが発端だった(はず)。

そうこうしているうちにメリル世代のFoveonセンサーが世に送り出され、SPPにモノクロームモードが追加されたのだけど、Foveonセンサーの原理を改めて考えてみれば1画素ごとに垂直に色を分離していくので、分離した色の強度のみを再構築してやれば純粋なモノクローム写真になるのである。アプローチは違えど1画素ごとにモノクロームの光を捉えていくのはライカモノクロームと同じだ。

残念ながらクアトロ世代のセンサーではメリル世代と異なるアプローチを採っており、ベイヤーセンサーとFoveonセンサーの間の子となっているため、計算で補完しないモノクロームを撮りたかったらメリル世代以前を使うしかない。

uradango.hatenablog.com

 

モノクローム専用のお散歩カメラとして

Foveonセンサーが作るモノクロームは、元のシャープネス設定とコントラストが高いことも相まってモノクロフィルムが作る写真とは別の旨味がある。非情(非常)に解像するのであまり情緒は感じられないのだが、情緒的じゃない写真を撮ろうと思ったらいい選択なんじゃないかと思うようになった。

人の温もりだとか情のような物を排除した、インダストリアルなものだとか自然だとか廃墟と対峙した時にFoveonセンサーとモノクロームは素晴らしい仕事をする。

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 DP1Mと2Mを使って冬の能登半島モノクロームで撮ったPhoto Yodobashiは、このセンサーの使い方をよく熟知していたんだなぁと改めて思う。普通のデジカメに飽きちゃった方やクアトロセンサーからSIGMA DPの世界に足を踏み入れた方は、ぜひ中古市場を漁ってメリルセンサーのモノクロームを体験いただきたいと思う。いいカメラだよ。

photo.yodobashi.com