今年使ったフィルム
2018年を振り返ってみるとカラーネガはPortra 400のほぼ一択で時折Ektarとフジ記録用を使う程度だった。その一方でモノクロフィルムはTriX 400、Tmax 400、フジAcros、Adox Silvermax、Fomapan 400、Adox Scala、Fomapan R…と手広く使った一年だった。
特に今年初めて手を出したモノクロリバーサルフィルムには甚く感動し、酒やめるからと自分自身に嘘ぶいて高い現像代を見なかったことにして結構な本数を使った。とても精緻で空気感と湿度感が素晴らしく、デジタルはもう要らないなぁと思うに足る質感。モノクロリバーサルは癖になる。
印象に残ったフィルム
クリスマスのグリーティングカードだとか年賀状に使う写真って、ほぼ間違いなくその年に撮った気に入った一枚だったり大切な一枚だったりする。今年もイラレとにらめっこしつつ写真の差し替えを繰り返した挙句、年賀状の写真に選んだのはFomapan400で撮った何の変哲も無い猫の写真だった。
来年の干支でもないしこれと言って素晴らしい一枚でもないし、そもそも正月からモノクロームってどうなのよと文句も出たけれど、写真を選んだ本人も理由がよくわかっていないのだけど、Fomapanの手触り感のあるざらっとした風合いが良かったのかもしれない。
良くわからないけど好き、みたいな独りよがり感満載のあの感じ。そんな意味では2018年の暮れに1本だけお試しで使ったFomapanが、もっとも印象深かったフィルムと言ってもいいのかもしれない。
Fomapan R100
こちらも2018年に1本だけ買ったFomapan R100。
Fomapan R100はAdox Scalaと同じモノクロリバーサルフィルム。現像所の少なさも相まって絶滅危惧種とも呼ぶべきフィルムが現像から上がってきた。繊細という表現がしっくりくるAdoxのScalaに対して、Fomapan100のインパクトが大きすぎるのかFomapan R100は若干荒削りな印象。
年末のひんやりとした曇り空の下、そんなFomapan R100をBessaに詰めて元町から山手までぶらぶらしてきた。
Bessa R3A/Summicron-M 50mm/Fomapan R100
どんよりと低い冬の空。東欧産のフィルムで撮ると元町の街路樹や建物もどことなく寂れた東欧っぽく仕上がる気がしないでもない。 黒の表現力はScalaよりもFomapanかもしれない。
Bessa R3A/Summicron-M 50mm/Fomapan R100
山手のベーリックホールはJR石川町から歩いてもそんなに遠くない。ここだけを目標に歩くと仕事の合間とか昼休みを潰してでも歩けてしまう距離。濃密なモノクローム。
Bessa R3A/Summicron-M 50mm/Fomapan R100
ベーリックホールの窓越し。Adox Scalaと比べると柔らかく暖かい描写になるような気がする。今にも雨が降り出しそうな重苦しい曇天の日。Summicron-M 50mmのボケも好み。
Bessa R3A/Summicron-M 50mm/Fomapan R100
この洋館に訪れる人が必ず撮影するであろうタイプライター。曇天の暗い室内でISO 100はちょっと辛った。手持ちで頑張ったけどやっぱり微妙にブレちゃった。
Bessa R3A/Summicron-M 50mm/Fomapan R100
ここは山手駅の近くだったと思う。銭湯の煙突とひっ絡まった電線。
元町・中華街境界線のカオスな街並みを抜けハイソな雰囲気の元町を通りすぎ、坂を登った先にあるセレブ住宅街を横目に坂を下ると途端に世界が下町風になる。高々数キロの範囲でジェットコースターのように移り変わる世界。
フィルムとの出会い頭って大切
色んなフィルムを試してみた2018年。フィルムとの出会い頭の大切さを痛感している。
初めて使うフィルムを装填したら丁寧に、その場の思い付きに流されずきちんと被写体を選んで向き合うことって当たり前だけど大切なことだと思う。
何にも考えずに思いつくままにシャッターを切ることは楽しいけれど、そんな撮り方を続けているとフィルムの特徴だとか使い所がどうしても掴みきれない。2017年はEktarとProH400の個性が捉え切れずにいてとても苦労した。2018年に入ってEktarとはどうにか仲良しになれたけど、ProH400は多分もう仲良くなれない。
Bessa R3A/Summicron-M 50mm/Fomapan R100
フィルムに興味がある人は
エクタクロームが復活したりチェキが売れ続けていたりと局地的にフィルムも奮闘しているものの、大きな視点で見たら写真フィルムの状況は決して良いとは言えないと思う。特にモノクロリバーサルフィルムなんて、現像しようにも田村写真さんかSilversaltさんくらいしか対応してくれないので絶滅危惧種と言ってよい。
フィルム写真に興味のある方はぜひ2019年にフィルム写真にチャレンジして頂き、現像所とフィルムメイカーと、フィルム代に四苦八苦している私を救って頂きたいと思う次第である。 ことモノクロリバーサルの世界なんてデジタルでは味わえない感動があると思うので、ぜひともこのフィルム沼に落ちて頂きたいと思っている。